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第五話……「全然気付いてなかった」

 その内容は、主人公の男の子とヒロイン『アイ』の物語。


 二人は幼馴染で、『アイ』のあだ名は、タイトルから容易に想像できる『アイアイ』だったが、ある日、『アイ』は交通事故に遭ってしまい、手術を受けることになる。


 しかし、その手術は電脳化実験のための手術で、その結果、『アイ』の中に人工知能が中途半端に入り込むことになる。

 最初は問題なく、むしろ天才少女として覚醒したが、次第に人工知能に意識を乗っ取られていくようになった。思考や行動が人間とは一線を画してきて、恐怖の存在となった『アイ』。


 最終的には殺処分すると政府で閣議決定されたが、主人公は事前に『アイ』を連れて国外へ逃げ出す。

 その懸命な行動が人工知能をさらに人格的に覚醒させ、元の意識の『アイ』と融合し、理性を取り戻すことになるが、たとえそうなっても自分の存在が世界で否定されることに変わりはないという絶望感から、主人公と心中して、『間違っているのは世界の方だ』とアピールするしかないと提案する。


 主人公はその提案を受け入れ、ついに二人は高層ビルの上から飛び降りて心中する。


 最後に出てきた白髪の老人が『どうして死んでしまったんだ、アイ』とテレビを観ながら嘆くが、そこに写っていたのは、頭部が砕け、電気コード塗れの完全に機械化された脳と、モザイクがかけられた頭部の二つの遺体。


 天才少女『アイ』は完全に機械化されていなかったはず。

 つまり、主人公が最初から完全に機械化されていた人工知能だったことがそこで判明する。


 白髪の老人は『それ』を開発した張本人で、ラボのモニターには主人公の姿とコードネーム『アイ』の文字。逆に言えば、天才少女の方は『アイ』だと知らなかった。

 しかし、この事件をきっかけにそれが公となり、世間にも知れ渡ることになった結果、これを悲劇として、二人の存在を一つに、つまり『エーアイアイ』『アイアイ』の二重の意味として安らかに眠ってほしいという願いを込めて、『愛しのアイアイ』の物語が語り継がれることとなった……というオチだった。終わって初めてダブル主人公だったことも分かる。




 思った以上に凝った内容で、終劇後は余韻に浸ることもできた。

できたのだが、気になる点ももちろんあった。これを後で言うべきかどうか……。


 しばらくして、天川くんがゆっくりと立ち上がり、出口の方を指差した。私はそれに頷いて立ち上がると、二人で一緒に劇場を後にした。

 当然、どこかで感想会をやるだろうと思っていたので、天川くんに無言で付いて行くと、近くのカフェを指差したので、そこに入ることにした。


 歩いている途中、天川くんのスマホが震え、画面を見るや否やそのまま無視していたが、よかったのだろうか。

 私のことは気にせず、出てもよかったのに。


「どうだった?」


 周りに誰もいない奥の席に座り、お互いにアイスコーヒーを頼むと、天川くんが私に演劇の感想を求めてきた。

 自分から言わずに先に相手に求めるのはどうかと思うが、誘われた方だし、まあ仕方がないか。


 劇自体は面白かったと思う。けど……。


「正直な感想を聞いてみたい」


 私がほんの少しだけ躊躇していたのを悟ったのか、それとも天川くんも思うところがあったのか、追加のお願いをしてきた。


 こういう時、ネガティヴ発言をしない方が良いことは、楽しんだ人に対して失礼ということも理解している。

 女子グループでの会話なら特にご法度で、その後には漏れなくハブられるだろう。

 『かわいい』が求められる女子の間では、ネガティヴ発言をする子は『かわいくない』し、何事も『一緒』であることが重要なので、その意見がいくら正論で論理的で納得がいくものであっても関係ないからだ。


 私はそういうのが嫌なので『友達ゼロ』をやっている。本当だ。

 男子グループならそういうことはないのだろうか。もしそうなら男に生まれてもよかったかもしれない。

 でも、そしたらお姉ちゃんとただならぬ関係になってたか……。


 この際、天川くんの希望通り、正直に答えて、それで失望されるなら仕方がない。これまで通り、また『友達ゼロ』になるだけだ。


 あ……私は天川くんのことを少なくとも友達だと思っていたのか……。

 ただのクラスメイト、ただ席が隣の男子ではなく……。意識してなかった……。


 いや、意識してしまうと、この先どうなるか目に見えているからだろうか。

 いずれにしても、天川くんには嘘を吐きたくなかったし、本音を隠したくもなかった。


 私は観劇中に気になった点をできるだけ優しい言い方で挙げることにした。


「うーん……まあ、総合的には良くて、その中でも脚本は良かったけど、役者全員、メインからモブまで、演技が過剰すぎたかなぁ。

 もちろん、舞台の場合には過剰に演技するのは知ってるし、当たり前だと思うんだけど、物語の展開と合ってなかったって言うのかな。台詞とかアクションとか。

 具体的に言うなら、『アイ』がガシッと彼の腕を掴んだのに、演出上ではバッと腕を掴んだところが比較的分かりやすいかな。

 『あれ? 腕を掴む時ってこんな音だった? 演技と効果音、どっちが正しいの?』って思っちゃう感じがずっと続くみたいな。

 と言っても、私が気になっただけで、普通の人が普通に観てたら気にならないレベルだと思う。演出家や役者が悪いとかじゃないよ。

 でも、正直ここまで良い舞台だとは想像してなかった。作品そのものは名作だったと思う」


 実はもう一つ気になった点、と言うより、不快に思った点があったけど、それは言わないでおいた。


 私は交通事故で人が死んだり傷ついたりする展開が、死ぬほど嫌いだった。流行りの異世界転生作品など以ての外。

 ただ、それは私が嫌いなだけで、作品を客観的に評価した場合、安易な展開という評価以上にマイナスにはならないから言わなかった。


 天川くんは真っ直ぐに私が感想を言っている姿を見ていたが、私が言い終わると、徐ろに下を向いて震え始めた。

 もしかして、納得のいかない感想に怒っちゃったかな、と思ったのも束の間、彼は声を出して笑い始めた。


「ふ、ふふふ、あはははは! やっぱりそう思うよね! 僕もそう思うよ。いや、思った通りだよ、本当に。ふふふふ……」

 何がそんなにおかしいのかと問い質したくなるほど、私には天川くんが笑っている理由がよく分からなかった。


「何がそんなにおかしいの?」


 あ、言っちゃった。まあ、別に本当に疑問に思った感じのニュアンスだったから誤解はされないと思うけど。


「ああ、ごめんごめん。いや、嬉しかったんだよ。僕の想像通りの感想だったから。ここねちゃんなら、そういう言い方をするだろうなってところまでね。馬鹿にしてるわけじゃないよ。

 どう言えば良いのかな……。そうだなぁ、誤解を恐れずに言えば、運命の人に巡り会えた嬉しさから、抑えられないほどの喜びの笑いが出てきたとでも言うのかな。そのまますぎるかな?」


 今の私を誰かが見たら、『なんて顔してるの、この人』とでも言われそうなほど、私の表情は複雑だったに違いない。もちろん、感情もだ。


 その理由の一つは、天川くんがこれまで見せたことないほど爽やかで、『かわいい』と言ってもいいほどの良い表情をしていたからだ。

 目は隠れているけど、笑い方も含めて、まるでアイドルの爽やかさと言っても過言ではなかった。それこそ、『ファイアプ』の『そら』くんみたいな……。


 もう一つ。こんなに流暢に親しげに話す天川くんを想像していなかった。第一印象はオタクっぽいから、同族である私の偏見で、もう少し距離を置いた話し方をするだろうと勝手に思っていたが、私のことを『ここねちゃん』と呼び、共感を求めるような言い回しで、女子と話し慣れている感が滲み出ていた。それだけ見れば、完全に陽キャだ。

 陰キャと陽キャは決して相容れないが、天川くんの爽やかさはその境界を越えるのではないかと思ってしまうほどだ。


「どうかした? もしかして、今日で僕に対する印象が変わったかな?」


 私の心情を天川くんにズバリ言い当てられてしまった。そんなに分かりやすいかな、私って。


「うん……。でも、良い意味でね。何て言うか……。アイドルみたいな爽やかさを感じたかな……」


 感じたことをそのまま、そして探りを入れるような言い方で、私は天川くんに返答した。我ながら、いやらしいなと思ってしまい、自己嫌悪に陥りそうになる。


 天川くんに嫌われるかな……。それは……嫌だな……。


「ありがとう、ここねちゃん。僕はさっき、運命の人に巡り会えたって言ったけど、本当にそのまんまの意味なんだよ。君をずっと探してたんだからね」

「え⁉️ 私を⁉️」


 私の不安を余所に、天川くんは変わらず真っ直ぐ私を見て、話を続けた。


「うん。僕が君と初めて会ったのは、ドラマ『裏社会探偵X』だった。君は一般公募で、僕は芸能事務所所属の子役で、一緒にモブとして参加していた。

 僕は探偵推理モノの作品が好きだったから出演できて嬉しかったなぁ。まぁ、それはともかく、流石にその時共演していたって気付いてなかったよね?」

「そ、そうなの? ごめん、全然気付いてなかった……」


 突然の『告白』で、私は何も考えられなくなっていた。


「あははは! いいんだよ、そうだと思ったから。でも、隣同士で一緒に台詞言ったのにね。まぁ、それだけ僕のカモフラージュが有効だったってことかな。

 それはさておき、僕は君に衝撃を受けたんだよ。君の演技に。子どもながらに天才だと思ったね。

 なぜかと言うと、子役の演技って大人から見たら結構違和感があるんだよね。それは、台詞とのギャップから来るもので、子どもが到底言わなさそうな台詞があてがわれ、それを舌足らずで過剰な演技で言うから違和感が出ると僕は考えている。

 でも、君の演技はそうじゃなかった。

 全く違和感なく、むしろ周囲に溶け込むような演技で、しかもモブとして完全に役割をこなしていた。いや、観る人が観れば、それが逆に主演をも喰っていたと言ってもいい。

 だって、『役』が『生きて』いたんだから。隣にいた僕もそれに引っ張られて、いつもとは違うのに、良い演技ができたほどだ。

 だからこそ、あのドラマは君の出演回をきっかけに視聴率が鰻登りに上昇し、一躍話題となった。

 本来は君が脚光を浴びるべきなんだけど、視聴者はそのことに気付いていなかったんだよね。君の影響を受けて、良い演技ができたメインキャストだけが持て囃されることになった。

 そういう意味では、出演後もモブとして完璧な立ち回りだったと言える。もちろん、そこまでは意識してないと思うけどね。

 今話したことは、当時肌で感じていたことだけど、時が経って、改めて導き出した結論だよ。

 そんな天才の君の感想を聞きたいがために、この観劇に誘ったんだけど、今思うと、それだけが理由じゃなかったかな……。色々な意味で楽しかったよ。本当にありがとう」


「い、いや、過大評価だよ! 私はただそのまま思った通り演技しただけで……」


 私は天川くんの感謝の言葉に対する返事もなく、彼の言葉を否定した。

 しかし、彼はそれに怯むことなく平然と話を続けた。


「君の普段の振る舞いを見ていると、そうだろうね。でも、僕から言わせれば、それがまさに天才の所業だよ。

 君はあれ以来、子役として他の作品には出てないよね。普通なら、あのドラマのプロデューサーや、あれを観た他のプロデューサーが君に声をかけてくるはずだけど、それは一切なかったと推察できる。

 なぜか。君が天才すぎて、他の俳優、女優を無意識に破壊してしまう恐れがあったから。もちろん、気付いていないプロデューサーもいるだろうけど、ある意味、あのドラマは『奇跡』だったんだよ。誰も自信を喪失しないで、むしろ全員が良い方向に進んだという意味でね。でも、誰も君のおかげだとは言わない、言えないんだよ。君は危うい存在だからね」


 褒められているのか、貶されているのかよく分からなかったが、まるで私が犯人で、天川くんが探偵かのような追い詰め方をしているような話の展開に、私は戸惑うしかなかった。


 天川くんの印象についてもその理由の一つだ。観劇直後は爽やかな印象だったのに対し、今は言わば理論家、論理的で真面目な印象を受ける。

 私の心情を当てた観察眼も相まって、これまでとはガラリと雰囲気が変わっていて、正直、かっこいいとさえ思う。目は隠れてるのに。


「君があれから表舞台に立っていないこともあり、アイドル活動を辞めたことを堺に、どうしてるか気になって探し始めたのがきっかけかな。念のために言っておくけど、ストーカーってことじゃないよ」


 いやぁ、広義ではストーカーじゃないかな……。別にいいけどさ。


 ……ん? アイドル活動? 主語がよく分からなかったけど、私の推し活のことじゃないよね。ってことはやっぱり……。


「アイドル活動って、天川くんの……『そら』くんのってこと?」

「僕のこと知ってくれてたんだ。ありがとう、嬉しいよ。と言うより、よく気付いたね。さっき言った僕のカモフラージュは何だったんだろう……」


「いや、カモフラージュはすごかったよ。あの時、道端で声をかけられなかったらずっと気付かなかったかも。声も変えてるんだもん。その時の爽やかさで気付いたようなものかな。

 普通、声をかけられて連絡先じゃなくて進学先を聞かれたら、相手がアイドルと言えど引くよね? でも、不思議とそれがなかった。イケメンだったからとか関係なく、ね。まぁ、オーラも同じだったし」

「オーラ? アイドルオーラってことかな? すごいね、それを感じ取れるなんて」


 私が何気なく言った『オーラ』をちゃんと受け入れてくれる天川くん。好感度がさらに上がった瞬間だった。

 この男、無敵か? 真のアイドルだよホントに。


 それにしても、推しのアイドルを、『元アイドル』を前にして、平然としていられる自分にも驚いた。

 もしかしたら、それは『天川くん』のおかげかもしれない。無言でいられる時間が心地良かったからか、それが当たり前の日常を感じさせてくれたからか、最初から印象が変わったとしても、その直感が変わらなかったからかもしれない。


「でも、私は当時、芸名を名乗ってたし、よく辿り着いたね。その時の仮事務所がお漏らししちゃったとか? 別にいいけど」

「いや、事務所は頑なに言わなかったよ。そこは流石だね。個人情報保護に努めてさ。だから、正直行き詰まってたんだよね。でも、ファイアプ解散でアイドルを辞めて、気分転換に『ウォッチャー』の近くをうろついていた時に君を見つけた。だから『運命』って言ったんだよ。

 そして思わず、本当に何も考えずに咄嗟に声をかけてしまった。進学先を聞いたのは君の日常を知りたかったから。どんな日常を送っていれば、あんな天才の演技が生まれてくるのか興味があったから。同じ進学先でホッともした。

 でも、怖がらせて申し訳なかったかなと後に反省したけど、そうじゃなかったと言ってくれて、心が晴れた気分だよ」


 天川くんの言葉に、私はまた複雑な感情を抱いてしまった。私の『演技』に興味があるのか……。まぁ、そうだよね……。


「……。ここねちゃん、ごめん。今のは言い方が悪かったね。正直に言うよ。君の全てに興味があると言った方が正しいかな。でも、それはそれで気持ち悪い言い回しだと思うんだけど、事実だからそう言うしかないかな。

 演技はきっかけにすぎなかったんだよ。あの無言の下校時間が僕にとっては至高だった。

 時間があっという間に過ぎて、気が付けば君との別れの時間になり、そこから家まではそれまでの十倍以上の時間があるように錯覚する。今日だってそう。今はもう……十八時だ。夕食の時間になってる」


 天川くんの絶妙なフォローに安心した自分がいた。


「え? ホントに? 十六時ぐらいかと思ってた……」

「君もそう思ってくれていて嬉しいよ。よかったら、これからも僕と一緒の時間を過ごしてほしいな。きっと楽しくなるよ」

「うん、それはもちろん……」


 私が言いかけて、いや、もう言ってしまった後に気付いたけど、これってもう天川くんの告白じゃない?

 一緒の時間を過ごすって、付き合うと同義だよね?

 それに私が『オーケー』の返事をしたってことだよね?

 高校生の告白って、『好きです! 付き合ってください!』じゃないの?

 もしくは、『俺達、良い感じじゃね? 付き合おうぜ』とか。


 全然バリエーションが思い付かないけど、少なくとも天川くんと私の間では、会話が自然すぎて、そのやり取りが何なのか断定できなかった。


「ありがとう、本当に嬉しいよ。それじゃあ、早速だけど、明日空いてるかな? 僕が参加してる劇団に一緒に行かない?」

「え、劇団? うん……いいけど、劇団に参加してるんだ。こう言ったらなんだけど、見た目からは想像がつかないね。あ、良い意味で」

「良い意味でって付ければ何でも許されると思ってるところも面白いね。あ、良い意味でね」


 私達はお互いに笑い合った。会話の楽しさを感じ、穏やかな雰囲気を感じ、天川くんの存在を感じることで、それこそ至高の空間が出来上がるような感じがして、下校時間以上の幸せを感じることができた。


 幸せ、か……。思いも寄らなかったな……。




「初彼氏おめでとう、ここね! その感じだと別れなさそうだから、そのまま結婚まで行きそうだね! しかも、元アイドルと」


 経緯を知ったお姉ちゃんが、案の定、私を祝福してきた。


「いや、あれが告白だったかも分からないからね。確認してないし。それに、元アイドルとかは関係ないよ」


「いや、間違いなく告白だよ。で、ここねもあの下校時間を幸せに思っていた。完全に両思いだよ。これで、『応募ロボ』から卒業できるね」


 ……今の今まで忘れていた。無意識に浮かれていたからだろうか。

 私はアイドル志望で、男性との付き合いは遠慮するべきなのに、あろうことかそれを全く考慮せずに、天川くんとデートに行き、告白のようなものを受け、浮かれて姉に報告した。何なんだ私は一体。


「お、お姉ちゃん……。わ、私……」

「ダメだよ、ここね。もうあなたは進んじゃってるんだから。天川くんもここね自身も傷付けたくはないでしょ?」


「それはそうだけど……。私の『夢』はどうなるの⁉️ お姉ちゃんだって最初は応援してくれてたのに! 諦めたくないよ! まだ……まだやれるよ……」

「それは本当に『ここねの夢』なのかな? もう分かってるよね? その夢はなくなったんだよ。変わったんだよ。天川くんと、大好きな人と日々を過ごすことに」


「違う! 私は……。私の夢は……『アイドルになること』……。それは変わらないよ!」

「この期に及んで嘘を吐くんだ。今の今まで忘れてたくせに。浮かれてたくせに」

「違う……。違うよ……」


 お姉ちゃんはそれ以上何も言わなかった。それだけ私が弱っていたということだろう。


 自分でもよく分からない感情を整理する間もなく、明日がやってくる。天川くんと一緒に過ごす明日が……。

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