股間の痒い女子高生
あー、イライラするよー!
「フェミニーナ軟膏なら持ってるぞ」
はあっ?
「股間が痒くてイライラしてるんだろ」
違うよ! なんでそーなんの?
「あたしは痒いよ」
あ、そう……。
「ここ女子校じゃん。みんな暑いときスカートバサバサやってるじゃん」
まあ、見せパンだから平気だよね。
「でも、股間をボリボリ掻いてる人っていないよね」
ええっ? ……いたら引くよ。
「なんで?」
だって、さすがにそれは……。
「みんな痒いはずなんだよ。なのにみんなお上品ぶっちゃったりして。スカートはバサバサするくせに」
……バサバサとボリボリは、ちょっと次元が違うと思うよ。
「どうして女性は自らすすんで自らを抑圧するのだろうか?」
ええええっ! 突然どうしちゃったの!?
「なぜなら女性は存在しないからだ。あるのはただ、男性による女性についての言説だけなのだ」
ねえ、保健室行こうよ!
「男は股間の痒い女なぞ望んでいない。だから股間の痒さなんてものは存在しないのだ。してはならないのだ。ここは女子校だというのに、ああ、なんという言説の非情さよ!」
もう、そんなに痒いんだったらさ、思いっきり掻きなよ! みんなに見えないようにガードしてあげるからさ!
「ありがとう。でも、そんないいかげんなガードじゃ全然隠れないな」
そ、そうかな……。
「抱いてくれ」
ええええええええっ!
「抱きしめ合おう。体を密着させて、どの角度からも股間が絶対に見えないようにしよう」
なに言っているの!? そんなことしたら「ヘンタイだー」ってみんな注目しちゃうよ!
「嫌なのか?」
嫌に決まってるじゃない!
「じゃあ、あなたがあたしの股間を掻いてくれ」
なんでそうなるのよ!?
「あたしの股間を掻きたいんじゃないのか?」
掻きたくないよ!
「なんでそんなにイライラしてるんだ? フェミニーナ軟膏なら貸してあげるぞ」
だから痒くなんかないって!
「生理前なのか?」
そうだよ! 「生理前でイライラするー」って、ちょっと愚痴りたかっただけなんだよ!
「運動してる?」
運動? ……いいや。あたし運動苦手だし。
「学校終わったらさ、一緒に走ろっか。汗かいて風呂入ると少しはすっきりすると思うよ」
(あれ? なんかまともなこと言ってる……)
うん。……でも、あたし足遅いけど、いいの?
「もちろん! あなたさえよければ(ニコッ)」
(な、なんで急にイケメンになるの? なんかムラムラしてくるじゃない……)
あ、ありがとう……。
「じゃあ4時半に河川敷の橋のたもとで待ち合わせしよう。約束だよ(ニコッ)」
はい……。
(おしまい)