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16 ヒューイコブラ05

「日比谷公園のサンダース隊が待ち伏せに成功しました」

 クリスタルタルが真田に報告する。

「分かりました、では作戦を次のフェーズに移行します」


 真田はスマートフォンで銀猫に連絡を入れる。

「お待たせしました、突入開始して下さい」

「了解した」

 銀猫はSL広場に戦車を整列させて待機していた。真田の連絡に喉に当てたスロートマイクで短く答える。


「ご武運を」

「おう!」

 ドグラの戦車24両が一斉にエンジンを吹かした。指揮はリーダーの銀猫、愛車はドイツ陸軍の第三世代戦車レオパルド2だ。


「パンツァーフォー!」

 銀猫の掛け声とともに品川陣営の戦車隊が一列縦隊で進軍を開始する。

 先頭は銀猫のレオパルド2、二号車にドグラ副官のタイガーボムが乗る陸上自衛隊の九○式戦車か続く。その後ろにジャッキーのT34、その後にも等間隔の一列縦隊で21両の戦車が続いている。


 品川戦車隊は山手線沿いの路地を地響きを上げながら前進する。帝国ホテルの裏手を通り過ぎればもうその先は有楽町駅だった。

 その時、後方からヘリコプターの爆音が近づき、戦車隊の車列の低空を追い越していく。戦車兵たちがハッチを開いてヘリに手を振る。


「来たか、いいタイミングだ」

 銀猫も先頭のレオパルド2の砲塔から空を見上げた。

 ドグラの新兵器、攻撃ヘリコプターの『ヒューイコブラ』だった。作戦開始時から浜松町の増上寺境内に待機していたが、作戦の最終段階移行の指示を受けて飛び立って来たのだった。


―――ヒューイコブラ

 アメリカ軍が開発した世界初の攻撃ヘリである。主にベトナム戦争で大量に投入され、その重武装で対戦車攻撃には無敵の攻撃力を誇った。


 最大の特徴はその外見で、幅わずか99センチという極端にスリムな機体である。そのため前方からの目視による攻撃は非常に当たりにくい。

 しかし近年では赤外線誘導装置の実用化で視認性の低さはアドバンテージではなくなり、後継のアパッチ攻撃ヘリに主役の座を譲っているが、対戦車戦に特化したその重武装は戦車にとってはまさに死神のような兵器であった。


 ドグラメンバーは今回の四ツ谷杯のために課金を控え、共同出資でこの高価なヒューイコブラを購入したのだった。

 ヒューイコブラはローターの爆音を響かせながらそのスマートな機体を前方に傾けて、銀猫のレオパルド2の上空を追い越していく。


 有楽町駅南の日比谷口では上野陣営の戦車四両が警戒に当たっていた。

 ヒューイコブラはウィング下部に吊り下げられた対戦車ミサイルTOWを連続発射した。ミサイルは発射煙を引きながら直進し、画像誘導方式で正確に四両の敵戦車に命中した。爆発が起き、一瞬にして上野陣営の戦車一個小隊は壊滅した。


 ヒューイは炎上する敵戦車を超えてさらに前進し、有楽町駅の北ガード付近を守備している上野陣営の戦車隊を目視で捉えた。

 ホバリングしながらTOWの残弾を一気に撃ち尽くす。同時に機首下部に取り付けられた三十ミリチェーンガンが火を噴いた。薬莢が雨のようにアスファルトに降り注ぐ。慌てふためく上野プレイヤーが次々となぎ倒される。


「攻撃ヘリだ! スティンガー、誰かスティンガーを!」

 建物から二人のプレイヤーが飛び出して来た。二人とも肩にスティンガー対空ミサイルを担いでいる。炎上する戦車の後方で射撃体勢を取る。

 一人はヒューイコブラの三十ミリチェーンガンで粉々にされたが、もう一人は照準を定め、ヘリに向かって引き金を引いた。


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