第2話 どこでも嫌われる存在。だけど話すことができるので。
「――ってこともあったわ。……ねぇ、あなたのその保護者みたいな顔、ムカつくんだけど! これだからヒト属は……」
「あ、俺ヒトじゃなくてゴブリン人間ね。ほら角も」
「……はっ? もっと悪いじゃない!」
酷い言われようだけど残念ながら事実!
「だ、大丈夫よ! 彼は悪いゴブリンじゃないの!」
「ま、まぁそれは何となくわかったけど……えぇ……」
ピキーっ! にんげんになれたよーっ!
「実は彼はね――」
今度はこちらが話すターン!
俺の紹介なんかそこそこに、リルちゃんとの思い出を語る。
「――そう、リルもいい人達に巡り会えたのね……」
「えぇ、一目惚れでした」
「そういう事じゃないんだけど……まぁいいか。ところで、私にも一目惚れしないのかしら?」
魅惑的なキメ顔をして言ってくる美人のベルさん。しかし――!
「いやぁ、残念だけど! とっても美人さんだけど!」
「あら、珍しいですわね。こんな素敵な方ですのに」
酷い! 美人だから惚れる訳じゃないんですの!
それはともかく、プリンちゃんとベルさんも仲良くなれたようで良かった!
「さすがに嫁さんの友達には手を出さないですよっ!」
「姉には手をだしたけどね!」
つうこんのいちげき! シュナイダーとクリスに999のダメージ!
「ソ、ソフィア……あのな……?」
「クリスはいいのよ? 仲良くしようね~♪」
そう、悪いのは俺だけです……。
「ふふ。変な人達ね。けど、ゴブリンだってこと、他のエルフには言わない方がいいよ?」
「そう? 最初から言っといた方が良くない?」
メンシュライヒでの事を思い出す。
途中から嫌われるより、最初から説明してた方が良くない?
それで嫌われたら仕方がないってことで!
「……少なくとも、ここに住んでるエルフにはやめた方がいい。どうしても森に住んでると、ね。せめてタイミングを見てからがいいよ」
「……わかった。ご忠告ありがとね」
想像を絶する出来事があるってことだね……。
「リルちゃん、言ってるかなぁ? 言ってるよね~」
ですよね~。
「ま、まぁそこはリルに任せよう。それより、リルのこともう少し聞かせてよ」
こうして話が尽きないまま、夜遅くまでリルちゃんのことを語り合うのでした。
◆◇◆◇
「みんなっ! 遅くなってごめんねっ!」
翌日、リルちゃんとベルさん、そしてお母さんがやってきた。
どうだったかな、お父さんがいないけど……。
「久しぶりの家族の団欒、いかがでしたの?」
「言いたかったことは言えたけど……お父さんと喧嘩したっ!」
ぷいっとそっぽ向く膨れっ面のリルちゃん。
「ふふっ。あなたのことでよ、シュナイダーさん? あなた、ゴブリンですってね」
「あ、はい。ゴブリン人間のシュナイダーです。人もエルフも襲いません」
やっぱり言ってたかー。
「あなたがゴブリンだって聞いてパパがすっごく怒って、そしたらリルちゃんも怒っちゃって、大変だったのよ~」
「だって! お父さんったらそれまでは『いい人に巡り会えたんだね』とか言ってたのに! ゴブリンだって言ったら急に節操なしだとかそんな男信用ならないとか!」
「リル、ここでゴブリンはかなり嫌われてるから」
そりゃそうだよねー。俺がお父さんの立場なら、男をぶっ殺してリルちゃんを娶る……ん?
「と言う訳で、私があなたを見定めに来たのよ~! ついでに、あなたたちから見たリルちゃんのことも教えて欲しいし!」
よっしゃ! リルちゃんの可愛さを語る会第2弾だ!
「あ、シュナイダーさんにはお願いしたいことがあるのよ~! この辺のゴブリンやオークの群れ、壊滅させて下さらない?」
サラッとなかなかの事を言ってくるお母さん。
「あ、あの、俺を見定めたいんじゃ……」
「お願いできないかしら~?」
上目遣いで頼まれる。リルちゃんとそっくりな美人さんにそんな顔されたら――っ!
ポカッ!
いてっ!
「わかりました、渋々行きますよ、渋々ですが」
「(シュナさん、そうじゃないでしょ!)」
「はい喜んで!」
「(……お母さんに見惚れてたから怒ったの!)」
ご、ごめんなさい。怒ったお顔も……いや、やめておこう。
◆◇◆◇
夕刻、いくつかのゴブリンやオークの集落を壊滅させて戻ってくると、みんなはまだそこにいた。
「あら、おかえりなさ~い。大丈夫だった?」
「えぇ、いくつか見つけたので言われた通りに」
……少し離れたところで人の気配を感じていたので、まぁそういう事だろう。
エルフに敵意はないか、やつらの仲間じゃないか、などなど。
「ゴブリンたちには本当に困っていたの……ありがとうね~」
「いえいえ。お力になれて何よりです!」
「みなさんが里に入れるようにお願いしてるから、もう少し待っててね~」
「……うんっ」
今は姿の見えないお父さんが走ってくれているのだろうか。
ありがたいね、リルちゃんと昨日喧嘩したみたいだけど仲直りできればいいね。
「(リルちゃんたちはまだ喧嘩できる機会も時間もあるんだもの……大丈夫だよね)」
うん、きっと大丈夫!
ティロン♪
≪魔王が出現しました≫
それは突然、しかしはっきりと、聞こえた。
ま、魔王……? いや……真央ちゃん?
「魔王が……出現……!?」
「みんな聞こえたよね!? 魔王って何っ!?」
みんなも突然のことに驚き、慌てふためいている。
もちろん俺も。
「(……き……るか……き……聞こえるかい糞餓鬼っ!)」
ん? 今度は糞婆から念話?
「(聞こえたねっ☆ 魔王の出現も聞こえたね?)」
あ、あぁ……。
「(そのことで話があるから、急いでタイグルに戻っといで☆)」
え、この念話じゃダメなの?
「(遠すぎ……魔力が持た……☆)」
さすがの婆も長距離念話は辛いみたいだ。
コストえぐいもんなぁ。
「みんな、急いでタイグルリオンに向かおう!」
「えっ! 急にそんな!?」
「婆から念話で言われたんだ……多分、魔王のことやら俺らのことやら話があるそうだよ」
「で、でも……っ!」
「行っておいでリルちゃん、それとみなさんも」
「お母さん……」
「用事が終わったら、また戻ってくればいいじゃない。私たちは家族なんだから」
家族……俺たちも……?
「パパも素直になれないだけで本当はあなたに感謝しているのよ、シュナイダーさん」
「そんな……俺はゴブリンを討伐したくらいで何も……」
「リルちゃんとまた会えたのは間違いなくあなたのおかげよ。……それと、ディちゃん?」
「わっわふっ」
家族の再会……の裏で少し元気のなかったディちゃん。
「今度は、ディちゃんともいっぱいお話したいなぁ~」
「……ん」
「…………それじゃあ! 行ってくるよっ!」
「えぇ。いってらっしゃい、元気に戻ってくるのよ~!」
「お母さん、リルちゃんのこととっても大事そうだったね♪」
「……うん。呪いのせいで避けてばかりだったけど、もっとぶつかればよかったんだ……」
「大丈夫ですわ! また無事に戻ってくればいいんですの!」
「……うんっ! その時はまたみんな一緒よっ!」




