第7話 逆の立場だったら許せないくせに、な話
――ディ視点――
最近自分が変だ。
主……弟を見ると胸が苦しくなる。
頭撫でられたりするととっても恥ずかしい。
おかしい……今までこんなことなかったのに……。
あの日だってそう、急に抱きつかれて恥ずかしくなって……離してって言ってしまった……。
ギュってされるのは嬉しいはずなのに、どうしてしまったのだろうか。
困ったので、いろんなことを知っているプリンに聞いてみた。
しかしプリンはまあまあと言って笑いながら、主にもう一度抱きついていればそのうち治ると言った。
失礼な、そして当てが外れた。
そんなことで治る訳がない。
話をしているとちょうど主が目覚めた。
「……」
「……」
主……子犬みたいな顔してる……。
仕方がない、行くっ!
ガバッ!
ほっほらぁ! やっぱりだめだぁっ!
心臓が爆発しちゃう!
私、死んじゃうんだぁっ!
せっかくなら、主の胸で大人しく死ぬんだぁ……。
……今までありがとう、主。
大好きだよ――。
……。
…………。
………………。
なかなか、死なない。
それどころか、本当に治ってきた。
さすがプリン、物知りさんだ。
今日は主、弟がずっとぎゅーしてくるから、仕方がないから私もぎゅーってしててあげる。
弟はしかたがないからしかたない。
そして主は弟であり、子どもであることがわかった。
よしよし、しかたないなぁ。
◆◇◆◇
その日の晩はみんなで飲めや食えやの大騒ぎだった。
バッジオさんがことあるごとに泣いて、その横でハムスターみたいにもりもり食べてるソフィたんがいて……。
クリスはウザ絡みキャラだ……延々とソフィたんとの思い出を語ってたり俺にもっとしっかりしろと何とか。正直あまり聞いてない。
リルちゃんはプリンちゃんと王子様について語り合ってる。というか、話を聞いて幻滅してる。
ディちゃんはなぜか俺の頭をずっと撫でてくるので俺も撫で返している。
そろそろ髪の毛なくなりそう。
「おいっ! 聞いてるのかっ! 後で私の部屋に来いって言ってるんだっ!」
「えっ!? あ、うん。わかった」
やべっ、全然聞いてなかった。
後で部屋に行けばいいのか……?
「(クリス……遂にいくのねっ!)」
「(正直羨ましいですわ……)」
「(もぐもぐ……今日は私たちだけで気分を紛らわそう!)」
◆◇◆◇
「おーい、クリスー。野球やろーぜー!」
「やきゅう?」
すみません、何でもないです。
宴会を解散した後、クリスの部屋に来た。
ソフィたんたちは女子会をするとか言って集まってたけど。
「まったく! 夜に女性の部屋に来たってのになんだその体たらくは!」
「えー別に色っぽい話でもないんだろ……」
「何だお前! 男のくせにこの状況で興奮しないのか!?」
何だ何だ? 今夜のクリスは相当酔ってるようだ。
「だってクリ――」
「よしっ! じゃあ私の裸を見ても興奮しないか勝負と行こうじゃないかっ!」
はっ? と思ったら既に行動は終わっていた。
「どうだっ!」
そこにあったのは――。
「……」
「……」
――傷だらけの体。
「――っ! やっぱり何でもない! わ、忘れてくれ……!」
虚勢を張っていたのだろう、みるみる小さくなっていく。
クリスが今夜何をしたかったのか、さすがに俺でもわかったよ。
意味深なみんなの顔の理由も。
「す、すまないっ! こんな醜い体を――」
「この傷はいつのだ?」
腹の部分、縦に大きく残る傷跡をなぞりながら尋ねる。
「こ、これは……小さい頃、ソフィアを暴漢から守って……」
「こっちは?」
次々と尋ね、そのたびに――。
「こっちは修練中の……こっちはソフィアを庇った時の……この傷は、先日のルフアードに……」
「道理で、醜いとは感じなかったよ」
「う、嘘だっ! こんな傷だらけの体……」
「大切な人を守るためについた傷だろ。 世界で一番綺麗な体だよ」
「――……ここは、まだ誰にも……だから……」
やはり、女騎士には拘束具が似合うと思うの。
◆◇◆◇
明け方、自分の部屋に戻ったらなぜか4人と1匹がいて無言でジトーっと見られ続けました。
「あの、その……」
「……」
ジトー。
「これは、あの……」
「……」
ジトー。
「(ご、ご了承済みだったのでは……?)」
ゴブリック・テレパシーで助けを求めるが――。
「(それでも、私たちが他の男の人とそういうことしてたら、どう思う?)」
「……」
おろろろろ……。
「きゃあ! 急に吐いてどうしたのよっ!?」
「だ、大丈夫ですの!?」
「ま、まさか吐くなんて……私たちは大丈夫だから、心配しないでいいのよ? 私たちは!」
心配してくれつつもまだ棘があるのですが……。
◆◇◆◇
さぁ、やってまいりました! 久しぶりのダンジョン探索!
こんな時にダンジョン探索なんかして大丈夫かって?
……嫁さんたちの機嫌より大事なことなどないよ……。
そんな訳で、こっそり何かお嫁さんへのプレゼントになる物を探しに来ましたの。
まぁ、ソフィたんには筒抜けだったので、お目付役としてディちゃんも一緒です!
何てったって前科があるからね!
ディちゃんは事情は良くわかってないみたいだけど、ご機嫌です!
しかし、ロベット領のダンジョンは特別な何かがある訳ではないみたい。ランクも低いし。
なので、ボス討伐の報酬や魔石目的の……とにかく根気が必要となります。
気合入れていぞぉっ!




