第5話 消せない約束
――クリス視点――
「貴様だけは! 私が倒す!」
「出来るわきゃねぇだろうが! てめえなんかによぉっ!」
何度も切りつけるが敵が硬すぎるっ!
殆ど効いていないっ!
「んな攻撃、何も意味ねぇんだよっ!」
「クリスさん! 魔素の荒いところを、身体強化の隙間を突くのですわ!」
プリンが敵の弱いところを指摘してくれるが――。
「くっ! 魔素の荒いところなんてわからん!」
尚も斬撃を繰り返すが、変わらない。
「鬱陶しいハエめ!」
そしてオリジン種の拳に捉えられてしまう。
「がふっ……!」
「しまった! クリスーッ!」
「大丈夫だよ! 『中回復』!」
……一瞬意識が飛んでいたが……2人の声が聞こえてくる。
気付くと、私を温かく優しい光が包んでいた。
「ハァハァ……よくも、やってくれたな!」
「おいおいおい……確かに骨を砕いたハズだぞ……それを回復するとか出鱈目だろうが! やはりあの時殺しておくべきだったか!」
あの時……両親やみんなを殺された時!
「両親と、大切な人がくれた魔法よ! あなたなんかに負けないんだから!」
「そうだ! 行くぞソフィア! こいつは私たちの手で! 必ず!」
私の体を、今度は赤い光が包む!
「効かないなら! 何度だって!」
「何回やっても無駄だっつてんだろうがよぉっ!」
再び何度も斬撃を浴びせる!
ソフィアのバフにより目に見えて威力もスピードも上がっているが、まだ届かない!
「うおおおおおっ!」
「いい加減くたばれっ!」
拳が直撃し、大きく吹っ飛ばされる。
「ぐはっ!」
体が軋み悲鳴をあげるが、瞬時に光に包まれ回復する。
いや……傷の回復だけではない! 勇気だ……勇気が湧いてくる!
一歩も退くものかと勇気が湧いてくる!
振り絞れ! 限界を越えろ!
「もう少し、もう少しなんだ! 何か掴めそうなんだっ!」
「……キリがねえな。先にあっちを潰すか?」
オリジン種、ルフアードがそう言ってソフィを見据える!
「まずはてめえからだっ! ソフィア・ロベットォッ!」
「貴様ぁぁあああーーーっ!」
刃がオリジン種の背を切り裂き、遂に鮮血を飛ばす!
「ソフィアに危害を加えるな! 敵意を向けるな! それだけは……それだけは許さないっ!」
「なっ……くそが! まぐれ当りでいい気になるんじゃねぇ!」
「黙れぇっ! 許さないっ! 許さないっ!」
「がっ! なっ!」
斬撃が、連撃がルフアードに傷を増やす!
「ソフィアだけは傷付かせないっ!」
「くそっ! 何だてめえっ!」
何度も! 何度でも! 切りつける!
――あなたはソフィアを守るのよ。
「その約束だけは! 貴様なんかに消させやしない!」
「くそがぁぁああああっ!」
「うぉぉぉおおおおおおーーーっ!」
ザシュッ――……。
やがて果てしない攻防の末、渾身の一太刀がルフアードの首を断ち切った。
「み、見事……だ、最期に……悪くな……か……」
「ハァハァ……やった、やったよ……みんな……!」
「クリス……ありがとう……」
――良く頑張ったね。
――やっぱりお前はかっこいいな。
何も残っていないその場所で、確かに両親の声が聞こえた気がした。
◆◇◆◇
クリスが勝利した瞬間、ソフィたんの横の空間が捻じれたのが見えた。
「死――ぎゃぁあああああっ!」
勝利を確信した瞬間ってのが1番油断しやすい、そう聞いたことがあるから。
「何だこれぇ! 体がぁっ!」
狙ってくると思ってたんだよ。
「『空間転移』、対策していない訳ないだろう?」
「何でだっ! 『空間転移』をなぜ知っているぅっ!? 人類で使えるやつなどっ……!」
前世の知識じゃ割と一般的……そして非常に厄介だってことも知っている。
「なっ、何でだ!? ここには何もなかったはず!」
だからこそ常に魔力で仲間を包み、現れた瞬間攻撃できるようにしていた。
みんなの魔力はしっかり把握できている。
「『ゴブリック・ワールド』。真の餓鬼界。いつから手からしか出せないと錯覚していた?」
「――っ! 『餓鬼』っ! くそっ――」
しかしこいつの出現するときの格好、ソフィたんのお胸を揉みしだくつもりだったろ!?
ふざけんな! それをしていいのは俺だけだ!
信じられるか? あんなに存在感あるのにふわふわとろとろ溶けていく感じ!
指が、手が沈んでくんだぜ? まるで母親に包まれてるような……愛、そうだ愛だ、あれこそ愛だ!
さすが女性の象徴と言われるだけある! どうだ羨ましいだろう!
彼女は愛の体現者でありその象徴は自由自在、自由の体現者でもある。
俺が俺らが求めた自由は、ここにある!
今夜、揉もう。
ポカッ!
「逃がさないよ。食らい尽くせ、『ゴブリック・ワールド』!」
「ぎゃぁぁああああっ!」
あっけなく突然の乱入者は跡形もなく消滅した。
「(……今絶対変なこと考えてたよっ)」
「(この状況で何を考えたんでしょう?)」
「っぷ!」
リルちゃんたちを見ると、そちらも戦いは終わっていたようだ。
いや……そっちは戦いではなく、蹂躙でしたね……。
「? 今の、どこかで見たことあるような?」
「あー、森にいた時一瞬来たけど……」
そのおかげで、『空間転移』するやつがいると知れた訳だけど……。
ディちゃんと会ってたなんて……そんなまさか、ね。
「……あぁ、すぐ帰ったやつ」
「……くやしく」
「? いきなり出てきたから燃やしたら帰った。逃がして悔しい」
簡潔かつ、くわしいかつ、くやしい。
「ディっ、ディちゃぁーん! そんな危ない目に遭ってたなんてっ! もう絶対離れないぃーーーっ!」
だから嫌だったんだ! 子どもを束縛するのは良くないって言うからっ! でももう2度と離さん!
そう思いながらディちゃんをガシッと抱きしめる。
「やっやぁ……離して!」
!!!!!!!
「そそそそそそん――……」
ルフアードから受けた以上の衝撃を受け、俺は意識を失った。
「あら? ディちゃんが嫌がるなんてめずらしいわねっ」
「…………何だか恥ずかしくって」
「まぁ! ふふ、こんな可愛い顔を見られないなんて、あなたもかわいそうですわね!」
「あの……私の活躍……」




