第2話 こういう時1人になると大概ピンチになる
「ただいま……何か、匂う」
「ななな、何だろう!?」
「あ、あれかもっ! 棚にあったあれが腐ってたのかも!」
「実は――むぐっ!」
朝帰りのディちゃんが何か言ってるが、何の事だか全く分かりません。
「ただいま。私は寝るぞ……」
「クリス! 本当にお疲れさま、ありがとねっ♪」
一晩中ディちゃんの面倒を見てくれていたクリスにみんなお礼を言う。
「う、うん……」
そそくさと家に入っていくクリス。
大丈夫! ある程度はきれいになってるはず……多分。
「? みんな、動きが変」
「じ、実はディちゃんを待ってる間みんなで踊りの練習をしてたんだよっ!」
そのせいでみんな腰をやってしまってねぇ……。
「ふーん。そんなことより、これ見て」
あまり気にしてないみたいね。
って、サキュの卵?
「こ、これって……!」
「サキュちゃんの卵……何だか……今にも!」
「生まれる。生まれるだよ!」
「どんなのかしら……。あ! 生まれるよ!」
あたしたちの未来が!
ピシッ!
ピシピシピシッ!
「……ぷー!」
「ぷぅ?」
ぷぅ?
「ぷっぷー!」
「のわっ!」
ぷーさんが俺を視認すると飛びついてくる。
サキュ(仮)は蝙蝠っぽいの羽にまぁるい顔、全体的に薄いピンク。とても可愛らしい見た目だが……。
……しかしこの鳴き方、そして『3』を横にしたような口、どこか人を小ばかにしたような目……。
な、何でだろう……ゾクゾクするっ……。
「初めまして! サキュちゃん、でいいのかな? よろしくねっ♪」
「ふふっ、思ったより可愛い見た目ね!」
「キャーッ! 可愛いですわぁーっ!」
「ぷっぷーっ! ぷっぷぷーっ!」
みんなにも受け入れられ、ご満悦のサキュ。
ぷっぷぷっぷ鳴きながらくるくる飛んでいる。
こうしてみるとうさぎみたいだなぁ……。
そういえばうさぎも年中発情期なんだっけ。
「そんな言い方はサキュちゃんに失礼だと思うの」
すみません……。
「おかしいですわね……サキュさんの種族説明、『?』だけで何も見れませんわ!」
プリンちゃんが『鑑定』したらしく、その結果に疑問顔だ。
「それ多分、新種族だからかも? 俺もそうだし」
「そうですのね。なら、安心……しました……わ……」
「プリンちゃん!?」
喋ってる途中で倒れるプリンちゃんを慌てて抱きとめる。
「大丈夫!?」
「ハァハァ……」
意識を失い、呼吸も荒い……ど、どうしたんだ……?
「これは……ソフィの時と同じ?」
「えっ!?」
不思議っ子ディちゃんが言う。それって……?
「多分、同じ」
「えっと……あ、ランク5になった時の!?」
確かに同じような症状ではあるけど……!
「魔素が周りに凄く集まってる」
「その卵の時もそう言ってたな」
おや、クリスが起きてきたぞ。
「少し騒がしかったから起きてきたんだよ……」
「ご、ごめん……。卵の時って、サキュの事?」
「いや別に。あの花畑でディが突然卵をだしてな。『祝福してる』って。よくわからなかったが……」
「ん。魔素を吸収して早く生まれた」
な、なるほどわからん!
「とにかくお部屋に連れて行かなきゃ!」
◆◇◆◇
プリンちゃんが倒れてから数日。
例のオリジン種とやらが現れないか気を張っていたが特に異常はなかった。
ロリ婆が不穏なことを言うから無駄に緊張しちまったぜ!
「あなた……」
「プリンちゃん! 良かった、目覚めて……体は大丈夫?」
プリンちゃんが目覚める。そして――。
ティロンティロンティロン♪
≪ランク5の人間種が出現しました。個体名プディング・ォン・カプチーノ。至急討伐してください≫
来たか……。
「あなた……」
「大丈夫だよ。何があっても俺が、俺たち家族が絶対に傍にいるから!」
「ふふ、でしたら安心です。わたくしもうちょっと横になりますわ……」
再び眠ったプリンちゃんを置いて外に出る。
……おかしい、確かに敵意を感じたんだが……。
警告が鳴ってから少し後、一瞬感じた敵意が跡形もなく消えていた。
ふむ? これは……?
「プリンちゃん大丈夫そう?」
「うん、今はまた寝てるよ」
「そっか! あたしたちがしっかり守らないとね!」
プリンちゃんは戦闘スキルないからね。
ん? てか、あれ? プリンちゃんのステータス……。
戻って確認してみると、MPがばか高い……こんなになかったはずだが……。
しかしそれ以外は、知力が高いだけで軒並み人間としてはちょっと高いくらいだ。
ランク5の条件って何だ……? 単純な強さじゃなさそうだが……。
どういった存在なのかわからなくなってきたな……。
しかし、1つ確かなことがある。
ランク5だからって人類全員に狙われていい訳がない!
女神……許さんぞっ! その座、ソフィたんに譲って貰おう!
ぽかっ!
いてっ!
◆◇◆◇
――ディ視点――
サキュの卵が孵ってから、サキュは私とずっと一緒にいる。
私がかまってあげてるから懐いたんだろう。
しょうがないやつ、しょうがないから私の妹にしてあげようと思う。
「ぷぅ! ぷぅ!」
今日もぷぅぷぅ言いながら私の頭に乗る。
まったくしょうがないやつだ。
プリンが倒れてからしばらく暇なので、最近は1人で冒険している。
1人と言っても、行こうとするたびにサキュが頭の上に乗るからついでに一緒に行く。
今日は近くの川まで冒険しよう。
主、じゃなくて弟は私が冒険に行くたびに凄く心配する。
だからお土産を見つけて持って行くことにしている。
昨日は顔みたいな果物を持って行ったらとても喜んでいた。
今日はどんなお土産があるかな。
さぁ、今日も出発だ。
と思っていたら……。
ティロンティロンティロン♪
あの音が頭に鳴り響く。
プリン、よかったね。
「今日は中止にしよっか」
そう言って戻ろうとすると、急に近くに『悪』が現れた。
「あ? 何だ嬢ちゃんは」
「……ぷ、ぷぅ!」
サキュも怯えている。
こういうやつは様子見することなく全力攻撃すれば良いって主、じゃなくて弟が言ってた。
「すごい大の字のほのお」
みんなの協力で今の私にできる1番強い魔法を出す。
森への影響もみんなが抑えてくれるって。
「……は? ぐわぁぁぁ!」
男が火だるまになる。
「ぐぞっ!」
男はそう言って来た時と同じように突然消えた。
「どこ? いなくなっちゃった……」
「ぷっ! ぷっ!」
サキュが凄い凄いとでも言うようにぴょんぴょんしている。
ふふ、しょうがないやつめ。
あんなやつどうでもいっか、冒険の続きに行こう。




