第5話 時代や人やテンションによるもの
「あんたが『ソフィア・ロベット』ね!」
そのセリフを聞いたとき、全員がソフィたんの前に立ち塞がる。
「この反応、間違いないわね。スライムの討伐には失敗したけど、同じ人間ならまだ勝ち目はあるはず!」
先日の討伐勧告を聞いてのことだろう。しかし気になることがある……。
「なぜ『ソフィア・ロベット』だと?」
「さっき話に出てきた糸目が教えてくれたのよ。『シュナさん』と呼ぶゴブリンを飼っている女が『ソフィア・ロベット』だとね。あんたがゴブリンとは思わなかったけれど、思わぬ正解を引けたようね!」
ぐぬぬ糸目めぇ、あいつはマジで許さんぞ……。
というか、我々少し正直過ぎました?
「……その糸目、名は?」
「さぁ? 本名を教えるスパイがいる訳ないでしょ、お嬢さん」
「……そうか」
んん? 婆の反応がおかしいな……。
まぁ、今はこの痴女姉さんの対応だ。
ソフィたんを狙う奴はどんな美人でボインだろうと俺が成敗してやる!
「俺が『ソフィア・ロベット』だ」
今こそ修行の成果を――。
「嘘付きなさい! どう考えても女の名前でしょ!?」
いやいや、最近は名前じゃどっちかわからんよ?
「私が『ソフィア・ロベット』だ!」
「あたしが『ソフィア・ロベット』じゃないわよっ!」
「わたくしが『ソフィア・ロベット』ですの!」
1人ミスってる子がいる! かわいいかわいい!
てかプリンちゃんってマジで戦えるの!?
「リル……ほんにすまない、わしのせいで……」
婆がマジ泣きしてる……。
もーさっきからごちゃごちゃしすぎて訳が分からんくなってきた!
「な、何なのあんたら……ごちゃごちゃしすぎて訳が分からなくなってきたわ!」
気が合いますな。半分はあんたのせいだけど。
「すごいほのおのうず」
そんな一瞬の隙を付き、ディちゃんが容赦なく魔法攻撃を放つ。
ディ、ディちゃん……。成長したね……。
「ギャーーーッ! 熱い! 熱い!」
すっげ、威力80はありそうな炎の渦だ……。
若干熱いので盾を出しておく。
さすがに殺すまではしていないようで、痴女お姉さんを囲んでいるだけだが……。
大変な事実が発覚してしまった……。
「なっ!? キミはとんでもない化け物だったのかっ!?」
「おい金髪! さすがに失礼過ぎるだろ! 思っても言うなよ!」
そう、熱やら汗やらで痴女婆さんの化粧が崩れ、面影のない姿になってしまったのです。
「ふざけんなっ! 俺のドキムラを返せ!」
間違えたっ! 俺も言っちゃいけない方言っちゃった!
「ふふっ♪ 私の修行の成果、見せてあげる♪」
2度目、2度目なんですそれぇ……ガクッ。
そして俺は痴女婆ごとソフィたんに気絶させられました。
「ホーネットは50年以上前から活躍していたと聞いたことが……嫉妬ゆえの嘘だと思っていたが……」
「う、美しさを保つのは大変ですのよ!」
◆◇◆◇
「さて、どうするんじゃこいつは?」
「え? 適当に拷問した後に殺すが?」
ソフィたんを狙ったやつなど許せん。
「そ、そうか……」
「ディに任せて」
そう言って何らかの魔法を発動する。
「こ、これは……精神魔法? ディよ、いつの間に……」
「ん。お母さんがくれた。これでこいつの悪い心だけ消し去る」
「なにそれこわい」
「なっ! 悪の性質だけ消し去るなんてそんなこと!?」
「みんなが協力してくれるからできる」
みんな……周囲の魔素のことか?
「ま、まぁこやつは年齢の割に精神が低い。精神魔法もかかりやすいのじゃろう。行動も短略的じゃったしな☆」
「それでも凄いよね、それ……」
ディちゃん最強説、あると思います!
可愛いのに最強って無敵ですな!
「うっ……私は……?」
目覚めた痴女婆さん。悪の心がなくなるとどうなるんだ?
「な、何で? 『紅蓮の』への恨みや怒りはあるのにっ! どうにかしたいと思えない……どうなってるの!?」
わぁ、めっちゃ混乱してる!
「ソフィア・ロベットもどうでもいい……私は……どうしたらいいの? わからない、わからない……」
……悪の心を無くすって怖いなぁー。割と生きるのに必要なんじゃ?
「悪、悪かぁ。悪ってなんだろ?」
善か悪かで言ったら俺完全に悪じゃない? ゴブリンだし。
「簡単。意地悪しない心。主はたまに悪」
「……っぷ。あっはっは! そうか、ディちゃんには簡単だったね! 難しく考えすぎたわ!」
「この魔法は、ディが思う悪を、つまり意地悪な気持ちを消し去る魔法のようじゃ。いずれにしても超高度ではあるが……この婆も次第に落ち着くじゃろ☆」
俺にとっては、みんなを害するやつが悪ってことで!
「しかし、何か金髪が来てから難しい話になったね。勇者とか悪とか……。夜の順番の話を決める話からどうしてこうなった?」
「そんな話は最初から予定にないっての☆」
「「「「(ち、違ったのね……)」」」」
◆◇◆◇
――女子会会場、ソフィア視点――
婚姻の書類を提出した数日後。
「み、みんな……シュナさんから今後の話をしたいって!」
シュナさんからパスを通じた念話が届いた。
これってもしかしなくても……!
「まっまさかっ!」
「ついに、ですのね!」
「わ、わふっ!」
「結婚したのに随分長かったなー、私には関係ないけど」
クリス……何だか嫌な予感がするの。そう、プリンちゃんの時と同じような……。
「あたし知ってるよ! 最初は敵だったのに気付いたらしれっと仲間になってたって話! クリスもどうせしれっと奥さんになるんでしょっ」
「なっ! ありえんっ! 私と奴は……弟! そう、弟みたいなもんだ!」
私たちに弟いないでしょ……。シュナさんも似たようなこと言ってたけど、同じくお姉さんはいなかったはず……。
似た者同士ね、本当。
「と、とにかく! ……恨みっこなしだからね!」
「当然っ! あたしが1番になるに決まってるけどねっ!」
「わたくしは……既に繋がったようなものですが……まぁ、改めて1番を頂きますわぁっ!」
「? 1番はディ、みんなはそれ以下」
「……本当にみんな譲らないんだな……私には関係ないけど」
そうして向かった先に待っていたのは、愛しの旦那様と……お婆ちゃん!?
ま、まさか多数決!? これは分が悪い!
なんて卑怯なのリルちゃん!
「何となく言いたいことわかるけど、あんたに言われたくないわよっ! そして今回こそは貰ったわっ!」
「アホかっ、そんな訳ないでしょ☆」
シュナさんに言ってるようだったけど、ちょっと安心した!
「キ、キミは……っ!」
誰よ、これから大切な話があるって時に――っ!
そして、私たちの戦いはまだまだ続くのでした……。




