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幕間 とある豚貴族の話

今回は正しい意味での幕間と言いますか、本当に話が進みません! 主人公たちも出てきません!

プリン王女の元左遷先のお話です。

「オラッ! とっとと歩け! ぶっ!」

「きゃあっ!」


 王都にて、年に数回ある会合に出席するためにはるばるやってきた。

 お気に入りの犬獣人の奴隷を連れて。


「何だその逆らうような眼は! これはまたお仕置きが必要だなぁっ! ぶっひっひ!」

「……申し訳、ありません。いかような罰でも……お受けします」


 王都中の貴族が集まるこの場で、お気に入りの奴隷を見せつけるかのように詰る。

 侮蔑、羨望、無関心……様々な視線を感じる。


「ヴィートン侯爵閣下、また新たな亜人の奴隷ですか? あなたも物好きですなぁ」

 知り合いの貴族に声を掛けられる。名前は憶えていない。


「ぶひっ! この子は最近購入した犬獣人でお気に入りの――」

「しかし亜人など、よくそのような低俗なものを連れ歩けますなぁ。その胆力は見習いたいものですなぁ」


 かなり直接的な物言いですなぁ。

 見回すと、貴族連中が同じような目をして見ていた。


「あぁ臭い臭い。どこかに動物でもいるのかね」

「本当に、ここは犬小屋の臭いがしますねぇ。いえ、豚小屋かしら」

「ヴィートン侯爵め……このような場に亜人を連れてくるなど実に愚か者だ」

 こそこそと、しかし聞こえるように陰口を言われる。


「ぶひっ! 他の皆さんを不快にさせるとは! しょうがない奴め!」

 連れている獣人に蹴りを入れ、叱責する。


「申し訳……ございません……」


 これは今夜は激しいお仕置きだぶっ!



 ◆◇◆◇



「申し訳ない!」

「ご主人様……お顔をあげてください!」


 その夜、肉欲にかられて急ぐ……振りをして宿に戻る。

 そして奴隷を跪かせる……のではなく、自分が跪く。

 激しいお仕置きが必要なのはもちろん、この私だ。


「ご主人様、どうかお気になさらず……いえ、お優しいあなた様の事、それは無理でしょうから……」

 優しいと言ってくれるが、そんなことはない。

 私は、彼女らを利用しているのだから……。


「かわりに、どうか今夜は優しく愛してくださいませ」

「はい! 喜んで!」

 亜人の女性……奴隷として売られていた犬獣人であるピヨンに一目ぼれし、囲っているのも事実。

 だって凄く美人なんだもん……。




 ◆◇◆◇




 私の名はヴィートン。とある領地を治めている。


 表向きは亜人好きの変態……まぁそれも事実ではあるが、亜人の奴隷を集めて肉欲に溺れるろくでなしと思われている。

 いや……思わせている。


 何代か前のご先祖様が亜人に命を救われたとかで、それ以降我が一族は先日のように愚かな亜人狂いの振りをしつつ、保護している。

 ……本当に振りだよ?


「よう! 大将! 久しぶりの王都はどうだった?」

 もちろん、男の亜人もいる。


「うむ。相変わらずだったよ……用があっても絶対行くなよ?」

「あんなとこ行かねえさっ! 俺っちはここでの生活に満足しているからなっ!」


 彼も元奴隷だ。

 亜人、特に獣人は体力自慢が多く、労働力目当てに奴隷とされることが多い。


「本当に保護してくれて感謝してるぜっ!」

「……似たような状況で働かせているのは変わらないがな」


 何十、何百の亜人を保護し、秘密裏に生活させる。

 裕福な生活をさせることは難しい。


「いやいや! 無理矢理やらされてる訳でもねぇし、目的も違うしな!」




 そう、我が一族には目的がある。

 それは……亜人の奴隷解放、および地位の向上。


 相手はメンシュライヒの国そのもの。

 具体的な方法がある訳ではないが……いつか来るチャンスを逃さないため、今は財力を蓄えている。


「……お前たちに苦労させている。不甲斐ない領主で申し訳ないよ」

「好きに仕事できて、好きな相手と子どもを設けられる。これ以上望んだら罰が当たるってもんだぜっ!」


 亜人は短略的、愚か……そう言われているが、そんなことは決してない。

 考え方がシンプルなのだ。実に気持ちがいい。


 身体能力を始め、様々な能力でヒト属よりも優れている点もある。

 感覚的に優れているのか、美術品や装飾品も彼らのデザインしたものは王都でも人気だ。

 もちろん王国民は、亜人がデザインをしたなどとは夢にも思っていないだろうが……。


 我が領地にあるダンジョンで身体能力の高い彼らが素材を確保し、加工する。それを我々ヒト属が売る。

 そうして来るべき日を待っているのだ。




「御屋形様、王都より急使が参られています」

「……すぐに面会する」

 近隣の巡視を終え、館に戻ると我が領の秘書官からそう言われる。

 やだなぁ、めんどいなぁ……。




 ◆◇◆◇




「御屋形様、使いの方は何と?」

「……私の結婚が決まったよ。第2王女のプディング姫だ」

 打診、という名の王による命令だ。


「なんと! それはおめでたいです……か?」

「う、うむ。どうやら姫は王宮で不祥事を起こしたらしい。何でも亜人の権利を求めて……まぁ、お似合いの夫婦になるだろうと言われたよ」


「それは! もしや……我らが悲願の達成に近付くのでは!?」

「王位継承権を持ち、同じ志を持つ王女。間違いなく、またとない機会ではあるが……」


「何か不安な点が?」

「……私、王都でめちゃくちゃ嫌われてるからなぁ……」

 亜人の奴隷に欲望のまま振る舞う豚野郎、それが王都での私だ。


「……実情を話せば、必ずや理解してくださるでしょう」

「……うむ、そうだな。まずは我々の思いを理解してもらい、王女の不祥事が落ち着くのを待ってから……」

 そうしたら、本格的に手を考えよう。




 ◆◇◆◇



 そしていよいよ、王都のプディング姫がこちらに出立する日がやってきた。


「御屋形様っ! 大変です! 姫が何者かに誘拐されたとの情報が!」

「何だと! 急ぎ救出に向かわなければ!」


「しかし……情報を寄越したチュールによりますと、少し様子がおかしいとのことで……」

「どういうことだ?」


 聞くところによると、姫と思われる人物は自らの足で誘拐犯と逃走していたとのこと。

 今回の婚姻を嫌がり何者かに頼んで誘拐を自演した可能性がある、そのように報告されていた。


「……チュールによる情報であれば、その可能性が高いな」

 彼は隠れるのが上手く、人の気配や考えに敏感で頭の回転も良い。

 信頼できる密偵である。


 ということは……。

 やはり私は嫌われていたんだなぁ……。

 当たり前だけど、改めてその事実が突き付けられたようで少しショック。


「左様でございますな。如何なされますか……?」

 しかし、かの王女がただただ結婚が嫌で逃げたとは考えにくい。

 一緒に逃げたという相手も気になる。


「……今まで通りだ。いや、今まで以上に力を溜めよう。何かが……これから何かが起こる、そんな気がするんだ」


「御意!」




 その後は辺り触りのない声明を出し、姫の捜索に努める振りをしながら来るべき日を再び待つ。


 いつか、みんなが堂々とこの国を歩ける日を夢見て……。

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