第11話 タダより高いものはない
「みんなおっはよー♪」
翌日、何事もなかったかのように……いや、昨夜は何事もなかったんだ。
「え、えぇ……おはようソフィ……昨日はごめんねっ?」
「え~何の事~? 私よく覚えてないなぁ~♪」
「さ、早速準備して行きましょう! 今日もソフィアさんの活躍を期待してますわ!」
「うん! 頑張るよ~♪」
リルちゃんの口を押えながらプリンちゃんが取り繕う。
「っふ。昨日は後れをとったが、今日は私に任せて欲しいところだなっ!」
お前は後れをとるどころか自分で歩けてなかったからな!
「ぐもぉぉぉおおお~……」
「――ッ! ――ッ!」
おぉ! やったじゃないかクリス! 昨日より数瞬長く耐えていたぞ!
2倍以上成長したんだ! 俺は嬉しいぜ! もみもみ。
「何でクリスさんに鎧を着るなと言ったかと思ったら……そう言う事ですの」
はて? 何のことかわからないぞぅ?
「『小回復』!」
「おぉぉぉ……ありがとう……」
だから何に対してだって。
◆◇◆◇
「おっ! ボス部屋っぽい!」
2層ほど下ったところで、いかにもな扉が目の前に。
「準備はできてるわっ」
「いつでもいいですの!」
まぁ道中ソフィたん頼りでしたからね。
それにプリンちゃんは戦わないでしょ?
「私も大丈夫だよ! このままの流れで行っちゃお~!」
いつぞやの考えなしソフィたんが思い浮かぶが……。
まぁ考えててもしょうがない!
「よーし、突撃じゃーっ!」
「GRUAAAAAAAA!」
「きゃーっ!」
「う、嘘……」
ほらやっぱり! どう見てもドラゴンゾンビとかって名前付いてそうなやつ!
絶対強敵だ!
「『小回復』! 『天国への扉』! だめっあまり効果ないよ!」
まじ!? 今までと毛色が違い過ぎるだろっ!
「クリス! お前の出番!」
「むにゃ……女性らしくっていいじゃないか……」
「クリス……まだ寝てるっ」
クリスっ! お前ここで活躍しなきゃいつするんだよ!
しかもその話はなかったことになってるのっ! 禁句なの!
「むー! それなら……もっと強く……いくよっ『中回復』!」
ソフィたんが気合を入れて新魔法を叫ぶ! そしてドラゴンゾンビにとんでもない魔力が集まるっ!
「まだまだ~! 『中回復』! 『中回復』!」
「GRRRR!?」
ドラゴンゾンビさんもなぜ自分が回復されているのかわかっていない。
しかし――っ!
「とどめよっ! 『大回復』!」
最後にひと際大きい魔力を感じた瞬間!
「GRR――GAA!?」
ドッガーンッ!
「……ほんとに爆発した……」
「わたくし……そんな魔法知りませんわ……」
「お、俺も実際には初めて見たよ……すっげぇ爆発……」
これもう回復魔法とか関係なくない……?
「やったぁ~♪」
「何か……最初から最後まで凄かったわねぇ……」
「さ、さすがソフィさんですわ!」
「ま、まぁ気を取り直して……ドロップの確認だっ!」
ランク4の魔物ということで魔石は特大サイズ!
そしてアイテムは……。
「……骨?」
ドラゴンの頭蓋骨が人間サイズになったものが落ちているが……これは……?
「『ゾンビマスターの頭蓋骨』だそうですわ。効果は……凄い! 魔力量に応じてソンビを操る、ですって!」
「おーっ! 凄そうなアイテム……ん?」
「た、確かゾンビってこのダンジョンにしかいないんじゃ……」
か、完全に産業廃棄物やないか!
効果は超凄いのに使える場所が超限定されてる……。
「ふふっ、私たちのダンジョンの成果って酷いね♪」
「俺の時も『よく切れそうな包丁』とかだったよ」
「あたしの時はよくわからない数珠だったわね」
本当に酷い! どうなってんだ!
「私はみんなと冒険出来て楽しかった~♪」
◆◇◆◇
「すいませーん! 買い取りお願いします!」
タイグルリオンの冒険者ギルドに戻った俺たち。
「こ、これは……! 凄い量の魔石! 一体どうしたんですか!?」
「魔石と……これなんですけど……」
ディちゃんが被っていた例の頭骸骨を受付嬢さんに見せる。
可愛いディちゃんが身に着けていたってことでお高く買い取ってね。
「これは……鑑定機を使ってもよろしいですか?」
「はい」
俺たちには結果がわかっているんですけどね。
被り物がなくなって寂しそうなディちゃんの頭を撫でながらしばらく待つ。
すると、例の大将がやってきた。
「おうお前ら! 早速やらかしたらしいな?」
「え、俺何かやっちゃいましたぁ?」
言っちゃった! 遂に言っちゃった!
「あの骸骨、ありゃすげえなっ! あれさえあればダンジョン攻略がずっと楽になるぜ!」
「え? あーそうか? そうなるのか?」
「そりゃそうだぜ! 今まで1層すら碌に進めてなかったからな。いつ氾濫するか気が気じゃなかったがこれさえあればそれも解決できる!」
「ほほう。だって、ソフィたん。どうする? 金貨10000万枚くらい貰っとく?」
「シュナさんったら……。困ってるのならそれは差し上げます。どうぞお役に立ててください」
おぉ……慈悲深い……何と慈悲深いんだ……!
「おいライガ! 女神様の御前だぞ! 頭が高いぞ!」
「お、おう……いや本当にいいのか? 苦労して獲ってきたんだろう?」
「構いませんよ。それが目的ではなかったですし……それに楽しかったしね♪」
「あたしはソフィがいいならいいわよっ」
「わたくしもですわ」
「私は……何も言う資格はない……」
クリスはそうだね。ずっと寝てただけだもんね。
「すまないな。ありがたく頂くとしよう。代わりと言っちゃなんだが、困ったことがあったら何でも言ってくれ!」
「ふふっ、ありがとうございます!」
ライガが浮足立った様子で去っていく。
いやー、さすがうちの女神様! 慈悲深過ぎて感動したぜ!
「ソフィアさん、うまくいきましたわね」
「あら、何のことかしら♪」
「わたくしたちをごまかさなくってもいいですわ。うまく国のトップに恩を売るなんてやりますわね」
「うふふ♪ タダより高いものはないって言うからね~♪」
……俺の感動……どこ行ったの……?




