第8話 奇襲、同士討ち
「(こえーこえー! やっぱこれはないって!)」
どうも、前回格好つけすぎたシュナさんです。
プリンちゃんの言うようにまず統率を乱すための作戦を考えたんだが……。
「(いくら俺がゴブリンだからってさすがにバレるっしょ!)」
そう、俺が単身乗り込み、カイザーの首を獲るというもの。
「ギギギャッギャ!?(誰だお前は!?)」
「ゴブゴブゴッブ!(ういっす! 実は俺最近進化して人間みたいな姿になったんだよね!)」
「ギャッギャッ!(おぉ! それはめでたいっ!)」
「ゴブブブ~(だろ? それでボスに挨拶をってね!)」
「ギャッギギギギャギャ!(それはいい。引き留めて悪かったな!)」
「ゴッブ!(いいってことよ! じゃあな!)」
……できちゃったよ潜入!
あいつらバカで助かったわぁ~! さすが知力30くらい!
久しぶりのゴブゴブ語も問題なし!
その後5、6回同じようなやり取りを繰り返してようやくたどり着く。
「……ギィ?(何だ、貴様は?)」
「ゴブゴブゴッブ!(ボス! 私先日進化しまして、改めてご挨拶をと!)」
あ、大事なこと忘れてた。俺こいつをどうやって倒せばいいんだ? 攻撃力ないんだが……。
あれ? 詰んでね?
「……ギィ(ふむ、殊勝な心掛けだ。して、何という種族だ?)」
「ゴブブッブッブ~(ゴブリニュートという、人間に似た姿が特徴の種族です!)」
しかたない、あれを試してみるか……。
「……ギィ(ほう! 獣人たちの国に攻めるのに便利そうじゃないかっ!)」
「ゴブブブブブ~……(えぇ、今軽く新スキルを披露します……)」
出ろっ! 出てくれっ! 俺の暗黒面~!
『俺はお前、あるいは――』『貪るもの』、あの時の感覚を!
「……ギィ?(……まだか?)」
「もうすぐっ……出たっ! くらえっ!」
指先にちょこっと出たそれ。しかし目の前の鬼を喰らうには十分!
カイザーの脳天を指先ごと突き通す!
「ギャーッ!」
やった、作戦成功……やば、MP……いや、HPが……。
その時俺を温かな光が包む!
ソフィたん! 助かったけど近くに来ちゃだめだ!
「(大丈夫! 何だかもう群れが混乱し始めてるのよ!)」
どうやらカイザーの支配力が切れたことで一気に混乱し始めているようだ。
「(それに、私たちまださっきの場所にいるの!)」
「(えっ!? 結構離れているはず……繋がってるけど……)」
「(ふっふっふ~♪ ソフィさんも成長したってことね!)」
「(そっか……何にせよ助かったよ! ありがとう!)」
「(シュナさんもお疲れ様! 私たちも参戦します!)」
そう言うとパスが途切れる。
凄い距離届くようになったな~、2、3キロはあると思うけど。
さて、俺はとにかく合流してみんなの盾にならねばっ!
……攻撃担当にはなれません。
群れの中を走り抜けるが……これは酷い。
カイザーの死に、そのまま主導権を巡る争いになったようだ。
小集団同士派閥でもあったのか、それぞれの王たちが殺し合っている。
その王の頭に風の矢が殺到した。
「リルちゃん!」
「う゛~よがっだ~ぢんばいぢだ~!」
めちゃくちゃ泣いてる……心配して一早く来てくれたようだ。
ほら、鼻もかんで!
「ぐすっ。みんなひどいよっ! こんな無茶な作戦! あなたも賛成しちゃうし!」
「いや、無理そうならすぐ戻るって話だったしさ。大丈夫だったし、作戦成功だったね!」
次の課題も見つかったし!
「う~あたしのバカ! もっとしっかり止めてればよかった! ばかばかばか~!」
八つ当たり気味に魔法を連発していく。
コスパいいって素晴らしい!
群れのゴブも次第に減っていき、残すところ王様1匹となった。
「ギギャギャギャ……(貴様、やはり裏切り者だったか……)」
いえ、最初から仲間じゃありません。
「ここは私が。お前から教えて貰った技も試したい」
あーあれね。半分悪ふざけで教えたやつ。だって西洋剣でできなくない?
所謂居合切り。仕組みもわかんないけど何かかっこいいから俺のイメージだけで伝えた。
早い、よく切れる、腰を低くして剣を真横に薙ぐ。
それ以上知らないし、多分間違った知識なんだけど……。
「桜花流……一閃咲!」
きれいに真っ二つになるゴブリンキング。
どうやら、魔法と彼女の努力で俺のイメージを再現できたようです。
彼女の剣術の才は本当に凄いと思う。
さすがぴょんぴょん! ところで裂きと咲かけました?
「うむ、悪くない」
「まだまだ甘い。精進するように!」
「……ふん。まぁ感謝はしといてやる……いや、今回の件、本当にありがとう」
◆◇◆◇
流石に今日は疲れたので、少し離れた場所で野宿とする。
ランク4の魔石はやはりでかい。魔道具にするのも一苦労だ。
「あーあ、せっかく魔道具作ろうとしたけど、疲れてたから失敗しちまった! いらないからこれやるよ!」
そう言って魔道具化した魔石をクリスに投げ渡す。
「いらないものを私によこすなっ! まぁせっかくのランク4の魔石だ、しょうがないから貰ってやるが……」
「2人とも素直じゃないね~」
「まぁ、あの2人はあれでいいんじゃないかしらっ」
「お2人、やっぱり仲がいいんですのね」
◆◇◆◇
ゴブリンの群れから近いと言っていたように、タイグルリオンはそこから1日程の距離でした。
カイザーが言ってたけど、マジで襲うつもりだったのかもね。
「あらクリスさん、戻ったのね。そちらの方々は?」
「うむ。私の知人でな……」
獣人のお姉さんが話しかけてきてクリスが俺らを紹介してくれる。
「ようこそ、そういう事ならあなたたちを歓迎します。お辛かったわね」
「うむ、ほとぼりが冷めるまでしばらく世話になるよ」
門番のお姉さんと別れ、道中を進む。
「あら、ヒト属の方。珍しい」
「ほんとだ~!」
ここでは警戒されているのか単に興味が引かれるのか、よく話しかけられる。
「あらあら、可愛い子ね。大丈夫、あなたの大切な人を盗ったりしないわよ?」
「うふふ、本当可愛らしいわね~」
? さらに俺を見てそんなこと言われるが……ようわからんので笑顔で会釈する。
さすがに俺が可愛いってことはないだろうが……。
それより、ここはディちゃんと近い種族の方も多いようだ。
そのディちゃんは依然俺にしがみついて耳をかみかみしているが。
しっぽも巻き付いてきたので撫で返してあげる。
「まぁ! お熱いのね! でも年齢が……」
「……ヒト属にはそういう趣味の人がいるって……確かロリコンって言ったかな」
「まぁ、うちの子は近づけないようにしなきゃだわ」
……謎の風評被害。
「あ、あのね、ヒト族の方。ここにはあなた達よりも耳のいい人が多いの。建物の壁が薄いから、その……」
「あー、わかった。言いにくいだろうに教えてくれてありがとね」
ディちゃんのしっぽを撫でながら努めて爽やかに、明るく言う。
ヒト属にいい思い出もないだろうに、ここの人たちは確かにいい人が多いようだ。
ゴブリン討伐しておいて良かったよ。
「やっぱりあの子とはそういう関係なんだわっ!」
「あの爽やかさが逆に変態っぽいと思ったのよ!」
だから何でやっ!
どう見ても子どもを大切にしている爽やか兄ちゃんやろがいっ!
見ろよこの耳! いくらべちょべちょだからって嫌がるそぶりもないだろっ!
「い、いいんですのこれ?」
「いいんじゃない? これで女性が寄ってこなくなるかも♪」
「確かに!」




