第6話 再び追われる身
突然の来客。
クリスを見やり、対応するよう促す。
「何者だ?」
「こんにちは。先日お伺いしたテイマーギルドの者です。ソフィアさんにお聞きしたいことがありまして」
「用件は?」
「ソフィアさんはそちらに? できれば直接……」
「悪いが今取り込み中でな。用件があるなら私が聞く」
「……実は先日ゴブリンを逃がしたとお聞きしたので、調べてみたのですが……」
何他人のプライバシーを勝手に、と思ったがこの世界のその辺どうなってんだ?
「彼、まだいるみたいじゃないですかぁ? 確か名前は……『シュナイダー』」
「それがどうした?」
「いえ、どうして嘘を付かれたのかなぁって。それと改めてテイムのコツを教えて欲しいなぁってね」
「……断る、と言ったら?」
その言葉が終わるや否や、敵意が膨れ上がる!
クリスなら問題ないだろうが、万が一の為だ!
「『勇者に栄光あれ』!」
瞬間、ドアを蹴破られる!
「だったらしょうがない! 無理やりにでも教えて貰うことにしますよぉっ! かかれっ!」
「む、無理ですっ! 障壁に阻まれて!」
「進めません!」
ありゃりゃ、敵さんは障壁を突破することができないらしい。
テイマー職は身体能力が高い人も多いと聞くが、彼らは違ったようだ。
もちろん魔法の技術もなさそうだ。あったらテイマーにはなるまい。
「な、なんだこれは!?」
味方であるクリスまで驚いている。
「貴様っ! まだ実力を隠していたのかっ!」
「いや模擬戦とかに使ったら意味ないじゃん」
「確かに……」
「しかし、こいつらどうするか……殺すか?」
冒険者ギルドに介入してもらうか? しかし一応同じ組織らしいし、信用できるか怪しい。
ここで殺してしまった方が安全な気がする。万が一を考えたら、ね。
「……私は、できれば逃げたいよ」
悩んでいると、女神様からお慈悲溢れるお信託が!
「信託があった! 我々は逃げるぞっ!」
ぽかっ。
いてっ。
「っく! 逃げても無駄ですよぉっ! 我々の仲間はたくさんいる! 必ず居場所を突き止めて――」
「ゴブリック・巴投げ!」
攻撃力が無ければ、投げればいいじゃない?
無駄に高い体力任せに敵さんを遠くに投げ飛ばす。
「で、でたらめだっ!」
クリスは呆れたような怒っているような。
「ともかく、このまま行こうかっ!」
誰かに縛られてたまるかっ! 俺たちは自由な冒険者なんだ!
◆◇◆◇
「それで、どこに行くの?」
リルちゃんが聞いてくる。
「……どうする?」
「やっぱり、宛はなかったのね……」
勢いで飛び出し、しばらく街道を進んだはいいが正直どこを目指せばいいかわからない……。
「……ダンジョンに逃げ込むとか?」
「えー、ずっと同じご飯はやだなぁ~」
真っ先に食事が浮かぶとは、さすがソフィたん。
「はっ! ごめんなさい、今のはなしで~……」
思わず言ってしまったらしいソフィたん。
「でもダンジョンは危険ですわ。そこで追っ手に見つかったら……」
「確かに、殺されても証拠もない、逃げ場もない。碌な提案じゃないな」
はい、すみません。
「行き先が無いのならば、タイグルリオンに行くのはどうだ?」
たいぐーりおん?
「タイグルリオン、獣人や亜人中心の国。通称、蔑まれし者たちの国、ですわ」
俺の背中でプリンちゃんが解説してくれる。
安定感を保とうと何度も持ち心地を直すが、これはあくまでプリンちゃんのため。
だからソフィたん、ジトーって顔で見ないで! ぷにぷに。
「……王国や帝国で辛い思いをしてきた人たちが集まった国だ。そのような言葉は……」
「気に障ったのなら失礼しましたわ。あくまで一般的な知識をお伝えしただけ。そもそもわたくしも、旦那様も、ですわ」
「……つまらぬことを言ったな」
「いえ、わたくしも配慮に欠けていました。申し訳ございません」
偉そうだけど偉そうじゃない、さすプリ! いい匂い。
「実は、私もしばらくはタイグルリオンにいてな。あそこで出会ったのは本当に偶々だったんだ」
ほーなるほどね。もちもち。
「ちょっと! あなた、まじめに聞いてあげなさいですの!」
プンすこプンすこ。むにむに。
「……はっ! す、すまん」
正直、我慢の限界が近いのもありましてね……。
「ごほんっ! ま、まぁとにかくあの国は身を隠すのに最適だし、国民も気持ちがいい奴らばかりだ!」
「じゃ、じゃあそこで……」
「ちゃんと考えてるのかな~?」
「怪しいわねっ」
ソフィリルにジトーっと見られる。
大丈夫、集中してるよ。もみもみ。
「んっ!」
あ、やべっ。プリンちゃんがっ……。
ぽかぽかっ。
ゲシゲシっ。
いてててて。
「と、とりあえず向かうというこでいいのか?」
良く事情を分かっていないクリスが話を先に進めてくれる。
ありがたい存在だ。
「よし、行くぞっ! タイグルリオンに!」
「(あなた、興奮してくれていますの?)」
ドキッ!
「(しょしょしょ、しょんなことはっ!)」
「(あなたのせいで、わたくしまで変な気持ちに……)」
「(ご、ごめん!)」
「(いえ……わたくしは、いつでもお待ちしておりますわ)」
ズッギュ~ンッ♠
俺はっ! 俺はぁっ!
「……よし、行くぞっ! タイグルリオンに!」
「それ、さっきも言ってたよ~?」
ソフィたんのジトーという視線が突き刺さる。
興奮冷めやらぬ中、新天地目掛けて出発したのでした。




