第3話 久しぶりに会った清楚系幼馴染が、みたいな
クリスを部屋に残し、俺たちは全員隣の部屋に行く。
そして流れるような動作でソフィたんのお膝に頭を乗せる。いわゆる膝枕。
その俺のお膝にディちゃんの頭。いわゆる膝枕トレイン。
「この姿を見たら、彼女が怒るのも無理がないと思っちゃうわねっ」
いいじゃんいいじゃん頑張ったご褒美ほしいじゃん!
「もぅ! ……よしよし、ありがとうね。ちょっとカッとなっちゃって……」
「いいってことよ。大事な恩人とあんなお別れじゃあまりにも悲しいじゃない?」
「本当にごめんなさい……」
「そこはほら! 『そこはありがとう』だよ!」
出会った頃にも同じようなやり取りしたね。言ったセリフは逆だけど。
「……ふふっ。あれからもう結構経ったね」
「そうそう。そんな長い間ソフィたんを想って頑張ってくれてた人なんだ、いくらでも我慢できるよ」
「……ありがとね、大好きです」
その言葉だけで全てが報われます。
「そんな姿じゃなきゃかっこいいのにねーっ!」
「目の前でいい雰囲気になって、むかつきますわぁっ!」
「3人も、フォローしてくれたり怒ってくれてありがとねっ♪」
「まぁ、別にたまたまよ。ソフィが悲しむのは見たくないじゃない! ――ぁ」
「その感じも久しぶりだね!」
「「「あはは!」」」
うんうん、俺たちは仲良く助け合って、いつも笑っていようね。
すやすや眠ってるディちゃんを撫でながら思う。
ディちゃんも今日はお疲れ様、パンツ後で返してね。
◆◇◆◇
「昨日は失礼なことを言った。申し訳なかった」
まさに渋々、ぐぬぬといった顔をしてクリスが謝ってくる。
まぁ、いいだろう。
「ソフィアは昔はあんなに自分を通す子じゃなかったし明るくもなかった。自分の知っているソフィアじゃなくなったようで、な」
あー、自分の知ってる人が何か変わってたら寂しいよね。
「しかし、良いことなのだろう。貴様のおかげというのが何とも腸が煮えくり返る思いだが……」
「それじゃあ、彼との事ちゃんと認めてくれますか?」
「…………まだそいつのこと、よく知らない」
「ふっふっふ~! その言葉を待っていたよっ!」
信じられるかい?
あの後丸1日クリスに対して俺の事を話し続けていたんだぜ?
あんなに毛嫌いしていた相手のことをだよ?
呆れて見ていたリルプリもいつの間にか参加してたし。
まぁ、俺の事だけじゃなく今まであったこととかも全部。久しぶりに会えて話が弾んでたようだ。
仲直りできたみたいで良かった良かった。
置いてけぼりの俺とディちゃんは美味しいものを食べに行ったり4人に給仕したりして過ごしました。
◆◇◆◇
「貴様に決闘を挑むっ!」
「どうしてそうなった?」
翌日。みんなの所へ行くと、クリスに開口一番そんなことを言われた。
「……間違えた。丸一日貴様のことを聞かされた恨みが出てしまった」
「それはご愁傷さまでした」
シンプルにそう思います。嫌いな相手の話を延々聞かされるって割と地獄。
「貴様が真剣にあの3人のことを、いや4人か、大事にしている、守りたいと思っていることはわかった。節操無しということもな」
話疲れてスヤスヤ寝ているであろう3人とディちゃんを見やりながら言う。
うん、この光景を守れるなら命すら惜しく……いや死んだら見れないから命は惜しいなぁ。
「貴様にその実力がっ、覚悟が本当にあるのか見極めたいっ!」
「なるほど、言いたいことはわかった。しかし……1回寝たら?」
「……そうさせて貰う」
聞きたくもないであろう話を、よくもまぁ頑張ったわ。
クリスはくそがつくほど真面目な、律儀な性格のようだ。
「主、おはょ」
「おはよ! 午前中も2人でどっか行こうか?」
夜更かししていないディちゃんが起きてきた。みんなはまだ寝てるし、まだしばらく2人っきりですな。
そう思ってるとディちゃんが飛びつてきた。
「主がどうしてもって言うなら、しょうがないから行ってもいいよ?」
しっぽふりふり、おめめキラキラ。
「どうしても、です。お嬢様」
「わふわふっ」
◆◇◆◇
そしてみんなが起きだしてきたお昼過ぎ。
決闘……まぁ模擬戦か。正直気乗りしないというか、やる意味を見出せないと言うか……。
ビュワッ!
頑張らないと首が飛びそうなんですけど! 殺意マシマシすぎでは?
一閃、一閃命を刈り取る音がするそれをどうにか躱していく。
「どうしたっ貴様の実力はその程度かっ!」
ぶっちゃけスキル使わない俺はただの木偶の棒みたいなもん……。
「ちょっとクリス、やりすぎだよっ!」
いいぞ、もっと言ってあげてっ!
「聞いたぞ! 貴様、メンシュライヒから恨みを買ってるんだってな! その程度の実力で守るなどと言語道断っ!」
首を狙う剣を、鎧の手甲部分で弾く。
鎧が既に傷だらけなんですけど!
……まあ、実際そうなんだよなぁ。
クインレイブスやロベルトのことだったり、ダンジョンでのことだったり。
自分の力不足を痛感しているのは事実。
力をくれてやろう的存在がいたら飛びつくんだけど、そう都合よくあるもんじゃない。
「ふんっ、軽薄なお前におあつらえむきな餌をやろう! 私に勝ったらこの体、好きにしても構わんぞっ!」
その瞬間、周りの空気が変わった。
違う、変わったのは俺だ。
俺が音を、世界を置き去りにしたのだっ!
まず防具生成で紐状のものを鎖かたびらの鎖部分を作る!
……そんなことできるのかだって? 勢いがあれば大丈夫! 俺も初めて知った!
そして圧倒的スピードでクリスを翻弄する!
「な、なんだ貴様っ! そのでたらめなスピードはっ!」
クリスも必死に剣を振り、ステップして身を躱す。
最早止まって見えるそれ避けながら、クリスの脇腹を突く!
お前の弱点は把握済みだっ!
「きさっ、貴様ぁ! 私を愚弄、ひゃあんっ!」
……あまり長引かせても可哀想なので用意した鎖で拘束し、近くの木に縛り付ける。
「くっ、殺せっ!」
頂きました、2度目のくっころ!
「いや殺さんけども」
「貴様っ、実力を隠していたなっ! ふざけるなっ!」
「そりゃ、いまいちやる気でなかったし」
「そのやる気をあの言葉で出すのはひどいと思うよ」
「さいてーっ」
「わたくしという相手が居ながら……」
……俺に味方はいなかった。
そういえば、昔読んだスポーツ漫画にあったなぁ。
女性好きのキャラが、相手が女性だと思い込むことで戦闘力を10倍程上げる奥義が。
よし、この状態を『モード:エア』と名付けよう。
このモードはいざというとき用だ。さもなければ戦えない体になってしまう。
それはさて置き。
「とにかく! 彼は、やる時はやる人だってわかったでしょ!」
ジトーとコチラを睨みながら擁護してくれるソフィたん。
「わかった、わかったよ……私は大人しく去る……」
「「「えっ?」」」
ん? そんな話じゃなかったよね?
「せっかく会えたんだから一緒にいようよ!」
「しかし、私は奴を侮辱したし、ソフィアにもひどいことを……」
確かに酷かったけど、それだとソフィたんがもっと悲しむでしょうが!
「ソフィたんを思ってのことだし、俺は気にしないよ」
「彼もそう言ってくれてるんだし、素直になりなさいよっ!」
リルちゃんが言うと――いや、やめておこう。
ゲシゲシっ。
いて。
「……途中でやめたのに」
「顔に出てたっ!」
「許して、くれるのか?」
「もちろん! 一緒に来てくれないと、ソフィたんが悲しむぞっ!」
「……わかった。不肖の身ではあるが、共に行かせてもらう!」
よかった、これで一件落着だ!
「これでシュナさんの妻の会会員がまた増えるねっ♪」
「「いや、それは遠慮しておく」」
「息ぴったりですの……」




