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第2話 大切な人の大切な人も大切な人

「何て軽薄そうな! ニヤニヤ顔のチャラチャラしたそこの男っ!」

 そんな男がいるだって!? みんなには近づけさせん!


「ソフィアから離れろ! ソフィアも何でそんな男のそばにいる!?」

 どこだっ! まさかもう近くにいるなんて! 見つけたらただじゃおかん!


「おのれっ貴様ぁっ! 純粋無垢で世間知らずなソフィアをだましているんだなっ! 許さんっ!」

 俺も許さんっ!!! ピュアっピュアでぷりっぷりなソフィたんを誑かすなんてどこのどいつだいっ!?


 ぽかっ。

 いてっ。


「……クリスっ! クリスだぁっ! 会いたかったぁ~!」

 しっかり俺を叩いた後クリスの元へ向かう。


「ソフィアっ! よし、このまま離れるんだ!」

「俺もソフィたんを守るっ! 軟派でフラフラしてそうな男はどこだっ!」


「貴様のことだッ! 死ねっ!」

 あたいだよっ!

 ですよね~。ってマジで殺す気かっ!

 首を狙った剣筋に冷や汗が垂れる。こわっ!


「クリス~、会いたかったよぉ~!」

 ガシッとクリスに抱き着くソフィたん。

 百合の花ですか? もちろん好きですよ。


「ソフィア……私は、会いたくなかった。いや会ってはいけなかったのに…………全て貴様のせいだっ!」

 ビュンっ!

 再び俺を襲う剣。殺意MAXだ。


「クリス! やめて! シュナさんは私の恋人なのよっ!」

 ちょっ! それ絶対火にガソリン!


「コロスっ!」

 ほらっ! 眼の光が消えてるっ! 俺の首を飛ばしてる未来しか見えてない!




「いい加減になさいっ!」

 

「――!? 貴様は……いや、あなた様は! 誘拐された隣国の王女っ!」

 あー、一瞬止まるかと思ったけどレギュラーガソリンからハイオクになっただけだわ多分。


「ソフィアを誑かすだけでなく王女の誘拐まで……!」




 まー、もういい加減飽きたからさ、状況考えて欲しいよね。

 確かにニヤニヤしてたけど、嬉しかっただけだし。

 軽薄そうなのは、すまんとしか。

 

「クリスっ!!!」

 スキルの威圧を用いて制止する。


「ソフィア……しかしっ!」

「彼は私の大事なパートナーなのっ! これ以上侮辱するならいくらクリスでも許さないっ!」


「…………すまなかった」

「いいけど。勘違いは誰にでもあるし」


「貴様には言っていない」

 イラッ。


「ま、まぁさ。ソフィもずっとクリスに会いたかったんでしょ? 気を取り直して一緒にお食事でもしようよっ!」

 リルちゃんが気を使って場を執り成してくれる。


「私は……結構だ。このまま行くことにする」

「……」

 ソフィたんが怒りながらも悲しそうな顔をしている。


「まぁさ、さっきのは水に流すから。ソフィたんはずっとあんたを探してたんだぞ?」

「話しかけるな、耳が孕む」

 声で孕んでたまるかっ! もしできるなら俺は世界一の子だくさんだっつーの!


「クリス。あの時は守ってくれてありがとう。もう2度と私達の前に現れないでください」

 あーあー本気で怒ってらっしゃる。女神モードやわ。




「……すまなかった。元気でな」

「いやそれは許さんけども」

 後ろから羽交い絞めにし、動きを封じる。

 

「ディちゃん、口に何か突っ込んで黙らせて!」

「わうっ!」

 ポケットから出して突っ込んだのは――。


 俺のパンツ……。


 何でそんなの持ってんのよ……。

 せめて使用済みでないことを祈っておこう……。


「もごもがっ!」

 

 とりあえず、宿に連れ込もう。俺の部屋でいいかな? 無駄に広いし。


 ◆◇◆◇


 部屋に戻り、腕を掴んだままベッドに座らせる。

 ディちゃんは素早く口に詰めていたものをポケットに入れる。

 ダメでしょ、そんなもの拾っちゃ!


「くっ! 殺せっ!」

 言うと思った!


「ぐぇっへっへ~、気の強い姉ちゃんじゃねえかぁっ! これからどんな顔するのか楽しみだぜぇっ!」

「この展開っ! 本で見たことあるっ!」

 リルちゃんは本の虫でしたからな。

 えっ、でもそういう本も?


「この後すぐ王子様が助けに来てくれるのよねっ!」

 あ、全年齢対象のやつっぽい。


「助けに来られたら困っちゃいますわね」

 そうなんです。リルちゃんのとは立場が逆だと思う。

 まぁ話を進めるか。


「まず、何でアンファンの村でソフィたんの前から消えたのかを教えてくれ。姉ちゃん、ぐぇっへっへ~」

 いけね、キャラ設定忘れるとこだった。


「……話すことなどないっ!」

「ディさん、やっておしまいっ!」

「わうっ!」


 しっぽでコショコショ鼻辺りをコショコショ……。

 いいな、気持ちよさそう。


「くしゅんっ!」

「ぐぇっへっへ~、どうした? 随分カワイイ声で鳴くじゃねぇかぁ~!」

「あなたのそのキャラはなんですの?」

 ようやく突っ込みが入った。


「っく! この程度の辱め、耐えて見せる!」

「ディさん、奥の手ですよ!」

「わうっ!」


 わき腹をツンツン、わきもツンツン。


「ひゃあっ!」

 ……さすが、元付き人。可愛い悲鳴までそっくりだ。

 これだけで今までの事許せそうになるからソフィたんは偉大だよな~。


「――っ! やめっ! くっ! わ、わかったっ! 話す、からっ! もうやめてくれぇっ!」

 何だ随分早いじゃねえか、お楽しみはこれからだぜぇ~!


「ディさん、やめて差し上げなさい」

「わぅぅ~」

 そんな寂しそうな顔しなくても、またいつかさせてあげるからさ。




「……我々はとある連中に狙われている」

「知ってる」

 ソフィたんのご両親を……絶対許せないやつらだ。


「私達はアンファンで身を隠していたんだが、私が護衛依頼で向かった町でやつらの仲間に見つかってしまい……」

 あー、そういうことか。


「追っ手を撒くために別の場所へ行ったが、やつらの動向がわからなくて戻ることはできなかった」

 そっかぁ。良かったねソフィたん! 嫌われたんじゃなかったよ!


「しかし、先程偶然ソフィアを見かけ、しかも横にはどう見てもソフィアにふさわしくない男! 見過ごせなかったっ!」

「ま、まぁ、幸か不幸かそれで再会できたんだしよかったんじゃないかしら?」

 俺もそう思う。結構ひどいこと言われてるけど、ソフィたんの念願が叶ったことの方が――。


「良くない」

「……ソフィたん」


「助けてくれたのは本当にありがとう。でも私の大事な人を悪く言うのだけは許せない!」

「しかしっ! どう見てもまともな人間じゃないだろう彼は! 昼間っから周りに女を何人も侍らせて!」

 ぐうの音も出ねぇっ! まず人間じゃねえっ!


「あなたに彼の何がわかるの? 彼が今までどんなことしてくれてきたのかも知らないで」

「こんな罵詈雑言に対しても彼は耐えてくれていますわ。少なくとも今のあなたよりはまともだと思いますけども?」


「隣国の王女、あなたは――」

「もう王女ではありません。彼はわたくしを救ってくれたのです。わたくしは自らの意志で彼に侍っているのですわっ」


「……そこのエルフも、獣人の娘もか?」

「そうよ? あたしも彼と一緒にいたいからいるのよ」

「主が許してなければ、お前を殺すところ」

 こわっ、ディちゃんこわっ! でもありがとね。


「……貴様は何故女性ばかり囲っている」

 え、男を囲う趣味はない……じゃないよね。

 

「そりゃ好きだから。一緒にいて守りたいから傍にいるに決まってるでしょ」




「……少し、1人にさせてくれないか」

「……まぁいいけど。ただし、どっか行くならせめてもう一度ソフィたんと話してからにしてよね」


「言われなくてもわかっている」

 イラッ。


 今回俺よく我慢してると思わない?

 後でソフィたんに慰めて貰おっと!


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