第7話 プライバシー保護のために掛けることもある
その後、俺は心強い仲間とともに爆速で階層を下っていく。
勢いに任せないと正直耐えられません……。
「パパぁ、頑張ったからギューって、して♡」
「おいおい、さすがにパパに甘える年じゃないだろう?」
「えー! ぶぅーっ! せっかくパパの為に頑張ったのにぃっ!」
「やれやれ、しょうがないな。少しだけだぞ」
「やったぁ♡ ぎゅ~~~~~っ♡♡♡」
「ふっ。おまえにも早くいい人が見つかるといいな」
「え~! サキュ、パパがいいのっ!」
「困った甘えん坊だ」
「えっへっへ~♡ パパだぁ~いすきっ!」
意味が分からないって? 俺もわからない。
どう接していいかわからず、とりあえずハードボイルドに決めている。
途中でサキュ――あのサキュバスが進化して、しかも喋るようになった。
しかもパパと呼び出す始末。
まじで訳が分からん……。
しかし……このまま戻ったら確実に殺される。みんなに。
恋人がプロポーズの為の材料を取りに行ったら、子どもを作って戻ってきた件。
いや普通に死ぬわ。
「え~、大丈夫だよぉ! パパはサキュが守ってあげるからぁ♡」
しかも、これ、繋がってるよねぇ~……。
俺とソフィたんみたいな魔力の繋がり。
「きゃっ♡ サキュと繋がりたいなんてパパのえっち♡ でも……パパなら、いいよ?」
「……」
「初めてだから……優しくして、ね?♡」
「………………………………さぁ! どんどん進むぞっ! ボスまでもう少しだっ!」
あかん、深く考えたらダメだ。
真の賢者は、何があっても立ち止まらないもんだ。
「えー! ぶぅーっ!」
◆◇◆◇
ようやく、というか突っ走ってきたおかげで早めにボス部屋に着いた。
前もこんなことなかったっけ?
ともかく――。
「サキュ、助かった。正直お前が何を考えてるかわからないが、本当に助かった」
「うんっ♡」
「しかしこの先は俺1人で進まなきゃならないんだ」
「わかってるよっ! 大事な人たちの為だもんねっ! サキュはここで待ってるよっ!」
しっかり思考が伝わってるんだなぁ~。
「でも1人で待つの寂しいから、ぎゅ~ってして?」
まぁ、それくらい……。
サキュにせがまれてギュッとする。
罪悪感からか疲れを感じるが、道中助けてくれてたのは事実なのでおまけに見て欲しい。
「……ふふ、パパ、大好き♡」
「……じゃあ行ってくる!」
「いってらっしゃ~い♡ 浮気はダメだよっ♡」
ドアを開けた瞬間、ピンク色の空間が広がる。
広がるが……そこまで魅力に感じない。むしろちょっと鬱陶しいというかなんというか。
「賢者モード中にエロ本見た時の感じ?」
「……!」
失礼な、といった感じで目の前の露出の多いお姉さんが憤っている。
ともかく、この機会に泥仕合の開始だ!
お姉さんをひっぱたく!
お姉さんにビンタされる!
お姉さんを張った押す!
お姉さんに馬乗りにされる!
お姉さんを揉みしだく!
お姉さんに揉みしだかれる!
お姉さんを突き飛ばす!
お姉さんが抱き着いてくる!
………………。
ようやく終わった時、俺は何かを失ってしまったかのようだった。
そういう意味ではない。
女性を殴ってしまったかのような、怖ろしいものだ。
この状態で魔石を採るって……えぇっ?
まぁ採るけど。
「パパっ、おかえり~♡」
「サキュ……何で裸に前掛け?」
「疲れたパパを慰めてあげるため、だよ♡ サキュでする? サキュがする? それとも……きゃっ♡」
正直『きゃっ』の内容が気になりすぎるが……。
「サキュ、前にも言ったけどもっと自分を大切にしろ。俺は大丈夫だから」
「……うん」
「まぁ、正直かなり疲れたからちょっと横になるわ」
「わかったぁ! お食事の用意しててあげるねっ♡」
サキュさんきゅー。
どのくらい経ったか、軽い眠りから覚めた時、はっと気付いた。
しまったっ! いくら何でも信用しすぎたっ!
サキュはこのダンジョンの魔物っ!
敵の前で何悠長に寝てるんだ俺はっ!
ガバッ!
ゴンッ!
「いでっ! ……サキュ、何してたんだ!?」
「きゃっ! いたたたた……。何って、サキュは起こしてあげようと……」
「嘘をつくな! 起こすのに顔を近づける必要はないだろっ!」
「…………サキュはサキュバスだから……生きるのに精気が必要だから……ボスに行く前も実は少し貰ってたの……」
「……」
「でも、パパはえっちなことダメって言うから、少し生命力を分けて貰おうと思って……ごめんなさい」
血の味がしたので口に触れてみると、唇から少し血が出ていた。
「ほ、本当はどこの血でもいいんだけど……キ、キスくらいならいいかなって……」
「……どうして」
「え?」
「どうして、それだけなんだ?」
「えっ! もっとえっちなことしていいの!?」
「ち、違う! そうじゃなくて、サキュバスは男の精気を枯れ果てるまで奪うって!」
「……だって」
「……」
「パパはサキュのパパだから……」
「そのパパって何なんだよ、俺はまだ誰ともいたしていないぞ!」
そう、誰とも……恋人3人もいるのに……。
あいあむえんぺらー。
「パパかわいそう……」
「我慢が辛いです。じゃなくて、パパと呼ぶ理由!」
「正直よくわからないけど、進化する前の時、パパの弱点を探ろうと精神に触れてたんだけど」
「なにそれこわい」
「その時今まであったこととかに触れて、楽しそうだなー一緒に行きたいなーとか思ったら」
「思ったら?」
「こうなった」
「うん、訳が分からん」
「しょうがない、『鑑定』するぞ」
「きゃっ♡ パパのえっち♡」
やめろ脚を閉じろっ! ギリセーフっ! ギリギリモザ〇クっ!
鑑定結果、エムプーサ。吸精、変身能力、サキュバスの上位種とされる。
しかし、テイム状態を示すものが何もない。
「あっバレちゃった♡」
「え、どういうこと?」
「ただ精神というか、心を覗いてただけで……心を許してくれてるから通用してたんだよ♡」
「……そうか」
まぁ、何だかんだ助けてくれてれば多少は心開くし、そもそも精神状態がたがただし。
「そうだよ♡ ねぇ、もうパパって呼ぶ理由なんていいじゃん、一緒にご飯食べよ~♡」
「お、おう」
そう言って、温かい雑炊のようなものを渡してくる。
「どう? 記憶の中にあった料理だよっ!」
「……うまい」
「えっへっへ~♡」
俺も現金なもので情が湧いてしまっているのも事実。
しかし、氾濫以外では、ダンジョンで生まれた魔物は外に出ることができないらしい。
……まじでどうすっかなー。




