第6話 油断は慣れた頃にやってしまう
「それは魔法として魔力を込められる人間が少ないからですわ。かなりの魔力制御が必要だと伺いましてよ」
そうなの? みんなならできそうだけど……。
てかプリンちゃんて割と物知りさんね。
パリンッ!
「きゃあっ!」
そう思っていると実験していたソフィたんが魔石を爆発させる。
「びっくりしたぁ、単純に魔石に込めるのとは全然違うよ! それに、普通に魔法を発動しそうになっちゃうし」
なるほど。ソフィたんは、大は小を巻き込んで爆発していくスタイルだからね。
ポカッ。
いてっ。
「あ、あたしはできそうだけどかなりきついわね……集中力もそうだし、MPも結構しんどいわ」
そう言って魔石を掲げ、魔力を込めてみると爪楊枝みたいな『アロー』が飛んでくる。
「しかも、魔法の規模が小さいわね。これじゃとても実用的じゃないわ」
ふむ。ならばと思い、俺も改めて作成してみる。
「ちょっと使ってみて?」
そう言って『堅牢』を限界まで込めた魔石をプリンちゃんに渡す。
適正はなくても魔力は込められる。というかヒト属は同じように適性がなく魔道具に頼る人が結構いるらしい。
「――これは!」
プリンちゃんが魔法を起動させることに成功する。
「すごいすごいっ! シュナさんにこんな才能があったなんてねっ!」
「ほんと、意外な……でもないのかな? がさつそうに見えて細かい気配りしてくれるし」
それ、褒めてくれてるの?
ちなみに、ディちゃんは手に持った魔石をずっと眺めていた。
キラキラしてて綺麗だもんね。そのおめめみたいに。
◆◇◆◇
修行の成果を見せに師匠の元へ訪れる。
「親方っ! 魔道具できたぜっ! ちょっと見てくれ!」
「帰れっ! ……おまえ、この文字は……?」
そうだった、漢字だったわ。
「……おまえがどこのどいつか詮索はしないが、この文字はしっかり隠しとけ」
「どうやって?」
「隠匿する、って同じように刻み込め。まさか、こんな簡単にできるとは思わなかったが……やはり文字か? 魔力効率が段違いだ……」
さすが漢字! 俺も覚えるのに苦労したからな!
「1つの文字にいくつも意味が込められているような感じだ」
漢字だけに。
「作成者が言語と認識している文字じゃないと魔道具には刻めないが……まぁ、念のために隠しとけ」
「何から何までありがとな、親方っ!」
「いいから帰れっ!」
今度うまい酒でも持って来よう。
◆◇◆◇
さて、ここまで来ればやることは1つ。
「精神攻撃主体のダンジョンボスってどこかいませんか?」
冒険者ギルドにて情報取集。
本人の言葉を信じるなら、ランク4のインキュバスの攻撃でも俺には効果がないからね。
「あるにはありますが大丈夫ですか? 道中も含めて大変危険です。そういった魔物と遭遇し、毎年少なくない行方不明者がでます」
あー俺が良くても他のみんなが心配だな……。
「んー、じゃあ心配だけど、私たちは近くの町で待機していましょうか?」
「大丈夫? 色々と……」
「う、うん。今回は目的も場所もわかってるし、多分?」
「あたしたちも、克服しないと、ね?」
それはそれで少しだけ寂しいけど、本人の為にならないしね。
「? 何をですか?」
「ソフィリルは主いないと震える」
「まぁ! おもしろいですわね!」
見てる分にはね。本人たちには割と深刻な問題。
この時俺は忘れていた。
インキュバスが言っていた重要なことに。
◆◇◆◇
フィルストから馬車で3日程離れた場所、のどかな村。
「おんやぁ、今の時期に冒険者さんとはめずらしいだなぁ~」
見わたす限りの、家と畑とジジババ。
ザ・ど田舎。
「ここには厄介な魔物が出現するダンジョンしかないからのぅ」
聞けばここのダンジョンが不人気すぎて、領主さん中心になって数年に1度大規模な討伐戦をする以外に人は滅多に来ないらしい。
「私たちはどうしよっか?」
「そうねぇ~、どうしましょうかしら?」
さすがにやることもあまりない。この辺には魔物もほとんど出ないらしい。
「んだらば、畑仕事手伝ってくれねえだか? 代わりにタダで泊めてやるど?」
人のよさそうな婆様が提案してくれる。
「まぁ、このわたくしが畑仕事だなんて……楽しそうですわぁっ!」
「いいわねっ! 健全なる精神は健全なる肉体に宿る、って言うしねっ」
偉そうだけど、実はそうでもないプリンちゃん。
これなら大丈夫そうだ。
「じゃあ行ってくるけど、何かあったらいつでも呼んでねっ!」
そう言ってイヤリングを弾き、ダンジョンに向かう。
この先何が待ち構えているかもわからずに……。
◆◇◆◇
何が俺に精神攻撃は効かないだっ!
何がランク4のインキュバスでも楽勝だ!
ここは地獄、いや天国じゃないか! いや違う、気をしっかり持て!
「……♡」
「……♡ し、しまったっ!」
一瞬気を奪われてしまった瞬間、目の前にボインの姉ちゃんのボインがボインボイン!!!
うっひょー!
じゃないっ! こいつらは魔物! こいつらは……!
そう、サキュバス。男の、ゴブリンの俺にクリティカルヒット!
ゴブ×サキュは熱い!
じゃなかった! 気合いれろ、心を鬼にしてこいつを倒すんだ!
「あんっ♡」
胸を揉みしだきながら押し倒す。
ちげーっ! 俺にはっ! 俺には既に恋人が3人いるんだっ!
負けてられるかーっ!
「♡♡♡」
ズッギュ~ンッ♠
――ぁ。
「……サキュバスちゃん、俺はこういうのは恋人になってからって決めてるんだ」
「?」
「サキュバスちゃんも、もっと自分を大切にしろよ。」
「……」
「悲しむ人がいるぜ? 少なくとも俺は悲しい」
「♡」
「一緒に行くか? 大丈夫、俺はお前にそう言うのは求めない」
「♡♡♡」
そうして俺に行きずりの相方ができたのでした。
真の賢者とは、逆境をチャンスに変えるものだ。
大丈夫、一線は超えてない。




