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第4話 幸せは日常の中にこそある。それに気づくのは失った後。失わないけど。

 ――ディ視点――

 

 その日はロべ何とかってやつの為に酒をたらふく飲むと決めたらしい主たち。


「おいロベルトてめぇ、何死んでんだよっ! 馬鹿野郎!」

 主は所謂絡み上戸というやつで、大泣きしながらロベルトとやらに絡んでる。壁に向かって。

 見えないロベルトがいるのだろうか?


「うぅぅ……ロベルトぉ、わたくし幸せになりますわぁ、もう既に幸せですわぁ……ぐすっ」

 この新入りの美味しそうな匂いがする女、プリンというらしい、は泣き上戸のようだ。

 よく意味が分からないことを言っている。


「あはっ! シュナさんがいっぱいっ! おいしそーっ!」

 ディたちのボス、ソフィは食い上戸……なのだろうか、怖ろしいことを言っている。

 幻覚を見ているようで、かなり危険だ。

 

「シュナイダー! あなたねぇ、ちょっといい男だからってところ構わず女の子を拾ってくるんじゃないわよっ! あたしのことも大切にしなきゃ許さないんだからっ! だいたい、あたし気をつけろって言ったわよね、プディング姫にっ! あたしの言うこと聞いてなかったの!? やっぱりあたしの事なんてどうでもいいんだっ!」

「黙ってろ!」


「――っ! そ、そんなキスなんかでごまかされちゃうどうしよう……しゅき♡」

 リルは喋り上戸。たくさん喋った後、主に口づけされて倒れた。


「ふぅ、やれやれだわっ」

 そんなディは大人上戸だ。おっぱいも膨む。

 以前ソフィが勘違いだと言っていたが、明らかな事実だ。


 主が『強い酒を飲むと体の魔法が消えて一時的に大人になるやつがいる』と言っていた。

 ディもそういう体質で、この果実ジュースは実は強い酒なのだろう。

 以前リルが雰囲気に酔ってるだけとか言っていたが、意味がわからない。

 

 こんな時はどうするんだっけ、何か言わなきゃいけなかった気がする。そうだ。


「じっちゃんはいつも1人っ!」

「うぅ、ロベルトぉ!」

 違うと思うが、どうでもいい。




 宴会の後は大体ディが片づけをする。

 主たちと出会う以前もそうだったが……。


「ふふっ」

 その時とは全然違う。

 前は冷えた心を押し殺し、渋々やっていたが、今は温かく楽しい気持ちだ。

 

 そして翌朝になると猛反省した主たちにいっぱい美味しいものを食べさせて貰えるんだ。

 ディは主たちのもので、主たちはディのものだ。一緒なんだ。

 なんて幸せな、満たされた生活だろうか。




 片づけを終え、最後に主を彼の部屋のベッドに運ぶ。

 だいたい主の部屋は大きなベッドで、ソフィたちは人数分ベッドがある部屋だ。

 コソコソと、よく主と一緒に寝る順番をソフィとリルで揉めているが、結局主と寝たことはない。

 そうだ。


「今日は疲れたし、主と一緒に寝る!」

 そう言って主と同じベッドに入る。

 少し、汗臭い。けど、ずっと嗅いでいたい匂いだ。


「暑いから服を脱ごう」

 今日はたくさん飲んだから、体が熱い。

 

「むふふ!」

 そして、ソフィたちより先に主と一緒に寝る優越感に浸りながら眠りについたのだった。


 ◆◇◆◇


 翌朝、猛烈な寒気と吐き気と嫌な予感に目を覚ます。

 そして目覚めたことを後悔するのだった。


「……」

「………………」

 め、女神の怒りが……。


「………………」

 だ、だめだっ気を失うことも叶わないっ!

 俺は何1つすることを『許可』されていないッ!


「おはようございますわ、あなたっ! ……あなた?」

 プリンちゃん、いやプディング姫様も状況を目にし、わなわなと震える。


「……わふっ」

 ここでディが起きた。全裸だ。


「さ、さすがに、これは……あんまりですわぁっ……」

「ん。新入り、それにソフィ。ディが最初に寝た!」




「「「――っ!!!」」」




「――はっ! あなた、そそそ、それっ……」

 プディング姫の言葉に俺も視線を向けようとしたが、慌てて目を逸らす。

 まっまままままっままままm……。


「ん? ……血?」

 まぁぁっぁぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛っ!!!


 やばいっ確定したっ! おおお、俺はまさかこんな小さい子とっ!?

 いいいやそんなことより、いやそれも重要だがっ!

 何1つ覚えていないのが1番よくないっ! いややっぱり年齢の方がっ!?




「………………」

 人って怒りが限界を超えると何も言えなくなるんだぁ。

 知らなかったし、知りたくなかったよ……。


「………………」

 人って罪悪感が限界を超えると何も言えなくなるんだぁ。

 知らなかったし、知りたくなかったよ……。




 この日、俺は生と死の限界の先を何度も超えたのだった。

 知らなかったし、知りたくなかったよ……。


「ふあぁぁあぁああああああ!」



 ◆◇◆◇ 




 なでなでなで……。

「んはぁ~……」

「よしよしっ……シュナさん、ごめんねぇ?」


 あの後、遅れてきたリルちゃんにとめられるまでゴブリック・サンドバックと化していた。

 死に瀕しては回復、その繰り返し。

 絶対間違った使い方だと思う。

 

 そしてよくよくディに話を聞くと誤解だったとわかり、当のソフィたんに慰められているとこ。

 

「ん~、まだ痛いなぁ」

「よしよしっ……ほんとに、ごめんねぇ?」

 まぁ、とっくに、というか最初から別に怒ってはないけど……儀式みたいなもん?

 ソフィたんももちろんわかっているんだろうけどね。


「それにしてもびっくりしましたわぁっ。あまりにもタイミングが、その……」

「ん。主の子孕む準備、できた」

 そう、ディが女の子から大人の女になったのは事実らしい。

 獣人の子は身体的成長が早いんだってさ。


「ディちゃん、あなたにはまだまだ早いのよ?」

「うー……。でもディが一番最初に主と寝た」


「それ、さっきも言ってたけど……どういう意味?」

「だってよくソフィとリルが喧嘩してる。どっちが先に寝るかって」




 本日2つ目の極大爆発魔法が我々を直撃した瞬間だった。

 極大消滅魔法かもしれない。何がとは言わないが。

 ……今のはさすがに気持ち悪いと自分でも思いました。


「なっななななあぁぁあっ!?」

「ぴっぴぴぴぴぴよっ!」

 焦ってる焦ってる。

 てかリルちゃんのそれ何? 焦ったら小鳥さんにでもなるの?


「ちょっ! ちょっと俺っ! 外の空気吸ってくるっ!」

「いいいいっってらっらららぁっ!」

「ぴよっぴよよっ!」

 まじで小鳥さんになってる。


「……ついでに体も洗ってくる」

 おもしろそうなので冗談を言ってみる。

 くっくっく。


「「「ぴっ!?」」」


「ディちゃん、おいで! うまいもん食いに行こうっ!」

「わふっ!」

 さらにこの話題にはまだ早いお子様も、さりげなく連れて行ってやる。


 スピード・シュナイダーさんはクールに去るぜッ!

 



 ……えっマジで? 今日!? 今日なのっ!? 今日卒業式なのっ!?

 お、俺に極大消滅魔法放たれちゃうのーっ!?


「主なんかキモイ」


 ◆◇◆◇


 ――女子会会場――


「こ、こほんっ」

「「こ、こほんっ」」


「「「…………」」」


「わっわたくしは、しっ新参者ですし、べべべ別に今日じゃなくてもよろしくってよっ!?」

「あ、あらそうっ!? では遠慮なくっご遠慮くださいっ!?」


「や、やっぱりっ! 最初に突撃するのも新兵の務めですわよねっ!?」

「う、うちはベテランが先に頑張るのよっ、新人さんには優しいのよっ!?」

「な、ならあたしねっ! 年齢的にぴよっ!」


「小鳥さんには無理でしょっ!?」

「はぁっ!? 何言ってるのよっ! 小娘にこそ無理でしょっ!」

「こここここはやひゃり、経験豊富なわやくしがっ!」


「「えっ、経験あるのっ!?」」


「…………聞いた話だけ、ですけど」


「「……」」


「お、お2人は……聞くまでもないですわね……」


「……なぃょぅ」

「……あったら、こうはなってないと思う……」


「「「はぁ……」」」




「経験と言えば……シュナさん、全然焦ってなさそうでむかつくっ!」

「なーんか余裕よねぇ~。むかつくっ!」

「彼はまさか経験がおありで!? むかつきますわぁっ!」

「ん~、それは無いと思うけど……」


「前に前世のことをチラッと聞いたけど、覚えてないって……」

「そういえば、一緒に記憶に触れた時大切な人達がいたって……」




「「「ま、まさかっ!?」」」




「何だか、切なくなって来ちゃった」

「あたしも」

「わたくしも、ですわぁ」


「……何か、美味しいもの食べに行こ~っ!」

「くすっ、ソフィは本当に食いしん坊ねっ!」

「あら、ソフィさんったらそうなんですの? くすくすっ」

「もぅ、そんなことないもんっ!」


「「「あはははは~!」」」


 ◆◇◆◇


 その夜、ワクワクドキドキが収まらぬまま――。

 

 ……いつまで待っても、誰も来なかった。


「……嘘だろっ」


 ◆◇◆◇


 ――???視点――


 死に損ねた。今でも信じられない。

 流れ的に、あそこで死なない?

 いや、命あってこそ、だけど……え?


 あの後『紅蓮の』小僧は結局逃げよった……。

 今でも信じられない……普通あそこまで言われて逃げるか?

『きょ、今日の所は見逃してやるっ』って……えぇっ……。



 

 満身創痍だったわしを助けたのは……まさかのカルロス。

 次に見つけたら殺そうと思っていた奴に、まさか命を助けられるとは……。


『あの時は俺のせいですみませんでしたっ! 美人の亜人さんに助けて貰ったって喜んでたら皆血眼になっちゃって……』

 しかも、別にカルロスは裏切ってなかったのだとか……。


『あの時の将軍の顔を見たら、言うに言えなくて……』

 そこは言いなさいよ、あんた。いらぬ誤解してたじゃない……。


 何はともあれ、わしは誘拐犯を追い詰めるも瀕死の重傷を負い、退役ということになった。

 なんか、スッとしないがせっかく拾った命。

 戻ってきてくれた家老やハウスキーパーたちと一緒に、孫娘たちの幸せを遠くで見守りたいと思う。


 いい人生、もうちっとだけ続くんじゃ!

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