表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/111

第3話 ロベルト

「体力の限界ですじゃ。わしはここで一休みし、その後時間を稼がせて頂く」

「爺やっ!?」

「ロベルトさんっ!?」

 ロベルト……。


「この先は門まで一本道、そこを抜けてしばらく行けばそなたらの得意な森が続く」

「爺やっ! 頑張って、一緒に――」


「何よりも優先するべきは姫様の、貴方がたの安全じゃっ!」

「で、ですがっ!」




「この老いぼれのせいで万一があったらっ! 死んでも死に切れぬっ!!!」

「――っ!」


「ここに……ここに、死に場所をくだされっ!」

「じい、や……」




 黙って近づき、かつて俺の顔を隠し続けてくれた兜を具現化する。

「……この兜を。俺の故郷には、戦友と健闘を祈り合い、身に着けたものを交換する習わしがあってね」

「……いいのか?」


「大事な孫娘がいるんだろう?」

「――っ! かたじけないっ!」

 

 そういって兜をかぶり、胸にある勲章を渡してくる。

「……50年の誇りじゃ。そなたに、最後の誇りを託させてくれ」


「――っ! 確かに、確かに受け取ったっ!」

 

「我が忠実なる騎士ロベルトよっ! 最期まで、その身朽ち果てる最期までっ! 我に忠義を示すがいいっ!!!」


「御意っ!」

「――っ、爺や! 爺や爺や爺やぁっ!」

 よく頑張った、よく頑張ったよ姫様。


「っふ、お行きなされ。姫の幸せがわしの最後の、最上の願いですじゃ」


 お前の最後の誇り、幸せにするよ。見守っててくれっ……。



 ◆◇◆◇


 ――ロベルト視点――



「来たか……」

 ようやく来た追ってどもと対峙する。

 心残りはない。最期によき友に出会えた。

 誇りを託すに値する、種族を越えた友。


「誰だっ君はっ!」

「どこの誰でもない。ただ、貴様らを阻む者」

 孫の幸せの邪魔をする貴様らをな。

 

「我々をランクA冒険者、『紅蓮の剣』と知っての愚行かっ!」

「おい、構わねえよっさっさとやっちまおうぜぇっ!」

「そうね、時間の無駄だわっ! 姫を逃がしたら私たちの名誉に傷がつく!」


「愚行、名誉が傷つく、か」

「何だ、今更怖気づいたかぁっ! もうおせぇよっ、その兜ごとどたまかちわってやるぜぇっ!」




「かかってこいっ!!! 小童どもっ!!!」

「なっ……」


「貴様らのことは知っているっ! 大した誇りも、守るべき信念もないっ! 命を懸ける覚悟もないっ! そんな奴らに遅れをとるわしではないわっ!!!」

「……き、きさまぁっ!」

「わ、わたしが魔法でやるわっ……」


 女の魔法が飛んでくる。

 剣で弾き、できた隙に別の魔法が飛んでくるが。


「効かぬ、効かぬぞ小童どもォッ!」







 やがてどのくらい経っただろうか。

 姫は、彼らは遠くに行けただろうか……。

 願わくば、幸せに――。

 っふ、いらぬ心配か。


「何をっ! 何を笑っているっ! 何がおかしい!」


「どうしたっ! 怖いのか、この老いぼれがっ!」

「く、くそ……」

 既に片腕は吹き飛び、右足は砕け、全身から流血している。

 にもかかわらずこいつらは近づこうともしない。


「ちまちまと遠くからっ! その剣は飾りかっ! 炎は見せかけか!」

「きさまぁ……!」


「怖がらずにかかってこんかいっ! さもなくば家に帰って母親にでも甘えておれっ!」

「きさまっ! きさまぁぁあああっ!!!」


 ようやく小僧が切りかかってくる。

 ……これで最期か。




 あぁ、いい人生だった。


 

 

 ◆◇◆◇




 無事にたどり着いた帝国側の国境都市、その宿屋の一室。


「シュナさん、これ……」

 メンシュライヒ側の新聞。

 第2王女が何者かに攫われたこと、その仲間と思われる人物を『紅蓮の剣』が炎で跡形もなく殺害したこと、痕跡を辿れなくなったこと……。


「――ッ!」

 プリンちゃんが記事を読み、涙する。


 その新聞を受け取り、俺も読む。


「ロベルト……」


 





 時は少し遡り、逃亡中の森の中。


「ねぇっ! 本当において来てよかったのっ!?」

「……」

「ねぇってばっ!」


「よくないよっ!」

「――ッ!」


「けどさすがに『紅蓮の』魔法使いレベルの魔法、そう防げる自信がないっ!」

「だったらっ! みんなで!」


「そのみんなを絶対守れる自信がなかったんだっ!」

「でもっ!」


「リルさん。爺やの思い、汲んでくれませんこと?」

「でも彼にもっ! 大切なお孫さんが!」


「……爺やには本当の孫どころか、家族さえいませんの」

「……」

「えっ? だって何度も大切なお孫さんって……」


「……わたくしの、ことでしょう。本当のご家族は昔、亜人に殺されたと聞きましたわ」

「――っ! そんなっ!? そんなことっ!!! それなのにっ!?」


「それなのに、だよ。その亜人である俺たちに、大事な孫や誇りを託してくれたんだ」

「――――ッ!」


「どんな葛藤があったかわからない。けどそれを越えて俺たちを信用してくれたんだ。俺たちは、それに応えなければいけない」

「――ッ!」


「生きるんだ、生きるんだよ。生きて幸せになることが、きっと彼に報いる唯一の方法だ」


 





「ロベルトはっ全部守り切ったんだっ! 誇りも、名誉も、俺たちも……」

「あなた……」


「全部守ったんだっ! だからロベルトが勝ったんだっ!」

 ロベルト、堂々としたその最期に涙が止まらない。



「酒だぁっ! こんなめでたい日にはしこたま飲むんだぁっ!」

「――えぇ、そうですわね! たくさん、たくさん飲みますわよっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ