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第10話 失敗を糧にできる人間になりたい

 翌日からリルちゃんに植物の特徴を教えて貰ったり、解体を手伝って貰ったり、マッサージしてもらったり。

 ゆっくりしながら1週間程でフィルストの町に到着した。


「やっと着いたね~!」

「行くときはあんなに早かったのにねっ!」

「シュナさんパワーだね♪」

 俺はみんなの為なら神をも屠るけどね。


「じゃあ早速お店の予約……の前に冒険者ギルドで換金してこなきゃね」

「じゃあ私とリルちゃんで行ってくるよ~!」

 ふっふっふ。今回は秘密兵器があるんです!

 ……もう届いてるよね?




 そう言って冒険者ギルドに入る。

「すみません、クインレイブスのギルドからソフィアさん当てに荷物届いてませんか?」

「あらソフィアさんたち、お久しぶりですね。えぇ、届いてますよ。こちらです」


 そう言って包みを渡してくれる。

 中身はもちろん冒険者証!

 みんなに事情を説明する。


「こ、これ……本当に貰っていいのかしら……?」

「不正なものじゃ……ないわよね?」

 ランクBの冒険者証を見つめながらソフィたんとリルちゃんが呟く。

 ディちゃんはキラキラ輝くそれに夢中になってる。ディちゃんはさすがにEランクだが。


「いいんじゃね? 町長が快く今回の報酬だってくれたんだし。再建とかでお金ないって言うし」

 結構強引に迫った感もあるが、それっぽくごまかしておく。

 ほぼ事実だし大丈夫!


 ジトーっと2人に見られる。

 表沙汰にできない、金銭も用意できない。

 そんな状況に対し、これで手打ちにしてあげたってことで勘弁して!


「まぁいっか♪ それじゃ続いて素材の買い取りお願いできますか~!」


 ◆◇◆◇


 まぁまぁのお金になったので、その足でお店に向かう。

 今回は女の子が好きそうな甘味の多そうなお店だ。


「くっくっく。ディよ、たくさん食べなければ明日はもっと食べさせるからな! はーっはっはっは!」

「どういうテンションなのよそれ」

「わぁーい!」

「……いいの?」


「おう。とりあえず店の商品全種類1つずつくださいっ!」

 きっと遠慮して注文できないかと思い、勝手に注文しようとするが――。


「これ、食べたい……」

「わかったっ! 店員さん、これ100個程お願いしますっ!」


「あのぉ、お客様?」

「1つでいい」

 そ、そう?


「……人数分ください」

 おかわりしていいからね?


「これ、お母さんがよく作ってくれた」

「厨房借りて作ってくる」

「シュナさん落ち着いてっ! それじゃあ親じゃなくて孫可愛さに我を失ったお爺ちゃんみたいだよっ!」

 なん……だと!? ……誉め言葉だな。

 



「……今度作って」

「ほらっ! ディちゃんも気を使っちゃってるじゃない!」


「違う。……主、作ってくれる?」

「――っ! あぁっ! 」


「わふっ」

「……ふふっ。あたしも作っていい?」

「私も作るっ♪」


「……嬉しい」




 今日は何とめでたい日かっ! ディちゃんが自分から頼み事をするなんて! こんな日には酒だっ!

「お姉さんっ! 飛びっきり上等なお酒……を使ったデザート的な何かを……」

「はい?」

「いえ、何でもないです……」


 バカか俺は……ディちゃんの前でお酒は禁句!

 ちょっと前世の記憶が戻ったからって調子に乗り過ぎた……。

 何かいいことがあったら源さんがよく連れてってくれてね。


 もちろん普通のバー的なところです。

 大人なお姉さんはたまにしかいらっしゃいません。


「主、お酒飲む?」

「いいや、お酒は嫌いだよ? 大人な味のデザートがあればと思って」

 いい誤魔化しっ! いい誤魔化しっ! 俺に座布団3枚!


「嘘付くの嫌」

「はい、すみません」


「お酒、注ぐ。注ぎたい」

「……え?」


「昔、お父さんが優しかったころ、ディが注いだら喜んだ。ダメ?」

「…………じゃあ、お願いしていい?」


「わふっ!」

 

 ……今回ばかりは自分の迂闊さに感謝しておこう。

 楽しそうに笑うディちゃんを見てそう思ったのでした。







 前言撤回。


 やらかしました。

 お酒を飲み過ぎて、途中から記憶が曖昧となってしまいました。

 ディちゃんが一生懸命注いでくれるのが可愛くて嬉しくて……。

 どうやら暴れるとかはしていなかったようですが、とにかくうざかったらしいです。


 2人の視線が痛いです。

 ディちゃんが尻尾をふりふり、笑ってくれているのだけが救いです。


「ディちゃん、お詫びに美味しいもの食べに行こ?」

「わふっ!」


 ◆◇◆◇


 ――ディ視点――


 たどり着いた町で私の歓迎会を開いてくれた。

 ここに来るまで毎日プチ歓迎会だったけど。


 今日の主はなんだかちょっと……うざい。

 うざいけど……やっぱりあったかい。


 お母さんが良く作ってくれたようなパンケーキがあったのでこれにした。

 そしたら今度主が作ってくれるらしい。

 

 もういい加減わかってきた。

 主はディの為に何かしたいと思ってくれるんだ。


 主はディのものなんだ。


 





 そう思ってたけど違った。

 主が酔っ払った後、ディを掴んで離さなかった。


 お酒臭い。顔ズリズリ痛い。耳も軽く噛まれた。

 お返しに尻尾を巻き付けたら、思いっきり撫でられた。

 

 ソフィリルが放してあげろと何度も言うが聞いてくれない。

『ディは俺のもの! 誰にも渡さん!』とか言って。


 やっぱりディは主のものなんだ。

 でもそれでいいんだ。


 ディは主のもので、主はディのものだ。

 あったかいからこれでいいんだ。

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