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第9話 有能感とか肯定感とか

「戻ったよー! さて、この後はディちゃんの歓迎会だ!」

「歓迎会?」


「いいわねーっ!」

「やったー、いっぱい食べよ~!」

 でた、食いしん坊ソフィたん! まぁ、今日は細かいことはいいっこなしで盛大に行こう!




 そう思い、町に繰り出す。

「良かった、女性も救出されたみたいだねっ!」


 ちらほら見える女性の姿。しかし表情はみんな一様に暗い。

「……ちょっと居づらいわね」


 お店のある方に進んで行くと時折声が聞こえる。

「もう少し早く助けてくれてれば……」

「あの子たちも同じ目にあえばいいのよ……」




「……予定変更、今すぐ町を出よう」

「そうね……彼女らへの配慮が足りてなかったわね……」 

「そうだね……」


 彼女たちやその伴侶や家族の戦いはまだ終わっていない、その事に今更気付いたのだった。

 本当に性犯罪は……尊厳を踏みにじる行為は許せない……。


 ◆◇◆◇


 冒険者ギルドに頼んだものの郵送を手配し、急いで町をでる。


「それと……謝らなきゃいけないことがあるの……」

 な、何だろう。すごく深刻な顔……。


「じ、実は……」

 ゴクッ……。


「実は、お金がほとんどありません……」

「あー、そうだったわね……」

「えっ!?」

 どういうこと?


「実は、例の魔道具を買うのに……ちょっと急ぎすぎちゃって……」

「ありったけの金貨を最初に提示したのよね。おかげで即落札できたんだけど、ね」

 そう言ってイヤリング状の魔道具を6つ程出してくる。

 

「ぷっ……あっははは」

「シュ、シュナさん!? ごめんねっ!」

「こ、壊れちゃったのかしらっ!?」


「いやいや、随分深刻な顔して言うから何事かと思ったら。お金はまた稼げばいいよ」

「シュナさん……」

 いいながらイヤリングをつける。


「これいいじゃんっ! お揃いのアクセサリーみたいで!」

 そう言って他の2人にも付けて貰い、ディちゃんには俺がつけてやる。


「俺は3人が無事なら何でもいいよ。そうだ、せっかくだからフィルストの町に戻るまで素材回収に勤しもう!」

「うん!」

「わかったわっ! しゅき♡」

「ん」

 ん?


「コホンッ! 久しぶりに私の魔法の出番ねっ!」

 何かリルちゃんの口から漏れた気がするが、聞こえなかったふりしてあげよう。




 ◆◇◆◇




「『ウインドアロー』×5!」

「ぶもぉぉぉっ」

 道中の魔物は、強くてランク2のオークくらい。

 しかし数がやたら多い。


「魔物多いね~!」

「あの町の冒険者ギルド、うまく機能してなかったからそれが原因かも?」

 最初の襲撃の時に主だった人たちは全滅してしまったようで。


「……なら、少しでも減らした方がいいわねっ! どんどんいくわよーっ!」

「リル、強い」




「私だって! 『平伏しなさい』!」

 ははーっ!


「ちょっとシュナさんはいいのっ!」

「えっ?」

 見れば目の前の魔物が平伏してる……いや、泡吹いて倒れてる。


「最近ちょっと怖い雰囲気だすと、魔物がああなるの! だから、シュナさんは起きてっ!」

「えっ?」

「ソフィも強い」

 強いだけでなく凛々しく美しく貴い。しかし普段はぽわぽわして優しい雰囲気を醸し出し見る人すべてを魅了してやまな――。


 ポカッ。

 いてっ。


「シュナイダー様は……強い?」

「つつつ、強いよ?」



 

「ギギィッ!(女神だ、女神がいるぞっ!)」

 今度はゴブリンの群れだが、彼らはどうやらソフィたん信者、敵ではないようだ。


「ギギャギャギャッ!(犯せっ犯せっ!)」

「今それ禁句だこの野郎っ!」

 ディちゃんにかっこいいとこ見せようと、全力全開のパンチ!

 ゴブリンたちは弾けた!


「シュナ殿、汚い」

 返り血やら肉片がついてしまった俺にディちゃんが離れていく。


「ど、どんまいっ」

 ソフィたんも励ましてくれるが、近づこうとはしない。


「……暗くなってきたし、今日はここで野宿しようか。ついでに体の汚れ落としてきます……」

 



 少し離れたところで水魔法を使う。

 便利なのはいいけど、魔力のコスパ悪いんだよなー、もうHP減りだしてる気がするし。


「御屋形様、何か手伝う?」

「うわっ、びっくりしたー! 別に大丈夫だよ? 2人と休んでれば?」


「……そう」

 ? 無理して手伝わなくってもいいのにね。




「では早速ディちゃんのプチ歓迎会をしたいと思いまーすっ!」

「わぁーい♪」

「ふふっ! たくさん食べてね、ディちゃんとソフィ!」

「……ん」


 採れたての豚肉とリルちゃん監修の元採取した植物。

 さすがリルちゃんだぜ! 肉によく合う!


「あなた! それは採取してないただの雑草よ!?」

「……うまい」

「……そう」

 

「んー! おいしー! ほら、ディちゃんも食べなよ~♪」

「ディは……」

「うん?」


「ディは何したらいい?」

「? お肉食べたらいいじゃない」


「そうじゃなくて……」

「んー? どうしたの?」


「ディは……強くないし、魔法もまだうまく使えない。ディは何すればいい?」

「べ、別に何もしなくてもいいのよ?」


「……ディは……いらない子?」

「「「!!!」」」


「な、何でそんなこと言うのよ!?」

「だって……」




 ……そっか。

 体を綺麗にするときに手伝いを断った時の悲しい顔、どっかで見たことあると思ったけど。

 妹も同じ顔してたなぁ……。


 まだ小さい頃、大事に大事にと思い過ぎたせいで、手伝いとか何もさせなかった。

 その後しばらくして妹が『私だってお兄ちゃんの為に何かしたいの!』って怒られて……。

 その時はめんどくさいこと進んでやるなんてまじめだなぁ~くらいに思ってけど。

 

 誰だって、誰かのために何かしたいのなんて当然だよなぁ~。

 さらにディちゃんの場合は、役立てないと捨てられると思い込んでるんだろう。


 さてどうするか。

 



「ディちゃん!」

 そう言ってディを持ち上げる。悲しくなるほど軽い。


「わうっ!」

 びっくりしてる。かわいい。


「ディちゃんの仕事は、まずは食うことだ! 女性はちょっとくらいぽにょぷにょしてる方が魅力的だからだっ!」

 あくまで俺の主観です。


「「!!!」」

 他の2人が何やら驚いているが、いまはそっちより、こっちの愛しい子だ。


「魅力的?」

「そうだ! 魅力的な女性になって俺を喜ばせるんだ! そして明日から仕事を教えるから、しっかり働くんだぞっ!」


「……」

「だけど、嫌なことは嫌って言っていいんだからなっ! したいと思ったことをする、それがディちゃんの仕事だ!」


「……わふっ!」

 ディちゃんが何かしたいと思うんならそれを尊重しようじゃないか。

 本当は一番言いたいのはそうじゃないんだけど、今言っても伝わらないと思う。


 だから最後に、この健気な頑張り屋さんを強く抱きしめる。

 一緒にいてくれるだけでいいんだよと思いを込めて。


「……主、あったかい」

「ディもあったかいよ」


「あるじ、あるじがしっくりきた。主にするっ!」

「ん、ディちゃんがいいならそれでいいよ」

 色々呼び方を試していたが、決まったようだ。


「わふっ!」




「わ、私ももう少し食べて魅力的な女性になるねっ!?」

「……リ、リルちゃんは少しやせ気味だよね!」

「え、えぇそうね。あたしはもう少し食べた方がいいかしらね!」


「わ、私ももう少し食べて魅力的な女性になるねっ!?」

「よ、よしっ! ディたくさん食べるんだぞっ!」

「わ、わうっ!」


「わ、私ももう少し――」

「現実を受け止めなさい。もう十分よ……」

「ひーん!」


 とっても魅力的な豊満わがままマシュマロボディです。


 ◆◇◆◇


 ――ディ視点――



 主たちがディに気を使ってるのがわかる。

 嬉しいけど何だか悲しい。


 ソフィやリルはとっても強い。

 ご主人様の役に立っている。


 ディは……何もできない。

 それがとても悲しくて。


 何かできることがないか聞いた。

 やっぱり気を使われた。




 ……そう思ってたけど違った!

 ご主人様はディの事ちっとも考えてない!


 急に抱きしめてきて、痛いって思っても離してくれない!

 涙が出てるのにちっとも離してくれない!

 涙でご主人様の服が濡れるって思っても離してくれなかった。


 


 なんだかとっても温かい気持ちになった。



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