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第8話 それぞれの思い、それぞれの立場

「おかあさん……うわぁああああああ」

「おかっおかあっおかあざぁぁああああんっ!!! ずるっ! ディぢゃん絶対ぢあわぜにずるっ!」

「何であなたの方が感極まってるのよ……」

「おかあさん、安心してください。ディちゃんは必ず守りますから……」


 ニコッ。


 おがっおがあざんが笑っだあぁぁああああっ!


 ◆◇◆◇


 ――ソフィア視点――

 

 お母さんの霊は話せない代わりというように、私たちに記憶を見せた。

 ディちゃんと出会う前の事、出会った時の事。


 とても理不尽で切なくて、その悔しさ痛いほどわかった。

 お母さん、大丈夫。後は任せてね!




「あたしは……正直許せないっ! 彼の精神を乗っ取ったこと、許さないっ! もしかしたらそのままの可能性だってあった!」

 リルちゃん……。


「けどっ! あんたの気持ちよくわかったっ! だからディちゃんは任せなさいっ!」

 リルちゃん!


「わかったらささっと生まれ変わって謝りに来なさいっ! そして一緒にディちゃんの成長を見守るのよっ!」

 そうね、生まれ変わったら一緒に冒険しましょう!


「わぁぁああああんっ! リルちゃぁぁぁんっ! おがあざああああん!」

「きゃっ! ちょっと……もぅっ!」

 シュナさんとディちゃんがリルちゃんに抱き着いて号泣しだした。


 当の本人は操られたことやそれのせいで受けた被害など、ちっとも気にしていない。

 彼は、身内だと思った人の幸せをどこまでも望み、そのためには自分は何だってする人間なんだ。

 それでいいの、彼はそのままで。私たちが彼の幸せを願い、支えればそれで。




 お母さんは、そんな私たちを眺めながら優しく微笑んでいる。


 やがて――お母さんはディちゃんを抱きしめた後、ゆっくり私を見た。


「もしかして……いえ、いいのねお母さん……」

 

 コクッ。


「『天国への扉』」

 今、お母さんを見て決めた新しい魔法の名前。

 どうか、安らかに……。




「「おがあざぁぁぁあああああんっ!」」

 


 

 ◆◇◆◇




 うぅ、お母さん……。

「ご主人様、痛い」

 すっと抱きしめたままだったディちゃんに怒られる。


「え、ご主人様って俺?」

 思わずびっくりして離れてしまった。

 幼女に言われたいって前世で誰かが話してたけど、この状況は嬉しくないどころか正直苦しい。

 

「……その呼び方、じゃないほうがいいなぁー」

 くすっと笑い声が聞こえた。ん?


「じゃあ、お母さん?」

「何でやっ!」

 

「だって、最初はお母さんだった」

 あぁ、乗っ取られてた時の。


「だから、最初からやけに信頼してたのね!」

 なるほど、けがの功名ってやつ?

 だって、本来大人を怖がっててもおかしくないもんね、きっと……。


「好きに呼べばいいけど……」

「……」


「……」

「……」


「……考えとく」

「りょ」




「さて、俺はちょっとお出掛けしてくるね」

「ど、どこ行くのっ!?」

 めちゃくちゃ心配される。まぁ仕方がないか。

 けど、これからすることはあまり見られたくないんだ。


「ちょっとした野暮用だよ。大丈夫、この町から出ないし、今日中には戻ってくるから」


 言い終わるや否や、2人が猛烈に震えだす。

 えぇ……。


「わわわわわわかったたたたたた」

「ぜぜぜぜったいいいいいいいもどもどもどってきててててて」


「ごめん、やっぱいいです……」




 まぁ、今日くらいは見逃してやろう。

 2人より優先することでもないしね!


 その日は4人でゆっくり過ごしたのだった。

 



 ◆◇◆◇




 そして翌日、2人も落ち着いたところで目的の場所にたどり着く。

 そこで俺は……。


「魔族倒した……女性救った……」

「わかっていますっ! わかっていますっ! しかし……正直な話、報酬を支払うことはかなり難しく……」

 冒険者ギルドにやってきました! って何だとコラァッ!


「は? こっちは町1つ救ってやったようなもんだぞ」

「その通りですっ! その通りなんですが……この件は、冒険者ギルドは『知らなかった』のです……」


「……どういうことだ?」

「ご存知の通り、彼の魔族は女性を人質にこの町を裏で支配していました。その際に外部との連絡を禁止、ギルドもそのせいで外部との連絡が取れなかったのです……」


「いや、そりゃそうだろうけど……他にやりようはあっただろ? 奴隷商は行き来出来てたみたいだし」

「奴隷商だから、です。我々冒険者には監視も厳しかったのです。万が一にでも他所に救援を求めたことが露見してしまったらと思うと……」


「……少なからず死者も出たみたいだが?」

「それが町の方針です」


「……」

「……言いたいことはわかります。しかし、敢えて言わせてください。……我々はあなたほど強くはない」


「……」

「強くないなりに、犠牲を最小限にしようと、何とか生きようとみな必死だったのです。そこだけはわかってください……」


「…………わかった、納得はできないが、理解はした」

 魔族を打倒する力が無かったから、この地獄を受け入れざるを得なかったってことか。


「ありがとうございます」

「いや、うん。俺は所詮外部の人間だ。今回のことは俺自身肝に銘じるよ。すまないな、偉そうに」

 周りがああすればよかったとか、やりようがあったって言うのは少し卑怯かもね。

 少なくとも、この地獄を耐えるという覚悟や苦難を我慢してきたことは尊ばれるべきことだと思う。




「まぁ、それはそれとして何か頑張ったご褒美的な……あっ! そういえば俺、冒険者証ないんだった……」

「……そういえば、ゴブリンでしたね。では特別に冒険者証をお作りする、ということを報酬とさせて頂くのは如何ですか?」


「うん、それでいいや。あ、もう1人仲間が増えるからそれも頼めない?」

「かしこまりました」




 ◆◇◆◇




「魔族倒した……女性救った……」

「わかっていますっ! わかっていますっ! しかし、我々も被害者のケアや魔族の散財で財政が……」

 お次は町長のとこ。まぁ事情はわかっているが、売った恩は回収しておきたいじゃん?

 それに直接被害受けてるんだよね、実は。

 

「騙し討ちされた……殺されかけた……」

「……」


「別にお金でもいいけどー他のでもいいなー」

 事情は分かる、どうしようもなかったかも知れないけどさ。

 無罪放免とするにはちょっと納得できない。


「……わかりました。あなたは冒険者ですよね? ランクBに推薦させて頂きます。 それでよろしいでしょうか?」

 あー、ランクBって貴族の推薦がいるんだっけ?


 ……あり、だな。


「んーそっかー、けど俺1人だけじゃ無理だったなー仲間がいたからなー」

「……全員分ランクBに推薦させて頂きます」

 話が早くて助かるわー。


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