第6話 念願かなって
――ソフィア視点――
目を開け、少しすると真っ黒だったものが光だした。
「戻ってくるのねっ!」
リルちゃんも嬉しそうに言う。
いよいよだ。長い間待ったんだ。
『人の姿になれるかもしれない。もしそうなったら、俺、ソフィたんに告白するんだっ!』
彼が初めて進化したときに言った言葉。
私は別にあの姿のままでも良かったけど、姿が人間になれるならそれに越したことはない。
「ソフィ……いよいよ、ね。先越されて悔しいけど、あたしもすぐに言わせてやるんだからっ!」
「リルちゃん……ありがとう。大丈夫、私たちの関係はこれまで通りだよ!」
リルちゃんには『シュナさん報告会』で何回も自慢……報告していた。
もうすぐっ2人の、いや3人の願いが叶う! もうすぐだよっ!
――光が晴れるとそこには人間の姿をした、少し以前の面影が残る、シュナさんがいた。
「シュナさんっ!」
「あなたっ!」
……ん? リルちゃんの呼び方に若干の違和感を覚えるけど……。
でも良かったっ! ちゃんと人間になれたんだっ! 妹ちゃんの言う通りまぁまぁかっこいい!
何となくこの流れだと次回に持ち越しな気がしたけど、本当に良かった! 結構イケメンだ!
「2人とも……ありがとうね。戻ってこれたよ!」
「いいの、いいのよ?」
いいからっ、そんなことより早くっ! ずっと待ってたんだからっ!
ガクガクガクガクガクガクガクガク。
「ソ、ソフィたん!? めっちゃ震えてるけど大丈夫!?」
「こ、これはっ! まずいっ! あなた、いいから早く、言わなきゃいけないことあるんでしょっ!」
「えっ今? だ、大丈夫なのソフィたん……」
「むしろ今よっ! 今じゃなきゃダメっ!」
「そっそう? えっ無理じゃ、いや、あっちか……あれ俺リルちゃんに言ってたっけ?」
「いいからっ!」
「わ、わかった! スゥー……ハァ……」
シュナさんが一度深呼吸。いよいよ、いよいよらっ!
「ディちゃん、俺の、俺たちの家族になって欲しいっ!」
「……」
「……」
「……」
「順番が逆になっちゃってごめん! 俺が君を守るからっ! ずっと一緒にいて欲しい!」
「……ご主人様、どっか行ってた」
「う……ごめん、でももう絶対――っ!」
「……でもディのためだったって知ってる。だから――」
「……」
「これからも、一緒いてくれる?」
「――ああっ! もう絶対辛い思いをさせないからっ! ずっと一緒だっ!」
「ぅぅ、うわぁああーん!」
どうしてだろう、感動的な場面のはずなのに、この気持ち。
そもそもディちゃんがここまで打ち解けてくれてるのは私たちのおかげだとか。
あなたはディちゃんを連れてきたその日にいなくなったじゃないだとか。
言いたいことはまだまだある。けど、一番はそれじゃない。
それじゃないけど……言えない、この空気じゃ……。
「よ、よかったわね、ディちゃ……」
何とか振り絞った言葉の後、私は意識を失った。
◆◇◆◇
――リルリル視点――
「ソフィたんっ!? 大丈夫!? ソフィたーん!!!」
……本当に、よく頑張ったと思う。
よく、最後の言葉を言えたわね……大丈夫、このバカにはあたしがよく言っておくから……。
「大変だっ! ソフィたんが!」
「……とりあえず、運びましょうか」
町長たちを始め、町の連中は女性の救出に忙しいみたいなので仕方なく宿まで戻った。
ディちゃんには悪いけどソフィを看てて貰うことにし、シュナイダーを呼び出す。
「リルちゃんどうしたの? ソフィだんが心配なんだけど……」
「あんたがっ! 原因っ!」
ゲシゲシッ。
「ちょっ! どういうこと!?」
「あんたっ! 人間になったら! ソフィにっ! 言うことあったんでしょっ!」
ゲシゲシゲシゲシッ。
「――ッ!? な、何でそのことを知って……」
「今はっ! どうでもっ! いいっ! あたしたちがっ! ソフィがっ! どんだけ頑張ったと思ってるのよっ!」
ゲシゲシゲシゲシッ。
やばい、泣けてきた。
「ディのこともわかるけどっ! あそこはそうじゃないでしょっ!」
「だ、だって……」
「だってじゃないっ!」
ゲシゲシッ。
「いや、ソフィたんめちゃくちゃガクガクしてたし……ちょっと止めとこうかなって……」
スッ。
「確かに」
「てかあんな震えてた後に倒れたんだっ! すっごい心配なんだけどっ! 医者とかに診せた方がいいよねっ!?」
「あー、うん。寝てる間、手をつないでてあげて。それで大丈夫だから」
「えっ!? そんなんじゃだめでしょ!? ここの医者もそれどころじゃないだろうけど、頼み込んで……」
きっと奥さんとかの救出で大変そうだもんね。そうじゃなくって。
「最近もあったのよ。本当にそれで治るから。訳は起きたら話すから、とにかく行ってあげて?」
「そ、そっか……わかったっ!」
「ごめんソフィ……」
その通り過ぎて何も言えなかったわ。
◆◇◆◇
「ソフィたん……」
倒れる前、ものすごく震えていた。大丈夫だろうか……。
握った手に力が入る。
魔法を使った方がいいのか悪いのか、それすらもわからない……。
「ん……んん?」
「ソフィたんっ!?」
良かった、起きたっ!
「……はっ! シュナさん!」
「ソフィたん!」
思わずギュっとしてしまう。
「きゃあ……く、くさくなぁい?」
「…………ずっと嗅いでいたい」
「に、匂うんだっ! やっぱり匂うんだっ!」
「ずっと、走ってきてくれたんだってね。俺のために……」
「う、うん……」
「ありがとう」
「うん」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ソフィ――」
「起きた。良かった」
「ひゃあっ!」
「いいいいい、いつからそここここにいいい!?」
「? 最初から」
「そりゃそうだよね……」
リルちゃんも、そりゃそうだと頭を押さえてらっしゃる。
そうだ、確認しときたいことがあったんだ。
もしもし、ソフィたーん!
「(なぁに?)」
次に、思考を遮断して……。
好きです。
「!!!」
ずっと一緒にいてください。
「はい、私も好きです。もうどこにも行かないでね?」
やっぱり、遮断したつもりが全部伝わってたんだね。
でもいいんだ。それでも。
これからもよろしくね!




