第5話 繋がってなくても、繋がっている
――ソフィア視点――
真っ黒なモノ。
「良かった、シュナさん。そこにいたんだねっ!」
ずっと、ずーっと、探したんだよ?
「どこか行っちゃうなんてひどいよっ!」
たくさん、たっくさん走ってきたのよっ!
「あの時怒りすぎちゃって、ごめんね?」
とっても、とーっても反省したのっ!
「でもシュナさんもちょっとだけ悪いと思うよ!」
少し、ほんの少しだけ傷ついたんだからっ!
「だから、一緒にごめんなさい言い合おっ!」
それで、それで仲直り……。
ずっと、ずーっと一緒にいるんだよ……。
「ちょっとシュナイダーっ! なんで何も言わないのよっ! こっちは突然いなくなったあんたを探しにはるばる来たのよっ!」
「……」
「会いたかったの一言ぐらい、言ったらどうなのよっ!」
「……リルちゃん」
「あんたがいなくなってやっと気づいたのっ! あたしあんたのこと好きっ! 愛してるのっ! だからありがとうくらい……言ってよ」
ドクンッ!
「「――っ!!!」」
「い、今っ!」
「えぇ、確かに感じたわっ!」
「「そこにいるのねっ!」」
「ちょっ! お嬢さん方危ないっ!」
制止の声が聞こえた気がするけど、私たちは迷いなく飛び込んだ。
だって彼の事よ? 私たちを傷つける訳ないじゃない?
◆◇◆◇
真っ暗な意識の中、何かが見える。
明るい、俺とは真逆の、温かな太陽みたいな光。
とてもとても美しく、優しい光。
そして……寂しく、救いを求めるようなか細い光。
その光たちが呼んでいる気がした。
ドクンッ。
その直後、光がぶつかってくる。
だめだ、その光たちは絶対に傷つけてはいけない!
はっきりしない意識を無理矢理繋ぎとめ、その光を貪らないようにする。
「いたっ! いたよ! やっぱりいた!」
「ばかっ! こんなとこにいるなんてっ!」
「ソフィ、リル……」
「そこはソフィたんでしょっ!」
「リルちゃんって呼びなさいよっ!」
「ナゼ、2人ガ……ココニ?」
「あんたが勝手にどこか行くからでしょっ!?」
「そうだよっ! ずっと一緒にいるって約束したじゃないっ!」
「俺ハ……イケナイ」
「「そんなの知らないっ!」」
「ナッ!」
意識を強引に包み込まれ、外に連れてかれそうになる。
「チョッ、ハナシテッ! コンナ姿ダカラ、ダカラ行ケナイノッ!」
あ、何か意識がはっきりしてきた。
「そういえばそうよっ! 何なのよ、この姿はっ!」
「エッと、2人がインキュバスにオソワれて、ソれで、アいつラも自分モ許セナクテ、全部ドウデモヨクナッテ……」
あ、意識が薄く……。
「? 襲われてないよ?」
ん?
「あれじゃない? 途中で来た変な魔物、ソフィが魔法で消したやつら!」
「あー、何か出てきてすぐ消えちゃったからわかんなかったねぇ~」
え?
「ジャ、じゃア念話のソフィたんノ喘ぎ声は……?」
「……もぅ! シュナさんのえっち! ディちゃんのマッサージだよっ!」
ポカッ。
いてっ。
「すけべっ」
ゲシゲシッ。
いてっ。
「「ばかっ!」」
ポカポカッ!
ゲシゲシッ!
いてててててっ!
「覚めたっ! 今ので完全に目が覚めたっ! もう帰るっ! 一緒に帰るっ!」
「てゆうか、インキュバスに襲われても死ぬことは少ないんだから……もしそうなっちゃっても、優しく慰めてよっ!」
「……確かにっ! 別に死ぬわけじゃないじゃん! 俺、何か勘違いしてた……」
まぁ、精神状態が極限だったのもあるし?
2人が万一汚され、尊厳を踏みにじられようとも、俺が慰めないでどうする!?
まぁ、もう2度と2人にそんなピンチ招かないけどねっ!
「ふふっもう3人だよ?」
そっかディちゃん……ってあれ? パス繋がった?
「みたいだね。……あー寂しかったっ!」
うん、俺も。
「でもこの姿、どうしよう……」
「んー、自分の姿を思い浮かべてみるとか? ついでに人間っぽいのにしたらっ?♪」
「えー、そんなんで戻れるの?」
「いけるいけるっ!」
「根拠は?」
「んー、ない!」
「ないのかー。ははっ、逆に元気出たっ!」
いつもポジティブ! ソフィたんっぽいっ!
そうだ、人間になれたらソフィたんに言うことがあったんだっ!
諦めて、たまるかーってことで2人は外に出ててね!
「うん、待ってるね」
「今度はすぐ来なさいよ」
「はぁいっ!」
◆◇◆◇
とはいえ、どうすればいいのか見当もつかない。
とりあえず、念じてみよう。
「早く人間になりたーいっ!」
「それ、シュナさんの前世の記憶の言葉よね?」
うわぁ、びっくりした! ソフィたん何でいるの!?
「んー、多分パスのせい? 体は外に出てるけど……」
「そっかぁ」
今なら体に悪戯し放題……。
「聞こえてますけど?」
ご、ごめんなさいっ!
「それで、前世の記憶、もっと思い出してみない?」
「それは……よく覚えていないんだ。特に俺自身のことは」
「でも、なんとなくだけど。ここならできる気がするよ?」
そういえば、ここはどんな場所なんだ?
「多分、ここはシュナさんの深いとこ、精神的な世界なんじゃないかな? パスで繋がってる感じが、全体からするの」
なるほど。いつも精神的に繋がってるソフィたんがそういうなら、そうなのかもね。
「でも、どうやったら思い出せるだろうか……」
「あっち! 行ってみよーっ!」
そう言って進みだす。きっと根拠は無いんだろうけど。でもそれでいいんだ。
ソフィたんはいつも明るく、前を照らしてくれる。一緒にいるだけで元気になれるんだ。
「……あの、全部、聞こえてます……」
……モウ……ドうでモ、いイ……。
◆◇◆◇
「何かあるよっ!」
再び闇落ちしかけている俺を連れてソフィたんが見つけたものは、淡く光るモノ。
「さ、手を伸ばしてっ!」
言われるがまま手?を伸ばす。
触れると、ビリビリビリっと強い電流が流れるような衝撃が走った。
『――殿はどの子が好きでござるかっ!?』
『俺? 俺は……この金髪の子?』
『なんとっ! その子は拙者の嫁ですぞっ!』
『いやいや、拙者の嫁ですぞっ!』
なんか、記憶が流れ込んできたっ!
行けるっ行けそうだ! こんな感じで思い出せそう!
「……金髪の子って、誰?」
……え、これソフィたんにも伝わってるの?
「そうですけど……金髪の子って、誰?」
つ、続けても大丈夫なのかこれ……。
しかし今ので少しずつ思い出してきた。
前世の俺にも、とても大切な人達がいたんだ。
その後も同じような光に触れ、次々と思い出していく前世の記憶。
『○○お前、中卒なんだって?』
『……っす』
『ばっかお前今時高校くらい出とけやっ! 俺みたいに苦労すっぞ!』
『……ぁっす』
『○○、お前まだ童貞なんだって!?』
『っす』
『しゃーねぇなっ、今夜いい店連れてってやるよっ!』
『しゃっす!』
『○○、どうだった! あの店良かったろっ!』
『っす!』
『……お前はわけぇのによく働く大した奴だ。苦労も多いだろうが、何か困ったら言えよっ!』
『……ありがとう、ございます』
思い出したっ! 完全に思い出したっ! めちゃくちゃ世話になってたんだよあの人!
源さーんっ! 俺は元気だぜーっ!!!
「どうていってどういう意味?」
「道程。まぁ、到達すべき道の途中って意味で、まぁ仕事としてまだまだってことだったんだよ」
「いいお店って、どこ?」
「まぁ、その仕事の訓練をさせてくれる、まぁお店のことだよ」
「そうなんだっ! ごめんね~変なこと疑っちゃったっ!」
まぁいいよ、まぁ。次行こ次。
さらにいくつかの記憶を辿り、やがて――。
『お兄ちゃん?』
「!!!」
『ばかね、お兄ちゃん。お兄ちゃんはもう生まれ変わってるのよ? 昔の姿じゃなくてもいいじゃない!』
「舞っ! 俺は――っ!」
『それでも前の姿がいいの? 確かにちょーっとだけイケメンだったかも? でもちょっとよ、ほんのちょっと!』
「……同じなんだ。今も、舞と同じくらい守りたい人たちがいるんだ」
『……だからって姿まで同じにならなくっても……もぅ! しょうがないなぁ~♪ ほらっ!』
きっと、舞から見た俺の姿。それがイメージとして流れ込んでくる。
「舞っ! 俺は……俺はっ! 」
『ずっと、ありがとうね。お兄ちゃん……』
「今のは記憶? いや……願望、なのか?」
「妹さんがいたのね……」
まだ妹が幼い頃に、両親を亡くしてね。
今思えばもっといい方法とか、補助とか受けられたんだろうけど。
中学生だった俺は、源さんのとこで年齢をごまかして必死に働いて……。
まぁ割とすぐバレたんだけど、それでもそのまま雇ってくれてさ……いい人だったんだよ、源さん。
「……妹さんの話の方が聞きたいなぁ~」
舞? 舞は……すくすく育ってくれたよ、俺より要領よかったし。
高校もお金かからずに行けてたみたいだし。
今頃公務員でもしてるんじゃない?
……だから、心配はしてない。
「……きっといいお兄さんが守ってくれてたから、だよ♪」
……今も同じくらい、それ以上に守りたい人がいるんだ。
じゃあ……早く戻らなきゃだね。
うん、戻ろう。みんなのところに――。




