第1話 お約束
新章です。よろしくお願いいたします。
ブックマーク等ありがとうございます!
お姫様キャラが好きです!
あれから1カ月ほどたち、少し肌寒くなってきた今日この頃。
我々は今、帝国の首都へと向かっています。
というのも、我々の欲する魔道具がオークションで出されると冒険者ギルドの方に聞いたのです。
何度かダンジョンアタックを繰り返すも目的の物は得られなかったため、いちもにもなく出発を決めました。
開催日には余裕があるため、徒歩での移動です。
節約ではなく、冒険者らしく野宿をしたいと申されたからであります。
「ふんふふっふふ~ん」
「……あなた、何でそんなに元気なの? あたしよりも体力あるし……」
「? だって楽しいじゃないっ♪」
確かに子どもって、楽しいことがあると夢中になって疲れなんか感じないものね。
「失礼な、子どもじゃないですーっ!」
「すーっ、すーっ」
そして夜になると気絶したように眠るんだよね。
「あんたって妙に面倒見がいいというか……ぜ、前世では子どもとかいたのかしらっ?」
夜営中、焚火を囲いながらリルちゃんが問いかけてくる。
「前世ノ記憶、自分ノコトハアマリ覚エテナインダ」
「そ、そう……奥さんとかいたのかしら……」
「ドウダロネ……大切ナ存在ハイタ気ガスル」
「そうよね……あんたみたいなやつ、奥さんもいっぱいいたに決まってるわよねっ! あたしももう寝るわっ!」
どういうことっ!? 褒められてるの?
んー、確かお嫁さんは1人と決まっていたはず……いや嫁がいっぱいいるって言ってたやつもいたか?
確か『あの子は俺の嫁っ!』『いや俺の嫁っ!』とか。まさか多夫一妻?
やだなー。俺は、俺の事だけを愛してくれる嫁さんをたくさん愛したいなー。
……クズだって? 俺はもとから鬼で畜生だぜっ!
………………俺ももう寝よう。
ポカッ。
いてっ。
「……(起きて早々何よソフィたんっ!)」
「なんとなく、そうしなきゃいけない気がしてっ!」
げ、解せぬっ。
「ぉはよ」
「リルちゃんおはよ――ってどうしたの目が腫れてるよっ!」
「う、うん、実は――だめ、ちょっと来てっ!」
ソフィたんを連れてどこかに行ってしまった。
もしかしてあれか、女の子の日か? できる男の俺は気付かないふりをしてやろう。
ポカッ。
いてっ。
「……(さすがに今のはデリカシーがなかったですね?)」
「わかってるじゃないっ!」
◆◇◆◇
さて今日も街道に沿ってひたすら歩く。
すると……。
「何かしら? 前方が騒がしいわね」
「どうしたの~?」
「……!(これは、まさかっ! いと貴きお方の乗った馬車が襲われてるのかもっ!)」
「――っ! 大変、助けに行きましょっ!」
「……なんか前もそんなこと言っていたような?」
「スケダチスルッ!」
「おぉっ! 感謝するっ!」
盗賊風な男たちと騎士っぽいおっさんたちが戦っているところに乱入する。
どっちが正義かなど関係ない、俺は正義の、つまりかわいい姫(仮)の味方だっ!
ぎゅんっと一気に女神っく・バフがががっ! お怒り! ソフィたんがお怒り!
燃え滾る情熱(物理)のまま盗賊へと攻撃を加える。
「がはっ」
この程度の人間相手には俺の貧弱な攻撃も有効だ。
一応間違いがあると困るので殺しはしないが。
「くそっもう一歩のところでっ!」
「諦めるなっ! 必ずあの姫を殺すんだっ!」
おぉ、姫様確定! SSR! SSR!
「(……シュナさん、あれ……)」
「……(ご、ごめんなさいっ! でも男は姫って言葉に弱いのっ守りたくなるのっ)」
「(もぅ! そうじゃなくてあれ、メンシュライヒの紋章よ……)」
ヒト属至上主義の大国メンシュライヒ。かつて俺が追いやられた国。
その国の姫か。
「……!(……『勇者に栄光あれ』!)」
「なんだっ! 障壁!?」
「くそっ、突破できねぇ!」
「盗賊たちよ、ここは引きなさいっ!」
おぉ、凛々しいソフィたん。名付けて女神モード!
「(茶化さないのっ! それよりリルちゃんを――)」
「……(大丈夫、わかってるよっ!)」
守るべきはむさいおっさんより、いと貴きお姫様より、うちのかわいいエルフさんだ。
「……しかたない、退け、退けぇっ!」
「助力感謝する。しかし、そこにいるのは薄汚い亜人か?」
まぁ、そうくるよね。彼の国だもの。
「それでは私たちはこれで失礼します」
ソフィたんは会話を早々に切り上げ、いや会話もしてないか。
早々に宣言だけして去ろうとする。
「待て。そなたらは冒険者と見受けられる。」
「……」
今の沈黙俺じゃないよ?
「その武力を見込み、護衛の依頼をしたいのだが引き受けてはくれぬか? もちろん破格の報酬を出そう!」
ほぅ……?
「お断りします」
にべもなくお断るソフィたん。
「せ、せめて条件だけでも……!」
「……(ソフィたんソフィたん、あのね……)」
こそこそとあくどい話を伝える。
「ならば前金で金30、成功報酬として金を追加で70を要求します」
「なっ! それはあまりにも法外じゃっ!」
「そうですか? その馬車のお方を、今のあなたたちで守り切れるとは思えませんが? 先程の盗じょくたちもまだ近くにいるようですし」
噛んだっ! ソフィたんが噛んだっ! かわわわぁー!
ソフィたんの顔にスゴ味が増す。
「し、しかし……」
「ならばこの話はここまでです。さようなら」
こちらには、やると言ったらやる…………スゴ味があるッ!
まぁ騎士さんも残り3名ほど、こちらに縋るしかないだろう。ぐぇっへっへ~!
「ま、待ってくれっ! コホン……しばし待たれよ」
そう言って馬車のいと貴きお方と相談しに行く。
まぁこちらが吹っ掛けたとはいえ金100だ、簡単には許可などでないだろう。
しかしリルちゃんへの侮辱の言葉、全く持って許せんからね。仕方ないね。
「……(もぅシュナさんったら! でもさっきの言葉は許せないもんねっ!)」
「あ、あたしはどうしたら……?」
「リルちゃんは危ないかもだからシュナさんの後ろに隠れててね!」
「う、うん……」
「待たせたな、その報酬で頼む」
お? もう少し値切るかと思ったが、通ったか。
「……わかりました、細かい条件などを確認させてください」
細かい条件を確認した。こちらからは次の条件。
1、こちらに不用意に近づかない、許可なく3M以内に入った場合敵とみなす。
2、こちらの正体に探りを入れない、同様に敵とみなす。
3、仲間を侮辱する言動は控えること、3カウントで敵とみなす。
あちらからじゃ次の条件が提示された。
1、馬車には緊急時以外近づかない、許可なく近づいた場合敵とみなす。
2、こちらの正体に探りを入れない、同様に敵とみなす。特に馬車の中の存在との会話は厳禁。
3、道中の指示は基本的にはこちら(依頼者たち)が出すものに従ってもらう。
4、メンシュライヒ国の国境都市、グレンランチェスまでの護送任務となる。残りの報酬もそこで支払う。
となり、さらにこちらからの次の条件を加える。
4、指示には基本的には従うが、絶対ではない。
こちらの敵意たっけぇー。
「それではこちらが前金だ。道中、良しなに」
こうして突然の重要人物護送クエストが開始された。
「まずは馬車の方に挨拶をして頂くっ」
色々と苦渋の決断なのだろう、おじいさん騎士が忌々しい感じで言う。
おじいさんって言っても気迫が凄まじく年齢不詳な感じ。
「こんにちは、今回護衛の任務にあたることになりました、ランクC冒険者のソフィアです。」
「同じパーティのリルです」
「おいっ! 亜人の発言は許可してないっ!」
なぜてめぇの許可が必要なんだっ!? あぁん!?
「……1つ」
ソフィたんが静かに呟く。
「……っく! くそっ!」
「……2つ」
「ま、待ってくれ今のはちがっ!」
さすがソフィたん! しびれるゥ!
「おやめなさい、ロベルト」
そこで馬車のお方が口を挟む。
「臣下が無礼を働きましたわ。お許しくださるかしら?」
お? 何だかこっちも偉そうだなっお?
「ロベルト、こちらがお世話になる身。わきまえなさい」
「は、はっ!」
「そちらの方々、近くによりなさい」
お?
「もちろんあなたもよ、エルフね?」
「……はい」
チラッとこちらを見るリルちゃん。
リルちゃんの盾となり一緒に馬車へ近づく。
何か言って来ようものなら大国のお姫様だろうと許さんぞっ!
「――っ!」
お姫様の息を飲む声が聞こえる。
……反応がない。おーい?
「あのぉ、もうよろしいですか?」
「――っ。し、失礼しましたわ。ところで彼は?」
「彼は訳あって喋れませんし兜も取れません。私たちの大切な仲間、シュナイダーと言います。」
「……」
ペコっと頭を下げる。
「そ、そうですか。わかりましたわ。急なお願い、引き受けてくださり感謝に尽きません。よろしくお願いしますわね」
「はい。それでは失礼します」
「あっ」
何か言いたげだったが、まぁいいだろう。
どうせ依頼が終わったらお別れだ、馴れ合う必要もない……あれ、どっかで聞いたことあるセリフ?
「(リルちゃんじゃない?)」
…………ん~、リルちゃんかぁ。う~ん、そうか。そうだな!
必要以上に、嫌悪感抱いたり避けるのはやめとこうかっ!
「(え~? 何だか嫌な予感がするよっ?)」
「……(あの国には確かに嫌悪感があるけど、あの子は違うかもよ?)」
「(でもその国のお姫さまだよっ?)」
「……(そうだけどさ、敵対視するのは何かあったらでもいいんじゃない?)」
俺たちは、忘れないでいこっ? どんな人たちとも友達になろうとする気持ち。
1回裏切られたらそいつとはお終いにするけどなっ!
Aではないからね。Gだからね。
「(う~ん、でも嫌な予感がするよ? 気付いた時には取り返しがつかないような……)」
「……(大丈夫、何かあっても絶対2人は守るからっ!)」
「(うー、わかったよぅ……シュナさんも無事でいるのが約束だよ?)」
こうしてメンシュライヒ国の国境にある都市、グレンランチェスまでの護送の依頼を請け負ったのだった。




