第9話 初めての共同作業(健全編)
「『ウインドアロー』!」
「グハッ!」
リルちゃんの魔法が炸裂! 俺に!
我々は今、ランク3のダンジョンに来ています。
フィルストの町の近く、4層からなる小規模ダンジョンです。
念話は覚えたけど、普段使いは魔力の関係上難しいということでやはり魔道具が必要ということになりまして。
「ご、ごめんなさいっ! 大丈夫っ!?」
「……!(平気平気、ちょっと鎧と背中に穴が開いただけだから!)」
即座にソフィたんが回復してくれてるし。
「うふふ、シュナさんが守ってリルちゃんが攻撃、私が回復。パーティっぽいねっ♪」
「……何か違う気するんだけど。じゃなくて、本当にごめんっ」
「……(いいよいいよ、練習に失敗はつきもの!)」
「『いいよいいよ、練習に失敗はつきもの』だって」
「う、うん……」
しかしやはり言葉が通じないと連携も取り辛い。
今だって俺が敵に寄ったところに、ちょうどリルちゃんの魔法が来たとこだし。
「つ、次はうまくやるわっ!」
「……(がんばろーっ!)」
「『がんばろー』だってっ!」
「『ロックスパイク』っ!」
「ハウッ!」
リルちゃんの地面を隆起させる魔法が俺の股間にヒット……。
こ、これは痛い……。
ズーンっと音がしそうな程落ち込んでいるリルちゃん。
「ごめん、なさい……」
絞り出すような声で謝るリルちゃん。
「やっぱり私なんて……」
「ストーップ! アヤマルノオワリッ!」
良くない方向に行きそうなので念話で声を掛ける。
そもそも“連携”なんだから、俺にも非があるわけだし。
「リルちゃん、気にしすぎないでいいんだよっ!」
「だ、だって……私の魔法全部シュナイダーさんに……」
今までのお互いの戦い方が違いますからね、しょうがないと思いますよ?
「『今までと戦い方が違うからしょうがない』だって」
俺にとっては、敵が引く=詰めるチャンス。
リルちゃんにとっては魔法攻撃のチャンス。
そういう感じじゃない?
「スタイル……早く合わせられる様に頑張るわっ!」
んー、どう思うソフィたん。
「そうですねー、少し根を詰め過ぎだと思います~!」
「えっ?」
「頑張ってくれるのはありがたいけど、そんなに焦らなくても大丈夫よ?」
「あ、焦ってないわよ! で、でも……いいところを見せないと――ぅぅ」
「……(優しいところ、美人なところ、かわいいところ)」
「それは直接言ってあげたらっ!」
ぷいってそっぽ向くところ、怒ってもかわいいところ……あ、これソフィたんのだった。
「なっ何よっ!?」
「優シイトコロ、美人ナトコロ、カワイイトコロ、ツイ本音ヲ言ッチャウトコロ、ソノ本音モカワイイ……」
ぐふ、まだまだ言い足りないのに魔力が……。
最近気付いたんだけど、魔力切れたらHPが消費されてくみたい、尋常じゃない勢いで。
「も、もういいわよっ! 何で倒れてまでそんなこと言うのよ!」
「……(これから一緒に過ごすんだから、少しでも不安をなくしてあげたいじゃない)」
「『一緒に過ごすんだから、少しでも不安をなくしてあげだい』って。ふふ」
「……意味わかんない。何でそんなに優しくするのよ……」
「さぁ?」
ふふっと優しく笑うソフィたん。
「これからたくさん一緒にいるんだから、ゆっくり考えてね♪」
◆◇◆◇
とはいえ、話し合って解決できるならそれに越したことはない。
町に戻って食事をしながら話す。
「敵が離れるってことは危険を感じてるんだから、追撃した方がいいじゃない!」
「……(でもそれでソフィたんやリルちゃん狙われだしたら危ないし!)」
「敵にもよるんじゃない? 弱い魔物だと逃げちゃうかも!」
「……(まぁ敵にもよるってその通りだけどね、そういった臨機応変ができないわけで)」
「そうね、どの敵だとあなたが近づくのか、それとも魔法を打った方がいいのか。それが分かればいいのだけど……」
「どこかにシュナさんの言葉を伝えてくれる人がいればいいんだけどねぇ~」
「……(ん?)」
「あっ!」
「どうしたの2人も?」
「あなたがシュナイダーさんの指示を伝えてくれればいいんじゃないかしら……?」
「えっそんなこと……できるかも……?」
「あはは、意外と簡単にいけそうね」
◆◇◆◇
その後少し調整した結果。
「……(行く!)」
「『行く』って!」
「了解っ!」
「……!(右のほう、魔法よろ)」
「『右のほう魔法よろ』って!」
「わかったっ!『ウインドアロー』!」
ってな感じで、問題をクリアできました。
後は慣れればもっと早くなるかな?
「大丈夫そうねっ!」
「うん♪ 良かった良かった~!」
連携もうまくできそうだし、明日は踏破が目標かな?
「よ~し、このままどんどん進も~♪」
「おーっ……えっ今から!?」
「そうだよ! 調子がいい今こそチャンスなんだよっ♪」
「こういうとこね、こういうとこだったのねっ!?」
考えなしってところがでしょ?
「むー、ちゃんと考えてるよ! 今がベストコンディションなんだよっ!」
「はぁ~、さっきと言ってること変わらないじゃない。 まぁいいわ、行きましょっ!」
あ、あれ? もうちょっと粘ってくれても――。
「おーっ!」
あれー? 突っ込み担当さーん!?
◆◇◆◇
幸い、ここはランク3ダンジョンでも下位の何度のため、そう苦戦はしない。
「右にミノさん逸れたよっ!」
「あたしがが行くわ! 『ウインドランス』!」
「ぐもぉぉ……」
「……(こっちもよろ!)」
「行くわ! 『強射』!」
「もぉーっ!」
「やったねっ! いい感じぃっ♪」
1匹を素早く倒し、もう1匹は落ち着いてMPを節約しながら討伐。
「……!(なかなか様になってきたね~!)」
「ええ、そうねっ! ソフィもありがとっ」
「うぅん、お疲れ様っ」
PTとしての雰囲気もかなりよくなったね!
「今度はオーク種よっ! 気を付けて!」
◆◇◆◇
そうしてボス部屋までたどり着く。
敵もさくさく狩れるし、ハイスピード攻略だ!
とはいえ疲れもたまっているので、ボス部屋前で休憩をする。
「どう、リルちゃん調子は?」
「だいぶ休めたわ。この調子を忘れないうちに一気にいきたいわねっ!」
どうしたことでしょう、無謀を止めてくれる役割を担ってくれると思っていた彼女がオラオラしてます。
「うふふ、リルちゃん。楽しいね!」
「……うん」
数十年ぶりの誰かと一緒に、誰かのために。
うん、止められるはずがなかったね。否、止める必要なしっ!
「……!(よーしっいくぞぉっ!)」
「もうちょっと休憩してからねっ」
「……(はぁい)」




