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第8話 意図しないところにも意味がある

「そ、そういうことだったのね……」

「あ、あまり知りたくなかったかも……」


 あのおっさんのせいでごまかしがきかず、俺が気付いたことを洗いざらい話すことに。


 体調がすぐれないママってのは、妊娠中だから。

 ルナムーン草を守る魔物たち、恐らくこの花が生態系に重要な役割を果たしていることを本能的に察しているのだろう。

 花を食べる動物を見守る魔物たちも、これから営まれる活動を祝福しているかのよう。

 まぁ、エサが増えるってわけだしね。


 帰りの道中で花を持った俺たちが魔物たちに襲われなかったのもそういうことだろう。

 そして何より、ママさんがあのお花を好きな理由。


 つまり、我々はママさんたちの夜営戦の補給物資を調達しに行ってたのだ。

 そりゃあ金貨も数枚するし、高価なものにも拘らず人気商品だわな。


「でっでも、アリスちゃんの気持ちは単純にお母さんを気遣ってのものだしっ!?」

「そっそれに、生命の営みを守る魔物たちって意味では十分神秘的、よね?」

 揃って真っ赤っかな2人が声を振り絞る。


 まぁ、確かにそうだよねっ!

「……!(ママさんたちのインパクトが強すぎて過剰に反応しちゃったけど、どれも素敵なことだよね!)」


「そ、そうねっ! あ、あたし部屋戻ってるからっ!」

 もの凄い勢いで自分の部屋に戻るリルちゃん。やはり恥ずかしかったか。


「わ、わたしも。今日はもう寝ましょう!」

 えっまだ昼過ぎなんですけど? ソフィたんも恥ずかしかったのか。


 


 ――数分後。

 1人取り残されてこれからどうしようかと考えてると、隣の部屋から2人の声が聞こえてきた。


「……ったら、……賭けて……よっ!」

「望……、わた……げるっ!」


 ガチャッ……バタンッ!


 ドアを開けて閉める音……2人でお出かけかしら?

 何だか喧嘩してたみたいだけど、大丈夫かな……。


 ◆◇◆◇


 結局、寝るにはまだ早いからと1人で町を散策することにした。

 ついでにギルドで売却したルナムーン草は5金貨で売れたよ、やったね!

 産めよ増やせよ地に満ちよ! ふははははっ!


 


 いかんいかん、1人だとテンションが……。

 

 ふぅ、久しぶりの1人か。

 

 …………ママさん色っぽかったなぁ。


 ……体が緑でもいいお店……あるかなぁ……。


 手元の金貨5枚を見る。


 いやいやいや、さすがにそれは人でなしが過ぎる!


 ……は、俺っゴブリンだったっ!!!

 

 ……………………だ、ダメだそういう問題じゃないっ!




 ……いかんいかん、落ち着け。

 これからは女性2人とのパーティだ。今まで以上に気を引き締めなければならない。

 つまらない欲でこの関係を壊すなんて、とんだ大馬鹿野郎だ!


 ……そうならないためにも!

 

 …………アカン、無限ループだっ!

 

 

「そこの鎧さん、なにかお困りかえ」

 何て考え事をしているとお婆ちゃんに声を掛けられる。


「……(ごめんお婆ちゃん、俺しゃべられないんだ)」

 身振り手振りで伝えようとするが……。

「ヒェヒェ、喋れないんだろう?」


「……!」

「何、この年になると色々わかるもんだぇ」


「……(……何かご用かい、お婆ちゃん)」

「なぁに、何か悩んでるようだったからねぇ。助けてやろうかと思っただけじゃ」


「……(迸る熱いパトスの解消法に悩んでただけよ、お手を煩わせるもんじゃあないさ)」

「違うじゃろ?」


「……?」

「おぬし、仲間達との関係に悩んでるんじゃないのかぇ」


「……(何を言ってるんだいお婆ちゃん?)」

「ふむ。心とは本人が思っているよりずっと難解なものじゃて」


「……」

「ここからずっと東、魔族が支配している町がある。そこに行けばおぬしは大切なものに気付くじゃろう……同時に失うかもしれんがの」


「……(え、何どういうこと?)」

「ふぉっふぉっふぉ……」


 一陣の風が吹く。

 すると――。


「……(き、消えた!?)」

 

 な、何だったんだ今のは……。

 魔族が支配する東の町……そこにいったい何があるのか。




「……!(絶対行かないようにしないとね!)」

 大切なものを失うとか嫌すぎるわっ!

 

 再び一陣の風が吹く。

「なんでじゃ、行かんかいっ!」


 意味深に登場して消えたはずのお婆ちゃんがまたでてきた。

 

「……?(え、普通にいやだけど?)」

 てか失うかもって2人の事だろ? 絶対嫌だね!

 

「ちょ、ちょっと不安にさせてみただけじゃ! 2人なら恐らく大丈夫じゃ!」

「……(恐らくってなんだよ、やだよ可能性があるなら行かねえよ!)」


「ぐぬぬ……しかたない、まだ言うつもりはなったかのじゃが……わしの名前はロリロ・リィじゃ!」

「……(はぁ? 何言ってんだ? どっからどう見てもシワシ・ワァだろうが!)」


「見た目の事じゃないわいっ! 貴様年寄りをなんじゃと思っとるんじゃっ!」

「……(いきなり現れて大切なもの失うかもしれんところに案内するやつなんか知らんわっ!)」


「だから本当は、大切なことに気付くっていう助言じゃ!」

「……(だから、失う可能性があるなら――)」


「えぇい、うるさいっ! わしはリルリル・リィの先祖、呪いの大元じゃ!」

「……(嘘つくな、リルちゃんが――)」


「頼むから黙って聞けっ! わしのせいでリルリルが不憫な人生を送ろうとしてるところ、おぬしらが救ってくれたから助言をしに来てやったんじゃ!」

「……(まだまだこれからだけどなっ! で、何の助言だよ?)」


「恋じゃ!」

「おげえぇぇぇっ!」


「何でじゃ! なんなんじゃお前! 失礼にも程があるじゃろうが! リルは何でお前みたいなのに心を許したんじゃ!」

「……(おいばばぁっ! なんであんたがそんなこと知ってんだよっ!)」


 一陣の風が吹く。

 やべって顔をしながらババアが消えてしまった。

「……後生じゃから、必ず行ってくれ……」



 ◆◇◆◇


 先程までのことを考えながら宿に向かって歩いていると、ちょうど2人も戻ってくるところに出会った。


「あ、シュナさん!」

「あら、こんなところにいたの?」

「……(2人も戻ってきたんだ)」

 何だか2人とも一戦交えたかのように汚れている。

 ……戦闘って意味だよ? 変な意味じゃないよ?


「……(2人で何してたの?)」

「(うふふ、内緒っ!)」

「……(えっ何それ、え?)」

「あら、もしかしてルナムーン草を売却してきたの?」

 くそ、本音を漏らすリルちゃんには伝えないつもりだ!

 

 ぐぬぬ、目覚めろっゴブリック・テレパシー!


「金貨5枚で売れたの? なかなかいい値段だったわねっ」

 だめだ、そう都合よく目覚めない……いや、あのばばあはなんで俺の思考が?


「(どうしたの?)」

 ソフィたんとは魔力のパス……魔力?


 魔力に意思を……ぐぬぬぬぅ……難しい、違うのか?

 何だ、何か記憶に引っかかるものが……。

 なんかこう、似たようなものを日常的に使っていた気が――。


 ティロン♪

 ≪スキル:念話を獲得しました≫


 キターーーっ!


「ソフィタンマジメガミ! リルチャンマジカワイイ!」

 ばばあマジありがとう! いい助言貰った!

 きっとこのために来てくれたんだな!


「は、えっ何!? 今のあんたが?」

「すご~い! シュナさん、やったね♪」


「ヤッタヤッタ! シャベレ……」

 ガクッ。

 急激な魔力消費に思わず膝をつく……。


「ちょ、ちょっと、大丈夫?」

「魔力消費デカズギィ……」

「そ、それなら無理して喋らなくても……」


 ソフィたんを介して事情を話す。

「つまり、魔力に意思を込めて相手に伝える、念話を習得したわけね! 凄いじゃないっ!」

 コスパが悪すぎるけどね!


「……(まぁ、きっかけをくれたおばあちゃんがいてさ)」

「え、何て言ったの? よく伝わらなかったんだけど……」


「……(きっかけをくれたおばあちゃんがいたんだよー)」

「わ、わからないよ? きっかけをくれた……なぁに?」


「……(……リルちゃんの祖先を自称するばばあ)」

「えっ? えっ? や、やだ怖いよ。シュナさんの伝わってこないよっ!?」

 うまく意思が伝わらないことに狼狽えるソフィたん。

 おのればばあ絶対ゆるさんっ!


 ガシッとソフィたんの手を握り、俺の推測を話す。

「……(大丈夫だよソフィたん。ちょっと人に会ったんだけど、そのことについて話せない魔法か何かされたみたい)」

「だ、大丈夫なのそれ? 私……嫌だよ、シュナさん……」


「……(多分大丈夫だよ……それにもしこの繋がりが消えてしまっても俺は……っ!)」

「シュナさん……っ!」


 ゲシゲシッ!

「リ、リルちゃん!?」

「なに、いちゃついて、るのよっ!」

 

 ゲシゲシッ!

 いたいいたいいたいっ!

 なんでよもー、俺鎧着てるのにっリルちゃんの蹴りが痛い!

 

 けど念話覚えられてよかった!

「コレデリルチャントモシャベレルネ!」


「ふ、ふんっ! 別にあんたと喋れたって嬉しいだけなんだからねっ!」

 うん、本当によかったっ! ばばあに感謝だ!

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