第7話 大損濃厚で大勝したときのような
「シュナさん、おっはよぉ~♪」
「……(お、おはよぉ~……)」
結局色々考えちゃって一睡もできなかったぜっ!
寝ようとしてときに黒歴史を思い出して寝れなくなる、あると思います!
「……ぉはよ」
……寝起きの美人さんの気だるげな姿、やばいっ!
うぉーっ! ゴブリック・アイアンハート!
「えっどこいくのよっ!」
「ちょっと頭を冷やしてくるそうよっ! ふんだっ!」
「どうしたの? 急に不機嫌になって……」
この付近をぐるっと回って、ついでにもぎたての果実をお土産に戻ってきた頃、2人は身だしなみを整え終わった後だった。
「おっかえり~♪」
「……ぉかえり」
……美人さんが頬を染めながら上目遣いでいででででっ!
「話っ! 進まないっ! からっ!」
「ちょっと、今度はほっぺたをつねってどうしたのよっ!」
おかしい! 前から思ってたけどソフィたんに物理的な攻撃力はないはずだ!
なぜ俺の時はこんな痛いんだよぉっ!
「……!(ごめんって! ごめんってぇ!)」
「まったくもぅ!」
「……(ごめんって! ソフィたんも同じくらいかわいいよっ!)」
「……しょうがない、今回はそれで許してあげましょう」
「どうやら解決した、のかしら?」
「そうそう、それよ!」
「え、どうしたの急に?」
どうしたの急に?
「私とシュナさんは意思疎通ができるけど、リルちゃんとシュナさんはできませんっ」
「え、えぇ、そうね。正直ちょっと寂しいわ」
んん?
「そこでぇっ! 次の旅の目標は、それを解決できる魔道具探しにしまぁすっ!」
「……それは、嬉しいけど。あるのかしらそんな魔道具」
えっちょっと待って、それって!
「あるよ、きっと! 魔道具じゃなくっても何か手はあるはず!」
「……そうね。きっとあるわよね! あったら嬉しいなっ」
「「うふふふふ♪」」
置いてけぼりっ置いてけぼりだから! でもまさか!
「これからよろしくね、シュナイダーさん!」
ぎゃわー! うひゃー! 大・勝・利!!!
誰だよタイムマシン探してたやつ! マヌケめっ!
こんな素晴らしい未来を無しにしようとするなんてなっ!
うわっはっはぁ~っ! バカめ、笑いが止まらん!
「ちょ、大丈夫なの? 彼、大泣きしてるけどっ!?」
泣いてるだって!? 泣いてないよっ!
こんな素敵なことで泣くわけないでしょっ! わっはっは~!
「う~ん、色んな感情が入り乱れててよくわからない……」
そういうことです。
「じゃあ、改めてよろしくねっ!」
「……(こちらこそ、よろしくお願いします)」
俺が落ち着きを取り戻したころ、ようやく話が進む。
改めて見ると、やっぱりとんでもなく美人だ。
「な、なによ。そんなに見つめてないでよっ!」
しかもツンデレだ。
「……嬉しいけど」
ツン0デレ10のなぁっ!
最早それはツンデレなのか? 有識者の見解が待たれる。
「では話進めますけどっ! とりあえず一旦このお花を女の子に届けます!」
「はいっ!」
「……!」
「その後は、ダンジョンで魔道具探しですっ!」
「はいっ!」
「……!」
「では、しゅっぱ~つ♪」
◆◇◆◇
「あっ! お姉ちゃんたち!」
その後、今度は数日かけて何事もなくフィルストの町に着いた。
例の女の子、アリスちゃんに教えてもらっていたお家にお花を届ける。
「はい、どうぞ♪」
「わぁーっ、ありがとう! ママにあげてきていいっ!?」
まるで幻想的な風景を目にしたソフィたんみたいに――。
ポカッ。
いてっ。
「……本当にあの子のためだったのね」
「信じてなかったの~?」
「信じてないってよりは、驚いたのよ。あの花、金貨数枚で売れるのよ」
「そ、それはすごいっ!」
「でしょ? まぁ、金貨なんかよりもって感じかしら?」
「うふふ、そうね♪」
……金貨数枚っ!?
いや、欲に目が眩んだんじゃなくって……何か引っかかる。
確かにあのルナムーン草が淡く光る風景は最高だった。
しかし……この花の価値はあの場所でこその物だと思う。
言い方は悪いがこれはただの花だ、すぐに枯れるだろう。
そんなものが金貨数枚?
「お母さんが、お姉ちゃんたちを連れてきて~だって!」
ドクンッ!
嫌な予感が引かないまま、アリスちゃんが俺たちを呼びに来る。
『怪しいと思ったらすぐ使いなさいっ!』
リルちゃんの言った言葉が頭をよぎるっ!
くそっなんですぐに使わなかった!
しっかりしろ俺っ! これからは2人を守るんだろっ!
「ママ~、連れてきたよぉ~!」
「……!(『勇者に栄光あれ』! 『鑑定』)」
≪鑑定結果≫
ルナムーン草
生涯現役でいたい貴方にっ! みるみる蘇る雄々しき神獣!
「妻から『今夜も素敵だったわ!』って言われるんです!」
特に50代の方にオススメ!
※本品に依存成分はありませんのでご安心ください。
「………………………………(………………………………)」
「きゃっどうしたの? 急に盾なんか出してっ! それに鑑定って……」
はっ! やめろっソフィたんに知られるわけにはっ!
「? なぁにこれ、どういう意味?」
ソ、ソフィたんがピュアっピュアで助かった……のか?
「あらぁん、ルナムーン草の効果、知らなかったのぉ?」
――っ! め、めちゃくちゃ色っぽい……。
体調の悪そうだけど、めちゃくちゃ色っぽいママさんが効果を説明しようとするので身振り手振り制止するっ!
「まぁ、ふふ。確かに貴方たちには、ま・だ、必要ないかもねぇん」
「えっと、どういうことですか……?」
「さぁ、彼に聞いてみたらどうかしらぁ? そ・れ・よ・り・も、お花、ありがとねぇん。この花、大好きなのぉ」
どこぞのうっふん料理人さんよりも色っぽいママさんがウインクしてきてメロメロだっ!
ギロッっと睨まれるが、それでいいっ! 思考を逸らすのだっ!
「ルナムーン草はとても入手の難しい花、大切にしてください」
顔を隠したリルちゃんがまじめな様子で言う。
これは……知らないな……。
「あらぁ、もしかしてあなたもなのかしらぁん? 鎧さんも大変ねぇ。やっぱりお・は・な、必要なのかしらぁん?」
やめてっそういう方向に持ってかないでっ!
「ただいまー!」
そのうちに中年のおっさんが帰ってきた。
くそ、やっぱりだっ!
いかにも、枯れ果ててそうなおっさんだっ!
「あなたぁん、みてぇ、この人たちが、お・は・な、くれるって言うのよぉ~」
「ぬわぁーにぃっ! そいつはありがたぁい!」
「でもぉ、今は、ダ・メ。このお花は乾燥させておきましょ~」
「ぬわぁはっは~、今から楽しみじゃなぁっ!」
ダメだ、もう限界だ!
「……!(ソフィたん、ごめん、うんこ漏れるっ!)」
「(えっ、えぇぇ~。もぅ、しょうがないなぁ~)」
「ママさん、すみません。彼が急用とのことで私たちもう行きますね!」
「あらぁん、お礼もまだなのにぃ?」
はい、ごめんなさい、限界が近いですっ!
「はい、すみません……」
「そぅ、残念ねぇ……それならぁまた来年の夏ごろ、来てくださらない?」
「来年の夏ですか? わかりましたっ!」
「お姉ちゃんたち! 絶対またきてね~!」
無邪気な顔してぶんぶん手を振るアリスちゃん。
来年の夏ごろはアリスちゃんもお姉ちゃんだよ、きっと!
「わしのための精力剤、ありがとなぁーっ!」
……ぁ、漏れた。




