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第5話 諦めたらそこで

「フォレストベアーがこの先にいるわ。この辺りで一番の強敵よ!」

「そ、そんなに強いの?」


「あたしでは勝てないからいつもは避けるわ。でも今日は――」

「私たちがいるから、避けられないってことね!」

 言いにくそうなことを先回りして言うことで罪悪感を減らす。

 これぞ女神っく・気遣い!


「……こっちにくる! 戦うわよ!」

「……!」

 今日初めての戦闘だ。気合を入れて前に出る。


「あ、あんた大丈夫なの? ゴブリンなんでしょ、危ないから後ろにいなさいよ!」

 気遣いありがとう、でも俺が守る側でいたいんです。


「ぐまぁぁぁっ!」

 え、今の鳴き声っ?

 

「ダメ、避けて!」


 ドゴォォォンッ!


「ぐっぐまぁ!?」

「……(なかなかの威力だけど、ドラゴンには及ばない)」

「なっ! あの突進を受けとめられるの!?」


 返す盾でぐまを殴りつけるぐま!


「ぐまっ?」

 ……だめだ、やっぱり一定以上の耐久があるやつには攻撃が対して効かないっ!

 

「ぐまぐまぐまぐまーっ!」

 しかしイラっとさせることには成功したのかぐまぐまラッシュをしかけてくる。


「……(ゴブゴブゴブゴブ~!)」

 それに対し俺も盾のラッシュで合わせる。

 盾を前に出し、引っ込めては前に出す。

 この行動に意味などないっ!


「な、何なのかしらあれは……」

「意味はないみたいだよ~? ずっと構えてればいいだけだもんね~」

「そ、そうね。でもあのフォレストベアーの攻撃を簡単に受ける彼は一体何者!?」

 味方にコンフュ成功!


「彼はゴブリンから進化してナイトゴブリンって言うんだって」

「ナ,ナイトゴブリンッ!?」


「うん! 防御力はすごいんだけど、攻撃力がないみたい~」

「確かに凄い防御力……ってそれを先に言いなさいよっ!」


 リルちゃんが魔力を練りだす。

 おぉ、助かった! このままじゃ日が暮れるところだったぜっ!


「ぐまぁ……」

 ぐまがスタミナ切れで動きが鈍っている、そこに!

「『ウインド・ランス』!」


 風をまとった矢がぐまに命中! そして貫通!

「……!(す、すごい威力!)」

「リルちゃんすご~い!」


「ふぅ、ありがと」

「そんなに強いんなら1人でも倒せるんじゃ?」

「フォレストベアー相手に攻撃を避けながら魔力を溜めて命中させるなんて無理よっ!」

 ふむ。俺が守ってソフィたんが回復してリルちゃんが攻撃する。


「なるほど~♪ これはいいパーティになりそうですなっ♪」

「組まないわよっ!」

 ――っ! くまだけにっ!


 ◆◇◆◇


 ぐまの解体も終え、再び出発することに。

「今日は熊鍋だね~♪」

「この熊は固いし臭いしですぐには食べられないわよ」


「えーっ! じゃあそのお肉どうするの~?」

「臭いを消してくれるハーブに包んで塩漬けするの。そしたら保存食になるのよ」


「なるほど~。それじゃあ出来た頃に一緒に食べようね~♪」

「いつの話よっ! 一緒には行かないって何回言わせるのよ!」


「ん~、言わなくなるまで?」

 KGS(今日も、グイグイ、ソフィたん)。

「それって行くって言うまでじゃないっ!」


「うふふ♪」

「ほんと、やめてよ……辛くなるだけじゃないっ」


 ……いよいよ悲痛なものとなってしまった。


 ◆◇◆◇


「さ、着いたわよ! ここがルナムーン草の群生地!」

 森に囲まれ、小高い丘となっている原っぱにたどり着いた。


「……(ふー、結構歩いたね!)」

「わぁー……まだ光ってない」

 子どもかっ。


「まだ夕方だからね。夜になると月の光を浴びて淡く光るのよ!」

「……(それは楽しみですな)」

「楽しみだね~! それまでご飯作って待ってよーっ!」



「ソフィっ♪」

「……!(シュナのっ☆)」


「夜ご飯っ! クッキンっ!」

「……!(夜ご飯っ! クッキンっ!)」

「それはもういいわよ。どうせ私の気を引くための小芝居なんでしょ」


「えーうっふん♪」

 てけり・りっ☆ やべ、間違えた。


「でも案外楽しいよ~? 一緒にやってみよっ!」

「いやよ! 楽しそうだけど――っ」


「うふふ、さぁ! 私の後に繰り返して!」

「ぅぅぅ……」




「ソフィっ♪」

「……リ、リルのっ」


「夜ご飯っ! クッキンっ!」

「よ、夜ご飯っ! クッキンっ!」


 ぉ、おぉ……! 何と、何と尊いことかっ!

 美しき女神と至高の美術品が如き女性が戯れてらっしゃるっ……。


「くすっくすくす……あはははは♪」

「な、なによもぅ……ふふっ」


「「あはははは~!」」

 ありがたや~ありがたや~。

 

「ちょっ、彼は何で私たちに手を合わせてるのよっふふ!」

「あはは、私たちが尊いって拝んでるみたいだよ~♪」


「何それ、意味わかんない! ふふ!」

「うふふ、シュナさんはよくわけわかんないことするんだよ~!」


「「あはははは~!」」


 ◆◇◆◇


 ひとしきり笑ってご飯を食べて、そうして夜が来た。


「わぁー……」

「……(こ、これはっ……)」

 言葉が……。


「ふふ、キレイでしょっ!」

「きれー……」

 

 月明りを浴びて淡く光る、一面に広がるルナムーン草。

 暗い夜とのコントラストが眩く、微かな風にゆらゆら揺れるのもまた美しい。


「あ、あれはフォレストベアー! それに他の魔物も!」

「……(えっ!? ……危険を感じない?)」


「ここではいつもそう。この幻想的な風景を傷つけないように、争いは起こらない。ただ全ての動物や魔物が穏やかに見守るだけ」

 これは……そんなことが……っ!


「たまにこの花を少しだけ食べる動物もいるけど、そのときも誰も襲い掛からない。私も採取するときはほんの少しだけ」

「「……」」

 わかるんだ……圧倒的神秘の前に我々は何もできない……。


「私はここが好き。この風景を見てると自分の悩みなんてどうでもいいんだなって思えてくるから……」




「……リルちゃんっ」

「……何かしら? 大体察しはつくけど」


「リルちゃん、私たちと一緒に冒険しよう!」

「……だから言ってるでしょ、一緒には行かないわ」

 リルちゃんの本気の拒絶。

 でも、今回はソフィたんも本気の本気だ。


「私たちと一緒で楽しくなかった?」

「それは否定しないわ、確かに楽しかったわね」


「この景色だって、1人で見るのとは違う景色だったでしょ!」

「――っ! そ、そんなこと……あるけど……」


 そう、誰かと共有できれば楽しさは何倍にも、悲しみは半分以下だ。

 俺もこの境遇に転生してから、ソフィたんのおかげで何度も実感している。

 

「この世界にはきっとまだまだたくさん凄い景色があるのよっ!」

「……」


「月明りの中妖精が踊る森、空を飛ぶお城、空に落ちる滝。私が知ってるだけでもこんな場所があるの、ワクワクするでしょ!?」

「……そうね、そんな場所に行けたら素敵でしょうね」


「私たちと一緒に冒険しようよっ!」

「それは……」


「言いたいことがあれば言っていいのよっ! 冒険者は自由なんだからっ!」

「――っ! ……私は」


 絶対楽しいから! 一緒に行こうよ!




「私は……行かないわ」


 ………………だめ、か。


「そろそろ冷えてきたわ、ルナムーン草も採取して戻りましょう」

「……うん」



「…………帰りながら、私の事少しお話させて?」

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