第4話 押してダメなら押しまくれ
「おっはよーございまーすっ!」
「……朝からうるさいんですけど。おはよ」
「今日はルナムーン草探しに行くので手伝ってください!」
「……まぁいいけど」
「そんなこと言わずに……っていいのっ!?」
「何よそんな驚いて。そういえばしばらく村に売りに行ってなかったなって思っただけよ」
おぉっ! 昨日同じ釜を食った効果か、かなり仲良くなれたんじゃない!?
「……!(もしかしてたまに納品があるって言うのは……)」
「もしかして、たまに納品があるのはリルちゃんが売ってたの?」
「多分そうね。この辺じゃあそこにしか生えてないし。それとリルちゃんはやめて」
「え~どうして~?」
「あんたより私の方が年上だからよ! ちゃんって年でもないし!」
「……!(かわいいからいいじゃん)」
「『かわいいからいいじゃん』ってシュナさんも言ってるよ~」
「……彼は誰にでもそうなのかしら?」
「割と誰にでもそう」
「……!(失礼な! そう思った人にしか言わないわぃ!)」
「ふん、呼びたきゃ好きに呼べばいいけど!」
「ルナムーン草はここよりもっと奥の小高い丘に群生してるわ」
向かいながら説明してくれる。
「夜になると淡く光るからわかりやすいの」
そういえばそうだったね。ランプを擦るといいんだっけ。
「夜に光るってキレイそうだね~!」
昨日ソフィたんも光っててキレイだったよ!
ポカッ。
いてっ。
「まぁ……確かにキレイね。私の好きな景色よ」
「うふふ、楽しみだね!」
「夜の森は危ないから避けた方がいいわよ?」
「うー、でも見たい!」
「……あなた昨日も夜の森で困ってたでしょ。本当に考えなしね。しょうがないわねっ!」
「えっへっへ~♪」
「何でそこで笑うのよっ!」
お、一緒に夜を越してくれるってことかな?
だんだん素直になってきたじゃねぇか、ぐぇっへっへ~。
まぁ……素直なのは元からか。本音を隠すことができないってどんなだろうか。
俺も確かにソフィたんに思考が漏れているが、それでも全てが伝わっているわけではない。
ちゃんと思考を遮断する気でやれば隠すことができるのだ。
それに、対象がソフィたんだけだから特に問題はないし。
……たまにちょっと恥ずかしいけど。
うん、実は隠せてないってわかったら現実逃避に過去に戻る術を探しそうになるくらい恥ずかしいな!
だからリルちゃんの辛い気持ち、少しはわかるなぁ。
「動かないでっ!」
なんて思ってると小声で制止してくる。
「……!(何だ!? 危険察知には反応がないが……)」
「あっちに小鳥が見えるわ。迂回しましょう」
そう言って遠くを指さす。全然見えない……。
「わっわかったよ。危険な鳥なの?」
「えぇ、今の状態は避けた方がいいわね。危なくないけど求愛のダンスしてるから邪魔しちゃ悪いと思って――ぁ」
カーっと赤くなるリルちゃん。
「……うふふ♪」
……うん、昨日からだいぶわかってたけど相当優しいよねリルちゃん。
辛い思いをするからと人目を避けてるってのに遭難しかけていた俺たちを助けてくれたし。
安全な場所と言いつつ自分の家の前まで案内してくれるし。
何だかんだ言いながらこうやって目的地まで案内してくれるし。
「(昨日話してくれた、人と関りを避ける理由も『恥ずかしいから』じゃなくて『傷つけたくないから』だったよね)」
「……(そうだったね)」
リルちゃんが気遣いのできる優しい子だからこそ、それができないことを強いる呪いが彼女を苦しめる。
ほんとに、ほんとに優しいんだ。
こんな素敵な子が辛い思いしてるなんて……。
「……!(ソフィたん、俺……っ!)」
「(うふふ、わかってるよ♪)」
それから数十分程歩いたころ。
「なかなか魔物にも遭わないね~」
「なるべく避けてるからね。まだまだ長いから消耗を避けていでしょ?」
おぉ、リルリル・パワーでしたか。さすが森の至宝、エルフさん!
「シュナさんが『さすが森の至宝のエルフさん』だって~」
「……!(ちょっ! 言わないでよソフィたん!)」
「なっ何よ! 意味わかんないこと言わないで! 嬉しいけど恥ずかしい!」
あれか? 俺も思考が漏れてるって共感してもらうってこと!?
やめてください、恥ずかし死してしまいます!
「実はシュナさんも私には考えてること伝わっちゃうんだよ~♪」
「……それは災難ね」
俺の場合は思考をシャットアウトできるから全部じゃないけどね。
「『俺の場合は思考をシャットアウトできるから全部じゃないけどね』だって~」
「……!(そんなことまで言わなくっていいの!)」
……それに俺は災難とは思ってないよ。温かい繋がりだ。もちろんシャットアウトだっ!
「うふふ♪」
「……あんた達は楽しそうでいいわね」
「うん、楽しいよっ! 良かったらリルちゃんも一緒に――」
「悪いけど、それはいいわ。 一緒にいるのは今日までよっ!」
なかなか手強い。まぁ、今日は始まったばかりだ!
◆◇◆◇
わいわいしながら森を進む。
珍しい植物を教えてくれたり、危ない場所を避けてくれたり、小動物を避けたり。
相変わらず今後もパーティーを組もうというお誘いは断られているが、リルちゃんも楽しそうだ。
「見て見て~、あれ美味しそう!」
黄色と黒の縞模様をした果物を指す食いしん坊ソフィたん。
「あれも猛毒よっ! あなたさっきから指すもの全部そうじゃない!」
あれは俺でもさすがにわかるぞっ!
「どういうことよもう! ……心配になるじゃないっ!」
「えっへっへ~♪」
「今ので笑うところないからっ!」
怒りながらも楽しそうで何よりです。
「――っ! ……まずいわね」
「どうしたの?」
っとここで俺も危険を察知。俺のスキルより優秀ですな。
「フォレストベアーよっ!」




