第3話 呪
「この周辺は魔物避けをしているから比較的安全よ。今日はここで夜を越すといいわ」
彼女の家、その前の開けている場所を指す。
どうやら彼女はかなりのお人好しのようだ。
見ず知らずの我々を自分の家まで案内しちまうとはなぁっ!
「本当にありがとねっ! このご恩は一生忘れません!」
感謝の極み……っ!
「別に構わないわよ。明日にはお別れなんだから」
「えーっ! 明日からルナムーン草探しの拠点にさせてくださいっ!」
WGS(わりと、ぐいぐい、ソフィたん)発動!
「あぁ、それが目的だったっけ。しょうがないわね」
うん、このエルフさんお人好し。少し心配になるわぁ。
「ありがとねっ♪ お礼に、一緒にご飯でもどうですかぁ~♪」
「……そこまで馴れ合う気はないわ。それじゃあね」
バタンッと家のドアを閉めてしまった。
「むー、残念!」
「……!(ソフィたんや、我に妙案アリ、ですぞ!)」
「おぉ~! なになに~?」
◆◇◆◇
――エルフさん視点――
妙な連中を案内した後、椅子に座って一息つく。
「悪い人たちではないみたいだけど……」
木々が騒がしく、少し離れたところに魔力の光が見えたから様子を見に行った。
「かわいい女の子にゴブリン、どういう組み合わせ?」
困っていたみたいだから声を掛けてみたけど……やけに明るくてグイグイ来る女の子と全身鎧の男。
怪しすぎるっ!
「けど……いい人たちっぽかったなぁ……」
小さい子が花を欲しがってるからって、普通こんな森の奥来ないでしょ!?
ただの考えなしなのか、底抜けにお人好しなのか。
「ちょっと話しただけだけど、楽しかったなぁ……」
きっとあの子の人柄なのかな、話してて元気になる。
それに人とあんな風に会話したのはいつ以来か。
「……辛いなぁ」
◆◇◆◇
「……!(前世の記憶に、引きこもった美人さんを外に出させるって昔話があってね!)」
「ほうほう!」
「……!(やり方は簡単! 外で楽し気に騒げばいいのです!)」
「な、何ですって~! それだけで出てくるのぉ~!?」
ノリがいいですな。
「……!(外の様子が気になって『何やってるのよっ!』って出てくる寸法さっ!)」
「それはいいアイデアですな~♪」
「……!(さて、具体的なやり方はね……)」
カクカクシカジカ。
「ふむふむなるほど~」
「ソフィっ♪」
「……!(シュナのっ☆)」
「夜食っ! クッキンっ!」
「……!(夜食っ! クッキンっ!)」
「さーて、今日はおいしそうなお鍋を作りますぅうっふん♪」
なるべく色っぽくって言ったら、うっふんって言いだした。
「まずはお鍋にぃ、保存食のお肉とぉうっふん♪」
「……!(俺の水魔法っ☆)」
「それとぉ、今日見つけたおいしそうなはっぱを入れてぇうっふん♪」
「……!(火魔法で煮込むっ☆)」
「最後にぃ、このおいしそうなキノコを――」
「ちょっと、何やってるのよっ!」
おぉ、本当に出てきたりっ☆ 作戦成功りっ☆
「あっエルフさんっ! 一緒に食べますかぁうっふん♪」
「うっふんって何よ!? じゃなくて、あんたそのキノコ猛毒よっ!」
な、なんだってぇっ!?
「えぇ~!?」
「紫に光ってて見るからに毒じゃないっ!」
「そ、そんなぁ~……」
ふむ。完全に忘れていた。
「……!(ゴブリック・アーイッ!)」
鑑定の結果、どくどくキノコ、食べると死ぬ。
わぁ、とってもシンプル!
「ほっほんとだぁ~……」
「何、あんた鑑定使えるの? 森はこういうの多いんだから怪しいと思ったらすぐ使いなさいっ!」
「……!(はぁい!)」
「あなたは命の恩人ねっ♪ お礼に一緒にご飯食べますっ!」
「ちょっとそれは別に……食べたいけど!」
どっちやねん!
「ほ、ほんとに私は……一緒に食べたいっ!」
言いながら家の方に走り出そうとする。
んん?
「シュナさんっ!」
悪い気もしたけど、彼女の様子も気になるので制止させてもらう。
「きゃっちょっと離してっ! このままじゃ……」
このままじゃ?
「呪いのことがバレちゃうじゃないっ!……ぁ」
呪い?
「――っ!」
「呪い?」
「えぇ、そうよ! 私は呪いにかかってるのっ! わかったら離して!」
「呪いってどんな?」
「思ってることを口にしちゃう呪いよ! ホントに! 離してっ!」
「良かった、なら一緒に食べようよっ!」
「私が良くないっ! 一緒に食べたいけど、きっと変なこと言っちゃう!」
「大丈夫だよ、きっと私たちは気にしないよ!」
「そんな訳ないっ! きっと傷つけるっ! いいからほっといてよっ!」
「ほっとけないよっ! だってあなた、すっごく寂しそうだもんっ!」
「――っ!」
「あなたのきれいな目を見てればわかるよ。ここに来る時も今も、すっごく寂しそうだった」
「あっあんたにぃ、何がわかるってのよ……っ」
「わからないけど、わからないからお話して? 一緒にご飯食べながら、ね?」
「何なのよぉあんた……グイグイ来過ぎよぉ……」
「えっへっへ~♪」
「褒めてないわよぉ~……ぐすっ何なのほんと……」
◆◇◆◇
半分泣いているエルフさんを宥めながらお鍋ができるのを待つ。
やけにグイグイいくなと思ったら。
自分たちに優しくしてくれたエルフさんが何となく寂しそうで、ほっとけなかったんだね。
さすソフィ!
「ところで、あなたのお名前教えてくれる?」
「……リルリル」
ん?
「まぁっ♪ とってもかわいい名前ねっ! 私はソフィア、よろしくね!」
「うぅ……名前も知られたくなかったのにぃ」
「そうなの? 素敵な名前よ?」
ちょっとかわいすぎるけどね。本人はそれ以上にかわいいけど。
「そ、そう? もしかしてヒト属の間では普通だったりするの?」
「うぅん、聞いたことない」
「なによぉ、やっぱりバカにしてるんだ」
「そんなことないよ、シュナさんもかわいいって言ってるよ」
本人はそれ以上に……はい、ごめんなさい。
キッと睨まれてしまった……。
「ゴブリンなんかに言われても……って人間みたいなもんだっけか。」
「……(そうだよ~)」
「『そうだよ~』だって」
「はぁ……。何なのあんた達、デリカシーとかないわけ?」
そう言いつつも会話をしてくれる。
1歩前進ってとこかな!
「でりかしぃ?」
え、嘘っソフィたん知らないの?
「え、あんた知らないの?」
「はい♪」
「あんたみたいに人の内面にグイグイ来るような奴の事よっ――ぁ」
おっ? おぉっ!
「……わかったでしょ、こうやってきついこと言われちゃうのよ。私といても傷つくだけよ」
「えー今の? 別に傷ついてないよ~?」
あれだ、つっこみみたいなもんだっ!
「シュナさんも『つっこみみたいなもん』って言ってるよ!」
「つ、つっこみ……?」
「……(俺たちに足りていないものがやっと満たされたっ!)」
「失礼なやつね……もう傷ついても知らないんだからっ!」
「ふふ、ちょうどお鍋もできたし食べよー♪」
「……あんたたちほんと意味わかんないっ!」
「えっへっへ~♪」
「何でそこで笑うのよっ!」
そうしてエルフさんとわいわい騒ぎながら、夜も更けていったのだった。




