第2話 生きた芸術品とも呼ばれています
「見て見て~! 変なキノコっ!」
「……!(ほんとだ、紫に輝いてる!)」
「こういうの程、実は美味しいって思うんだ~♪」
「……?(え、そうなの?)」
「だって蟹とかオークとか見た目はアレじゃない?」
「……!(たし蟹!)」
「でしょ~!」
「見て見て~! 可愛い果物!」
「……!(ほん……え、何かの顔みたいに見える!)」
「こういうの程、実は美味しいって思うんだ~♪」
「……?(え、そうなの?」
「だってさっきのキノコとかオークとか見た目はアレじゃない?」
「……!(まだキノコ食べてないでしょ!)」
「えへへ~♪」
意外と食いしんぼだよねソフィたん。
「え~、だって~!」
前回の大闘争の後とは思えない程和やかだ。
……許して貰えてよかった!
お母さんの話、また今度聞かせてね!
それはそうと、トレントの群れを越えたあたりから森の様子が変わった感じがする。
木の密度が明らかに増したし、今まで見たこともない植物などを多く見つける。
「魔物も見たことないのたくさんだね!」
フォレストウルフのような小規模の群れで奇襲を仕掛けてくる魔物。
フォレストタイガーのように単体だが強く、かつこの木々の間も素早く動ける魔物。
トレントのように擬態し、狡猾に獲物を捕食しようする魔物。
今までの浅い森では遭遇したことのない魔物が多く見られる。
まぁパワーアップした俺の敵ではないがなっ! はっはっはっ!
そんな感じで調子よく森をさらに進んで行くのであった。
◆◇◆◇
どのくらい歩いただろうか。辺りは真っ暗だ。
暗い中魔力の使用で薄っすら輝くソフィたんが神々しい。あ、元から女神だったか。
俺はゴブリック・アイのおかげで夜目が利く。
しかしソフィたんはずっと身体強化をしながら無理矢理視界を確保しているが、ほとんど見えていない様子。
心身にかかる疲労は相当なものだろう。
「シュ、シュナさん……わ、わたし、疲れ、ましたっ」
周りが木や草だらけでゆっくり休みにくく、小休憩をしながら進んできたが、そろそろ限界……ってかこれって。
「……(もしかしなくても遭難っていうんじゃ?)」
「そ、そうなんですかね~?」
あ、まだ余裕そうですね。
嘘です森を舐めていました、すみません。
しかし考えなし準備なしで朝からぶっ通しで歩いてきたツケが回ってきたようだ。
仕方ない、最終手段の身体強化とバフマックス状態でこの辺を薙ぎ払って広場に……。
などと考えていると。
「あなたたちっ! こんな時間、こんなところで何をしているの!?」
どこからか凛とした、どこか上品な音楽を思わせるような美しい声が響いた。
「わぁ、キレイな声ね~!」
ソフィたんやっぱりまだ余裕なのかしら……。
しかしこの状況、この声、まさか!
「あ、ありがと……じゃなくて、質問に答えなさいっ!」
「えっと、私たちは冒険者でとある依頼のために森を進んできたのっ!」
「……その依頼とは?」
「女の子が病気のお母さんにルナムーン草をあげたいって言うから、それを採取しに!」
「こんな時間に?」
「そ、それはぁ……ちょっと森で迷っちゃって……」
「森を舐めるからそうなるのよっ!」
仰る通りでございます。
「仰る通りでございますぅ」
「まぁ、悪い人達ではないのかしら……でもそこの全身鎧、いかにも怪しいし」
そう、今全身外套で身を隠したお姉さんが紹介してくれたが俺は今全身鎧なのだ!
スキルトレーニングと奇襲への備えと、まぁ正体隠しのためである。
「彼はゴブリン! 悪い人じゃないのよ!」
「……! ……!(ちょっ! いきなりの大暴露っ!)」
「えっゴブリン!? 悪いも何もないじゃないっ!」
ほらっ! やっぱりこうなるっ!
「大丈夫なのっ! 彼は大丈夫なんですっ! 彼は優しいゴブリンですからっ!」
そんなの信じるわけ――。
「えっ、そうなの?」
えっ、信じるの?
カクカクシカジカと俺たちの事情を軽く説明する。
「人間がゴブリンに転生なんて、外の世界ではそんなこともあるのね……」
……割としっかり説明した。
外の世界ってことは、やはりこの方は……!
「いいわ、あなたたちが悪い人ではないことはわかった。私の家の近くまで案内してあげるからそこで一晩越しなさい」
「いいんですか!? 良かった~♪」
美人なエルフさん(仮)の後をついて歩いていく。
フードの下はマスクをしていて目しか見えないが、そこだけでも美しさが見て取れる。
マスクを取ると……なんてこともなさそう。
「えっ嘘、あなたたち大きな町の方から来たの!? よく道中の魔物にやられなかったわね」
「彼が全部倒してくれました~♪」
ドヤ顔で頷く。表情は見えないが。
「あっち方面は魔物が強くって人の出入りが滅多にないのよ」
うん、もう少し情報を収集してから来るべきだったね。
「えっ嘘、1日でここまで来たの? 考えなしというか凄いというか……」
「えっへっへ~♪」
ドヤ顔で頷く。表情は見えないが。
「褒めてるわけじゃ……まぁ正直凄いわね。普通3日は見るわよ」
うん、ちょっと考えなしにも程があったね!
「ところであなたはエルフさんですか~?」
ソフィたんや、さっきから核心をぶん殴りすぎですわよ?
「えっ、ち、違うこともないわよっ!?」
エルフさん(仮)に緊張感が走る。
ごまかそうとしてるのか何なのか。
「ふふふ、彼がエルフさんに会いたがっていたの! もちろん私もっ!」
「そ、そう……。それはどうしてかしら? やはり私を捕獲しにっ!?」
「捕獲? 美人さんって言われてるから会いたかったのよねっ」
ポカッと叩きながら俺を指す。
「……!(ボクハしゅないだー、ナカヨクシテネ!)」
「ふふ、『僕はシュナイダー、仲良くしてね』ですって」
「え、ええ。変なゴブリンね。あ、元は人なんだっけ?」
「……!(はい! その知識からエルフさんはウルトラ美人だと、一目会いたいと思っていました!)」
「『その知識からエルフさんはウルトラ美人だと、一目会いたいと思っていました!』ですって!」
「そんなストレートに褒められても、てっ照れるだけなんだからっ!」
あれか、まさかこのエルフさんツンデレ属性なのかっ!?
ヒャッハーッ!
「……(ジトー)」
ソフィたんがジトーっと見てくる。
正気だ、正気を保て! ゴブリック・アイアンハート!
「さ、着いたわよ!」
そんなこんなでエルフさんのお家の近くに着いたのだった。




