第11話 努力が報われるというのはとっても幸運なこと。今回は不運だっただけ。
「……!(ソフィたんソフィたんっ!)」
「シュナさん!」
「…………!(あんまり喋れなくなったーっ!!)」
「やったねっ!……え、どういうこと?」
『鑑定』!
【個体名】シュナイダー
【種族】ゴブリン (ナイトゴブリン)
??????
守る?特化し?????。
本来騎士は高潔な存在だが、存在自体が歪。
【能力値】
レベル:35
H P:200/3500
M P:0/100
体 力:4000
魔 力:1000
知 力:30
精 神:6000
【適正属性】
火魔法:1 水魔法:1 風魔法:1
地魔法:1 生命魔法:8
【スキル】
鑑定:6 危険察知:6 隠蔽:4
鋼の意志:7 身体強化:7 強打:6
堅牢:5 範囲盾:3 防具具現化:2
【称号】
ソフィアの従魔 命知らず 助平 害獣ハンター 大物狩り
な、なんだ? 種族説明の読めないところがある……貶すとこは割とはっきりしてやがるが。
なんとか読み取るに、守りの能力に特化した存在ということだろう。
能力も相変わらず尖ってはいるが、相当高くなっている。
今なら確かにレッサードラゴンの攻撃も難なく受け止められそうだ。
この『防具具現化』ってなんだ? 『鑑定』!
『防具具現化』:MPを消費して魔力の防具を具現化し身に纏う。
おぉ、まんまな説明だけどこりゃ便利!
もう布でグルグル巻きになったりコボルトの皮を巻く必要はないんだ!
てか腹減った! ドラゴンを早速、いただきますっ!
割とシャレにならない飢餓感から人目も憚らずドラゴンに食らいつく。
「もぅ、ふふっ。シュナさんったらぁ~」
うめー! ドラゴンうめー!
「……(ソフィたんも食べる?)」
「ふふ、私は後ででいいわ」
カチャッ。
「……」
無言で剣を向けてくる金髪。
「先程見た姿、やはり君は魔物……ホブゴブリンだったんだね」
……さすがにバレるか。もうホブホブ言わないけどなっ!
「(えぇ~!? ホブホブ可愛かったのにぃ~!)」
え、そこ需要あったの!? ソフィたんだけじゃない!?
「(えーっ! ぶぅ~!)」
●REC! ●REC! こっちのが需要あるぅ!
「魔物を生かしてはおけない。悪いけど駆除させてもら……いい加減食べるのをやめないかっ!」
ガギャンッ!
金髪が切りつけてきたが、鎧に阻まれる。
「そ、そんな! 一緒にドラゴン討伐した仲じゃないですかっ!」
「仲間!? この僕がゴブリンなんかの仲間だって!? ふざけるなぁっ!!!」
仲間とは言ってないけどね。しかし、どうしたもんか……。
「まさかそいつがゴブリンだったとはなぁ!」
ガチムチが起きてきた。
「既にそいつとヤリまくってるから魔物も怖くないってかぁっ!」
「……汚らわしいっ」
……。俺とソフィたんはまだそんな仲じゃないよ、と冗談めかしておく。
気の強い姉ちゃんもさっきまでとは打って変わって非難してくる。
「こんな魔物の力を借りなくてもレッサードラゴン如き討伐できた!」
「そんなはずありません! そもそも逃げようとしてたじゃないですかっ!」
「うるさいっ! うるさいうるさいうるさーいっ!!!」
一緒に戦ったのがゴブリンと知ってプライドが許さなかったのだろう、金髪が癇癪を起してしまった。
「なんだなんだ?」
そこに騒ぎを聞きつけた村の人たちが集まってきた。
……本当に避難せず村の中で戦っていたようだ。
「そこの女神官が連れているやつ! そいつがゴブリンだって知っていたのかっ!」
「なっ! ゴブリンだって!」
……ついに、村の人たちに知られてしまった。
今までゴブリンだと知られるのはまずいと、ギルドの人たちと門番さんにしか正体を明かしてこなかったが……。
で、でも大丈夫だよね?
今までも、そして今日も村やみんなのために頑張ってきたよ?
俺みんなのこと結構好きだよ?
……だから、お願いだから…………。
「なんてこったいっ! 私たちをだましてたんだねっ!!」
「ふざけんじゃねぇっ! 俺ぁあいつの頭触っちまったぜコンチクショウがぁっ!」
畑仕事で世話になったヒゲダルマとカカァさん……。
「待ってください! 正体を隠していたのは申し訳ないですが――」
「まさか、ゴブリンとは……。私の目も節穴でしたか。」
「害獣も害獣じゃないかいっ! 優しくして損したねっ!」
感謝の言葉をたくさんくれた商店街の頭目と看板嬢さん……。
「彼は本当にいい人なんです! 言葉も伝わるし、とっても優しくて――」
「何てことしてくれたんだいっ! これじゃ部屋が汚くて使えたもんじゃないわ!」
いつも笑ってくれていた宿屋のおばあちゃん……。
「今回の氾濫だって、村を守るためにすっごく頑張ってくれて――」
「あんたはっ! 私の彼を奪ったのと同じ魔物だったんじゃないっ! 返してよ彼を! どうして彼は助けてくれなかったのよぉっ!」
ダンジョンで助けた冒険者の女の子……。
「ドラゴンのブレスからも身を盾にして村を守ってくれたんです!」
「うるさーーーいっ!!!」
ゴンッ!
「シュナさん!」
ソフィたんに向かって石を投げてきたので盾になる。
「ぷぷっシュナさんだってよぉ! ただのゴブリンだろうが!」
「あーあ、残念だぜ。あの女神官ちゃん狙ってたのによぉっ!」
「やめとけやめとけ! どうせあのゴブリンとヤリまくってるに決まってらぁ!」
「――ッ!」
ソフィたんを口汚く罵る言葉に思わず殺気が漏れる。
「(ダメよっシュナさんダメ! 我慢して!)」
「な、なんだよてめぇ! 人間様に逆らうってのかぁ!」
「ふざけんなっ! やっちまえっ!」
ワーーーッ!!!
村人総出で石や手に持った武器を投げつけてくる。
……………………。
……潮時か。
「――っ!」
ソフィたんの怒気も伝わってくる。
「待つんだ、みんな!」
……金髪がみんなを制止するが、さて。
「この薄汚い魔物と女は、ドラゴン討伐を成し遂げた我々『紅蓮の剣』がとどめを刺す!」
「……この」
「?」
「この盗人がっ! ドラゴン討伐は私たちがいなければ成されなかった! 薄汚いのはお前たちの方だっ!」
ソ、ソフィたん……!
「!?」
「みんなもっ! ……いえ、もういいわ。行きましょう、シュナさん」
そう言って村とは反対方向に歩き出すソフィたん。
せめて、次の町までは俺も。
◆◇◆◇
……やはり人間の村で一緒に生きていくのは無理なようだ。
…………一緒にいることで今回とても辛い思いをしただろう。
………………彼女のことを思えば次の町で離れるべきだろう。
…………………………………………。
……それでも! ソフィたんと一緒に生き――。
「ジュナざぁぁぁああんっ!!!」
ガバッ!
おわっ、ソフィたんが急に抱き着いてきた。
「いいんだよっ一緒に生きていくんだよぉっ!」
「……!(しかし、一緒にいるとソフィたんまで……!)」
「いいの、関係ない人たちのことなんかどうだって!」
「……!」
「私にとってはシュナさんの方が大切なんですっ!」
「……っ!(ゾビィぢぁあああんっ!)」
◆◇◆◇
「「うわーんうわーん!」」
1人の美女と1匹の野獣、森の中で抱き合いながら大泣きする姿は異様だろう。
でもいいんだ、誰も見ていやしない――。
「あのぉー、いいところで申し訳ないのですがー」
「ひゃわーッ!」
ひゃぶっ、びっくりしたーってギルドの受付嬢さん?
「な、何か御用ですか?」
ソフィたんが警戒したように言う。
「警戒されるのもわかりますが、私はあなたたちにとって有益な物を持ってきたつもりですので、そう邪険にしないでください」
「――えっ?」
「……?」
「はい、こちらをどうぞ」
「えっ? こ、これは私たちの荷物……!?」
あれ、宿屋に置いて来てしまったお金や冒険者証、それに着替えまで!
「あっありがとうございます……?」
「いいんですよ。私は冒険者ギルドの職員ですから」
「……?(……?)」
「私たち冒険者ギルドは国を跨ぎ活動しています。本来は中立の、むしろ冒険者の権利を守る側の立場ではありますので」
「……?(……?)」
「ですから、その土地のイデオロギー等に囚われず、冒険者の利益や安全を守るのもギルド職員の役割なのです」
「つまり私たちを助けるために、村を離れることを見越して必要なものを届けに来てくれたと……?」
「まぁ、そういうことです。もっとも、綺麗事を言っても職員も所詮はその国の人間ですから、私の気が変わらないうちに出発することを勧めます」
「わ、わかりました……」
「あぁ、すみません忘れてました。こちらをどうぞ」
「これは冒険者証――ってCランク!?」
「はい今回の騒動の評価として、ギルド長の承認を以って贈与されます」
「……!(わぁ、きんかがいっぱいだぁ!)」
「ただ……お伝えしにくいのですが、ドラゴン討伐をあなた方の功績と認めるのは避けた方がいいと、評価に入っていません」
「そ、そんなぁ! シュナさんがすっごく頑張ったのにっ!」
「申し訳ございません。ただ、この件は恐らく国が動く。名誉あるドラゴン討伐は『紅蓮の剣』が成し遂げ、そこにヒト属以外はいなかった、となる可能性が高い」
「……」
「……」
「ギルド長の判断です。ああ見えて時流の機を察するのに優れています。何卒ご納得くださいませ。代わりに報酬額はかなり上乗せされています」
「……(それでいいよ、ソフィたん。)」
「シュナさん……でもっ」
「……(いいんだ、ホントありがとね!)」
「……わかりました。何から何まで、ありがとうございます……」
「いえ、本当に申し訳ないです。それでは、もう会うことはないでしょうが」
「はい、ありがとうございました。」
そう、ここは人族、いやヒト属至上主義の大国、メンシュライヒ。
そしてその村アンファン。
ヒト属以外は全て下等種とされるこの国で、普通に暮らしたいのなら正体はバレてはいけなかったのだ。
しかし後悔はしていない。
大切な人の、守りたいものを守りきれたのだから。
こうして俺たちの始まりの村、アンファンでの冒険は幕を閉じたのだった。
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