第8話 宴会芸を披露するときのような気持ち
「そうだ、ダンジョンボスを倒しに行こう!」
ツバイテンから戻った翌日、ワクワクキラキラした顔で仰ります。
どことなく何か企んでるような顔していらっしゃる。
そして既に『冒険者のイロハ』はボロボロになるまで読み込まれている。
「ホブホブ?(ダンジョンボス?)」
「そうそう。ダンジョンボスってのはね~――」
ソフィたんの話をまとめると、ダンジョンボスとは次の特徴があるらしい。
1通常エリアよろも強い魔物が出現する。
2倒すと高確率でアイテムを入手できる。
3ボスは倒されると一定の周期で再出現する。
「それじゃあ、準備してしゅっぱ~つ♪」
昨日隣町から戻ってきた疲れを全く感じさせないソフィたん。
体力俺より高いんじゃ?
そういえばここ最近ステータス見てないなと思い、早速確認する。
【個体名】シュナイダー
【種族】ゴブリン (ホブゴブリン)
小鬼が進化した姿。背丈が人間の大人に近くなっており、体力が高い。
一説には心優しい存在と言われているがそんなことはないだろう。
なぜなら所詮小鬼だからだ。
【能力値】
レベル:15
H P:1500
M P:50
体 力:1800
魔 力:300
知 力:30
精 神:3900
【適正属性】
火魔法:1 水魔法:1 風魔法:1
地魔法:1 生命魔法:6
【スキル】
鑑定:6 危険察知:4 隠蔽:2
鋼の意志:7 身体強化:6 強打:5
【称号】
ソフィアの従魔 命知らず 助平 害獣ハンター
ここ数日の害獣駆除のおかげか、称号になった。
それだけみんな困ってたし活躍できたってことかな。
効果は……害獣に対し攻撃力1.3倍!? つえー!
進化したからか、能力値もだいぶ上がってる。
ランク2はだいたい500~1500と言われてるのでかなりの水準ではなかろうか!
だいぶ尖ってるけど……。
能力も確認したし、行きましょか。
ちなみにソフィたんのは隠蔽レベルが高いのか覗けなかった……。
覗こうとしたときのソフィたんのドヤ顔をお宝フォルダに保存できたからいいけど。
◆◇◆◇
いつもお世話になっているランク2ダンジョンは10階層からなります。
定期的にセーフゾーンがあるそうなのでそこにお泊りしながら最下層を目指すことになります。
「シュナさんの魔法、便利でいいねぇ~♪」
どうも、生活密着型ゴブリンです!
1パーティに1ゴブは欲しいですねぇ~。
まぁ魔法が弱すぎて小規模の魔法しか出ないんですが。
「でもおかげで水は飲めるし温かいご飯食べられるし!」
水魔法を鑑定した結果、普通に飲めることが分かったし火起こしも楽ちんだ。
「道中の魔物もシュナさんがすぐ倒しちゃうしね……」
どことなく不満げに言う。
あれだな、習得した魔法を使いたくてうずうずしてるんでしょう!?
そんなこんなでサクサクっとダンジョン攻略、2日目にはボス部屋前に到着した。
「わぁ、結構人がいるねぇ~」
順番待ちしているPTなのか人が10人ほどいる。
「こんにちは、PT希望の方ですか?」
キョロキョロしていると職員っぽい人に声を掛けられる。
「PT希望ですか?」
「ええ、見たところお2人のようですので……ボス部屋は5人以上のPTでの挑戦が推奨されています。もしかして初挑戦の方ですか?」
「そうです!」
なぜか胸を張るソフィたん。しかしPTかぁ……。
「私たちは2人PTで挑戦します!」
「えっ……いや、しかし……」
「大丈夫です! ね、シュナさん!」
うんうんと頷いて見せる。一緒に戦うとなると正体がバレちゃいそうだし……。
「失礼ですが、あなたのランクは――E! 無謀ですって!」
「大丈夫ですって! 私たち、とーっても強いんです!」
根拠があるのかないのか、すごい自信。正直ちょっと不安になってきた。
「やめたほうがいい」
お? 誰だ誰だ?
「君たちみたいな、駆け出し冒険者が調子に乗って痛い目に遭うのはよくあることさ」
「げっへっへ、姉ちゃんみてぇな美人がぐちゃぐちゃになってるのを見るのもたまんねぇけどなぁっ!」
よし、敵認定。 イマスグコロス……ッ!
「(めっ! シュナさん!)」
はひぃぃ~!
「おぉっ! あなた方はBランクパーティ『紅蓮の剣』さんではないですか!」
先に話しかけてきた金髪のイケメン、粗野な感じのガチムチ、それに加え気の強そうなねーちゃんと寡黙そうな糸目の兄ちゃんがいた。
「悪いことは言わない、ここのボスはハイオークとそれに加えオークが複数ランダムででる。」
「悲惨な目に遭いたくなきゃあ、大人しくPT組むんだなぁっ!」
「なんなら、私たちが組んであげましょうか? めんどくさいけど!」
「(コクコク。)」
あー意外といい人たちなのか?
チラッとステータスを『鑑定』!
……おぉ、さすがBランク、大体能力値が1500近いものが多い。
「お気遣いありがたいですが、私たちは2人で挑戦します」
「あんた、なんでそんな頑ななのよ! 魔物舐めてんじゃないの!?」
「そ、そうだぜぇ姉ちゃん! 俺だってホントはぐちゃぐちゃな姿なんか見たくねぇんだぜ!」
あ、やっぱりさっきのはわざと怖がらせてやめさせようとしてくれたのか。
「私たちは2人のPTなんです。攻略したいのではなく、冒険をしているんです!」
おぉっ! ソフィたんがなんだかかっこいいこと言ってる!
言いながらボス部屋に入ろうと門を開けた。
「――っ! そこまで言うならもう止めはしない! さぁ、その勇姿を見せてくれ!」
金髪イケメンもソフィたんに感化されたのか応援しだした。
よっしぁ! いっちょやったらぁっ!
「あの……順番が……」
「勇姿を見るったって、部屋の門閉まったら開かなくなるから見られないじゃない……」
「~♪」
「あっ」
「ブッ!?」
ギー、バタンッ!
門が閉まった。ちょっと待って! 最後予想外の言葉が!
ピンチになったら助けてもらうつもりだったのにっ!
「大丈夫大丈夫~♪」
「ブブッ!? ホブブブッ!?(本当っ!? ソフィたん本当っ!?)」
「ブモォォッ!!!」
「「「ぶもぉぉっ」」」
出てきた! いつもより強そうな雄たけびと間の抜けたような叫び!
強そうなのは2M近くあり、いつものに増して筋肉だ!
「シュナさん、いっちゃって~!」
ええ~い、ままよ!
「ホブブッブ・ホブーっ!(ゴブリック・パワーっ!)」
「さらにぃ! 今日はぁっ! っえ~いっ!」
その時! 俺の体を温かな光が――温か……ん?
いや、これ熱いいぃぃぃっ!
なにこれぇっ! ソフィたぁーん!
「ふっふっふ! これぞソフィさんの新・必・殺・技!」
「『火属性活性』~!」
燃えてきたぜぇっ! 物理的に!
やばいやばいっマジで必殺だっ! 俺をっ!
「いっっけぇ~♪」
逝っちゃいます、ほんとに逝っちゃいます~っ!
体の内部から燃えてる感じがしてめちゃくちゃ熱いっ!
「あ、あれぇ……?」
ぐぅ……。
しかし同時に体もめちゃくちゃ活性化させられてるっ!
耐えられているうちに行くしかないっ!
「ホブホブゴ・ゴッブホーブ(ゴブゴブのレッドナックル!)」
「ブモォォォッ!」
「ぶもぉぉ」
出てきて早々悪いなっ! こっちも急いでるんだ!
「ブ、ブモッ……」
普通の豚もひと際でかかった豚もあえなく崩れ落ちた。
ソフィたんのおかげで敵は瞬殺できた。
「ホ、ホブゥ……」
俺も全身をプスプス言わせながら倒れこむ。
ソフィたんのおかげで満身創痍だ……。
「…………あ、あのぉ~、大丈夫?」
あ~なるほど。
道中の不満顔やボス部屋に入る前の妙な自信、その理由がわかったよ。
ダンジョンに入ってからずっと、ここぞというところで新技を披露したかったんだろうなぁ。
ここでやっと使えて、けれど予想外の結果になって落ち着いたんだろうなぁ……。
「ほっ本当に、ごめんなさい……」
涙目で。
「……ホブ。ゴブ!(……ここのボスは強かった。ソフィたんの新技のおかげで勝てた!)」
「……えっ?」
「ホブっ! (リスクを負ってでも最初っから全力で行って良かったっ!)」
いいんだよ、うまくいったんだよ。
ソフィたんの魔法凄かったよ!
「――っ。ジュ、ジュナざんんん~っ」
初めての技は一度試してからとか魔力の調整だとか、そういう反省は後でいい。
まずは頑張ったことを褒めてあげたい。
あんなに魔法を使うことを怖がっていたのに偉いじゃない。
……と照れ臭いので繋がりをシャットアウトして思う。
「ホブ、ホブ。(ところで、ジュナざんは替えの服を所望しています。)」
燃えちゃったからね。
あと、豚ご飯食べるからちょっと離れててね。
「う、うん! ……ありがとう、ね」
ガツガツガツ!
失った細胞を補うかのように、いい感じに焼けている肉をかっ食らう。
カエル食って即時回復するボスもいるし、そんなもんだろ!
う~ん、ハイオークは脂が乗って実に美味!
「ホブホブブ?(ソフィたんも食べる?)」
「うんっ!」
物怖じしないね。
「うふふ、冒険者っぽいでしょ~♪」
おいしーと口いっぱいに頬張る。
かわいい顔がさらにかわいくなってしまった。
そんなこんなで素材回収と解体が終わったころ。
ゴゴゴゴゴォォ……と、ボス部屋の門が開いた。
「ホブゴブ!(それじゃあ帰ろうか!)」




