第7話 好々爺はきっと昔から好人物
「おはようございます! E級冒険者のソフィアと申します!」
朝のピークを避けて冒険者ギルドにやってきた。
「おはようございます! 何かご入用でしょうか?」
チラッと不審な物体(俺)に目を向け、すぐに営業スマイルをソフィたんに向ける。
ソフィたんスマイルの33ー4やな。
「こちらで従僕の動物に魔法を教えるのが得意な方がいると聞いてきたのですが……」
「あぁ、ジニラさんのことですね。ただ今お呼びしますね。」
ん? なんか嫌な予感がしてきたぞ。
数分後、ジニラさんとやらがいらっしゃった。
普段は冒険者に魔法の指導をしている職員の方だとか。
「おはようございます! 急にお尋ねして申し訳ありません~」
「いいえいいえ。こんな美人の方のお声ならいつでもお待ちしてますよ。ふぉっふぉふぉ」
あぁん? てめぇ、ソフィたんに色目使ってんじゃねぇぞゴラァ!
「(シュナさん、めっ!)」
はぐぁぁっ! めっ頂いた! めっ頂いたぁっ!
「ところで、このクネクネしてるミイラ男みたいなのは……」
「す、すみません。私の従僕です……」
「そ、そうですか……。」
「えぇっと、実は彼に魔法のコツを伝授して頂けたらと思いお尋ねしたんです~」
「あぁ、やはりそうですか。ありがたくも、この老骨に従僕への魔法指導を依頼される方が多いんですよ。」
「で、では!」
「えぇ、もちろん賜りますよ。ふぉっふぉふぉ。」
「ありがとうございます~! よかったね、シュナさん!」
「…………」
しゃべったら正体がバレちゃうから身振り手振り感謝を示す。
「ふぉっふぉふぉ。なかなか通じ合っているみたいで感心しましたわい。」
そうだぞ! 俺とソフィたんは運命の赤い糸で雁字搦めになってるんだぞ!
ポカッ。
いでっ。
「ど、どうしましたのじゃ?」
「い、いえ、何でもありません~」
「そ、そうかの?」
「はい!」
「ま、まぁ、とりあえず外の修練場に行こうかの。」
「ところでその従魔の種族は何ですじゃ?」
「えっとぉ、熊、の仲間に近い感じの動物?です」
大きくなってごまかすのも大変になってきちゃったね。
「な、なんじゃいそりゃ……」
「すみません、秘密なんです……」
「そ、そうかの……」
「ご、ごめんなさい~」
「まぁ、冒険者に秘密はつきものじゃ! 問題ないじゃろう!」
そういってジニラ爺が俺の体を触ったり手を握る。
「感じるかの? これが魔力じゃ」
か、感じてなんかっ!
じゃなくて、魔力は感じると頷く。
「うむ? ……では次に体から出る魔力を変換したい属性に、まずは水に変化させるからそれを感じてみるのじゃ」
喋っている内容がイメージとして伝わってくる。
あくまで言葉はテイマーへの説明で、相手にイメージを伝えるのが上手いんだろう。
おぉ、ジニラ爺の魔力が水に変わっていく。
「わかるかの?」
わかる! 俺にもわかるぞぉ!
これが魔法! これが属性の変換!
「そして最後に変換した魔力を――」
おぉぉぉうなれ俺の魔力ぅっ!
「尻から放つのじゃ!」
「ホブブブッ!(何でやねんっ!)」
ドガッ!
しまったついうっかりジニラ爺に魔力を込めて突っ込んでしまった。
けどやっぱり嫌な予感したんだよ! ただし魔法は尻から出る的な!
「いだだだだ……い、いまホブって聞こえた気が?」
「ごめんなさい! 私が今咳き込んじゃって……ホブッホブ!」
「へ、変な咳ですじゃ……」
「よ、よく言われます……」
ごめんよソフィたん、全然似てないけど。
キッっと睨まれるがかわいい。
いやしかし何で尻?
「と、ところで何でお尻からなんです?」
「うむ。よく従僕の魔法の指導を頼まれるのじゃが、その種族は多岐にわたっておるでの。」
まぁ、近隣の村から紹介されるくらい有名な爺だしね。
「体の構造も当然異なるのじゃが、しかしどの生物にも必ず“放出”するイメージのある部分が存在する」
「そ、それがお尻だと……」
「その通りじゃ!」
「手とか口とかの方が……」
「以前大ミミズの指導を頼まれてから、尻のが楽だと悟ったのじゃ」
「そ、そうですか……」
ミミズにも口はあるのでは?
「まぁ、それはともかく。わしは魔力の使い方を従僕に触れながら使うことで、言葉でなくイメージで伝えることができるからよく指導を頼まれるのじゃが」
「はい、シュナさんもわかりやすそうでした!」
「この従僕は言葉がしっかり理解できているのじゃろ?」
そそそ、そんなことはっ!
「そそそ、そんなことはっ!」
「いや2人ともそっくりな顔しとるし」
ち、ちがうんです! これには事情がぁっ!
「ち、ちなうんですぅ! これには事情がぁっ!」
「よいよい、冒険者には秘密がつきものじゃ。何となく事情もわかった。別にそれをどうこうするつもりはないわい」
「え、ほっ本当ですか……?」
ほんまでっか。
「この年になると些細なことはどうでもよくなるんじゃよ」
「あ、ありがとうございます?」
「まぁ、とにかく一度お嬢さんと坊主とで通常の魔法の講習を受けてみたらどうじゃ?」
「わかりました~!」
▲
ちょうど午後に爺さんの講習があるとのことで受講する。
ふむふむ、まずは自分のなかの魔力を広げる感じで……(フワッ)
ふむふむ、そこに使いたい魔法のイメージを乗せて……(ジュワッ)
ふむふむ、それらを放出したりすることで具現化すると(ブワッ)
おぉ、ソフィたんが言ってた通りだ! わかるかっ!
兎にも角にも、魔法のコツを教えてもらったので再び修練場へ。
具体的にイメージすることが重要とのことで、まずはわかりやすい水の魔法を……。
チョロチョロチョロ……。
「ホッブゥ!(でっできたっ!)」
「やったねシュナさん! シュナさんならできると思ってたよぉ~!」
自分のことのように喜んでくれるソフィたん。
よーし、次行くぞぉっ!
そうして、水、火、風、地、生命と一通り試した結果、あることが分かった。
「ゴ、ゴブブゥゥ……(俺、生命属性以外苦手みたいだ……)」
適性はあるが、どうにも『身体強化』の生命属性に比べて魔法の出が悪い。
「んー、それか魔法を出すことが苦手なのかも?」
確かに、生命属性の『小回復』もソフィたんにはあまり効果を出せていない。
「シュナさんはきっと自分の体に作用する魔法は得意なんだよ! 身体強化と相性良さそうだし、すごいね~!」
いいところを見つけて励ましてくれるソフィたん。なんだか元気になってきたぞ!
しかし火とかの属性は体にどう作用させるんだかいまいちわからんな!
属性……体……活性化……。
「私も生命属性の魔法をいろいろ知れたし、いいイメージが湧いてきたよ~♪」
それはよかった!
この世界の魔法は使用者のイメージによるところが大きいので、同じ名称でも効果が異なることもある。
どのような効果か、どのくらい力を込めるか、範囲はどうするか等々。
そういった具現化したものを名称つけることである程度定型化して使用していく。
一方、魔法陣を用いた魔法もあるようで、効果等は完全に定型化されているため魔力を流すだけで再現できるが対象など細かい調整はできない。
そういったことも今回の講習で学べた。
今後は自分にあった魔法の習得を目標にしたいと思います!
一時はどうなることかと思ったけど、来てよかったツバイテン!




