第4話 ダンジョンとか都合いいの誰が作ってるんだよ
初心者冒険者のノルマをこなしたり、薬草採取をして過ごしたある日。
「ということで~、ダンジョンに行きたいと思いまぁす!」
『冒険者のイロハ』を片手にソフィたんが突然言いだした。
受付嬢さん、恐らくあなたの想いとは逆になってしまったようです。
「ゴブゴブ?(ダンジョン?)」
「そうそう。ダンジョンってのはね~――」
ソフィたんの話をまとめると、ダンジョンには次の特徴があるらしい。
1難易度が決まっており、それに見合った魔物は出現する。
2ダンジョン内の魔物は死んで一定時間放置すると消滅する。
3同様に難易度に見合った様々な素材やアイテムを入手できる。
4極稀に現代では解析不能の魔道具を入手できる(ステータス測定器が代表例)。
5定期的に敵を倒さないと難易度以上のボスが現れたり氾濫を起こす。
「やっぱり~、E級冒険者となったからにはダンジョン探索がしたいじゃない?」
そう、晴れて先日初心者が取れたのだ!
「ゴーブブブ。ゴブゴブ?(まー確かに。でも危なくない?)」
「大丈夫だよ~私たちの戦い方もうまくなってきたし~!」
「ゴ、ゴブ?(そ、そう?)」
「うんうん!この前なんかシュナさん1人でランク2魔物のオーク倒せてたし!」
うん、ゴブリック・パワー全開でね! 割と必死だった。
「ランク2のダンジョンだから大丈夫!危なくなったら引き返せばいいんだし~」
「ブ~、ゴブゴブ!(ん~、そこまで言うなら行こっか!)」
実際かなり興味ありまぁす! 未知のお宝とか魔道具とか!
「でしょ~! じゃあ早速準備して行こ~!」
そうして情報収集したり非常食やポーションを買い足したりと1日かけて準備をした。
「初心者冒険者の死因第2位は、慣れたころにダンジョンに挑戦してそのまま……」
というギルドの職員さんが言っていた言葉が耳に残った。
別の所にいてこちらを見ていた受付嬢さんは頭を押さえていた。
ちなみにランク2ダンジョンとは出現する魔物の最高ランクで制定される難易度らしい。
今いる村、アンファンにはランク2とランク3のダンジョンがあり、そのおかげで人も資源も多く、割と栄えているんだとか。
◆◇◆◇
村から歩いて1時間ほど、やってきましたダンジョン!
オラ、ワクワクしてきたぞっ!
「冒険者ランクEのソフィアです! 日帰りでの探索です!」
ダンジョンである洞窟の入口近くにある簡易受付で出入りの記録をつけてもらう。
期日を過ぎても戻らなければ、運がいいと探してもらえるんだとか。
「ランクEソフィアさんですね。そちらの方は?」
「わたしテイマーなので従僕です!」
「ほぅ~、テイマーですか。種族は何ですか?」
「え~っとぉ……秘密、です!」
ぺカーっとかわいい笑顔! でごまかそうとする。
「(テレッ)ま、まぁいいでしょう! ではお気をつけて!」
良かった、ごまかせた!
「何とか入れたね~!」
「ゴブゴブ!(よかったよかった!)」
ダメだった時の、ソフィたんに抱き着いて服の下に隠れる作戦も実行したかったのだけど。
「もぅ! また変なこと考えてるっ!」
何故バレた!
しゃべりながら道なりにしばらく進む。
「わぁ~、きれ~!」
洞窟の床や壁、そこかしこに結晶が突き出ており幻想的に光っている。
ソフィたんも純朴な子どものように目を輝かせている。
「だって~……」
「ゴブゴブ!(ごめんごめん!)」
バカにしたんじゃないよ!
「むぅ~」
初めてこんな素敵な光景を見たらそうなるよね。
それにソフィたんはめったに外に出られなかったみたいだし。
前からそうだけど、ソフィたんは好奇心旺盛だ。
「ゴブ、ゴブ!(俺もすごく感動してるよ!)」
「そうでしょ~! 来てよかったね!」
うんうん!――――っと、そこに無粋な気配を察知。
「ゴブ、ゴブ!(ソフィたん、魔物だ!)」
「えぇ~? もぅせっかく感動してたのにぃ~!」
前方から3匹のゴブリン。奇しくも以前苦戦した数と同じだ。
ダンジョン初の戦闘、よ~し、俺頑張っちゃうぞっ!
「ゴブブッブ・ブブー!(ゴブリック・パワー!)」
先日スキルへと昇華した身体強化を使う。
全身の筋肉が膨張し、感覚が研ぎ澄まされるのを感じる!
「ギィギャギャッ!?」
まだ距離があると思っていた敵は、俺の急加速にほとんど反応できていない。
「ゴブブッブ・ゴッブブ!(ゴブリック・ナックル!)」
叫びながら近くにいた1匹の顔面を思いっきり強打する。
何で技名を叫ぶかって? その方がスキル化しやすい気がしない?
殴られたゴブリンは吹っ飛んだ後ピクリとも動かなくなった。
「ギャー! ギャーッ!」
いきなり仲間がやられて敵はさらに混乱している様子。
今のうちに畳みかけるぜっ!
その後、瞬く間に敵を倒した。いやー強くなったもんだぜ!
「さすがシュナさん! ありがとね~!」
言いながら解体用のナイフを取り出し、ゴブリンの胸にある魔石を取り出す。
最初は血が噴き出たりグロかったりで泣きながら頑張っていたソフィたんだけど、今じゃ慣れた様に作業を進める。
解体は結構力がいるはずなのだがスパスパ進めていく。
ソフィたんは意外と筋肉もりもりなのかしら?
「違います~! わたしだって身体強化は得意なの!」
ふむ。さすがはめがみっく・パワー。
「やっやめてよ~、変なスキル名になったら困るでしょ!」
そうこう言ってるうちに解体も終わった。
ゴブリンの魔石は1個1石銭だ。
「じゃあ改めて、しゅっぱ~つ!」
再び幻想的な光があたりを照らす中、洞窟を進んでいく。
途中何組かの冒険者達と出会ったりするので、適度に距離を取ったり道を変える。
俺がゴブリンだとばれると面倒くさいしね。
一応、今日の目標は鉄鉱石が採取できるエリアだ。
鍛冶屋に持っていけばその分値引いて装備を購入できるので、駆け出し冒険者がよく通る道だそうな。
「最初はお金に余裕がないもんねぇ~」
そうして武器を数本確保したらダンジョンの魔物討伐して魔石や素材、ドロップ品を狙っていくという流れがギルドで推奨されている。
ランク2ダンジョンはそういった駆け出し冒険者から中級冒険者に人気スポットらしい。
「魔物、いないねぇ~」
うん、人気過ぎて道中の魔物は大体狩られてるみたいね……。
さっきのはたまたま湧いたやつに出くわしたようだ。
「ゴブブンブ、ゴブ(この様子だと採取エリアも人いっぱいかもね)」
「ん~そうかもね! まぁ今日はお試しってことで~!」
「ゴブ!」
光る結晶やよくわからない石、変なにおいの植物、1つ1つに感動しながら歩き、1時間進んだところで目的のエリアにたどり着く。
「わぁ、やっぱり人がたくさん!」
プールほどの大きさの広場だけで20人、周囲の魔物目当ての冒険者含めると30人近くがいた。
こりゃ今からじゃちょっと採取できそうにないね……。
「もうちょっと奥に行ってみよっか~!」
そうだね!
少し進むが、どの通路や他の広場もなかなか混んでいる。
「う~ん、この先は4層に降りるところみたい。」
おや、採取エリアが終わってしまった。
他の冒険者を見る限り、泊まり込みで作業する人や順番待ちをしている人が多いみたいだった。
採取は場所の確保を含めて数日かけて準備するものだったんだね。
「そうだね~、今日はそれがわかっただけでも収穫だよ~!」
相変わらず前向きですな。
「じゃあ、このまま帰るのももったいないから先に行ってみよ~!」
「ゴー!(おー!)」
お? 何か引っかかるな……ギルド職員さんに何か言われていたような……。
まぁ、いっか!
そうして第4層への階段を進む。
その先で、先人の忠告にはしっかり耳を傾けるべきだということを理解するのだった。




