第3話 エィディア
城の内部を進むにつれ、騒がしさが増してきた。
「長い眠りについてる神を起こすのに必死なんだろう。油断するなよ☆」
婆に曰く、統率者を失ったオリジン種はほとんど逃げたか、最初から役目を放棄して隠れているかのどちらからしい。
では、誰が神を起こしているかと言うと――。
「来たよ来た来た! 堕ちたボクが来たよ!」
「意地汚いボクが来たよ!」
「早く起きて早く起きて!」
ちっこい謎の生物。
見た目は本などでよく見るような妖精だが……。
「いかにも、妖精さ☆ オリジン種の成れの果てだったり失敗作だったり……力はないが、とにかく本能的でやかましい」
「堕ちた妖精……やはり俺のご先祖様はかつての神の眷属だったんだなぁ」
「そうだね。神に力を封印され、地に堕とされた後に――」
「復讐のために繁殖頑張ったんだよ!」
「誰でもいいから孕ませてやるって!」
「意地汚い! 悍ましい!」
思わぬとこから正解が聞こえてきた。
何だかおしゃべりなやつらだ。
「……この世界に元は魔物はいなかった。ゴブリンオリジンは――」
「繁殖頑張ったんだよ!」
「他の魔物のご先祖様はこの方が創ったんだよ!」
「すごいすごい!」
「「「さぁ、目覚めて!」」」
しまった! 話に夢中でこいつら放っといちゃった!
「バァーーーン!」
妖精の発声による効果音の後、そいつは現れた。
「エィディア様ーっ!」
「侵入者だよーっ!」
「ランク6のゴブリンだよー!」
「……何、ランク6? ……オリジンどもめ、失敗したのか」
「ごめんねー」
「早く倒してー!」
「ふむ……いいだろう。あらゆる知識を内包せし『世界大全』。其れは只知識にあらず。我が用いればあらゆる武装となる」
初老の爺さんが現れた!
何言ってるかわかんね!
「脆弱な人類などに過剰な攻撃力は不用」
そう言って爺さんが具現化させた物は――ッ!
「――まずっ! 『多重範囲盾』!」
どう見てもガトリング的な兵器っ!
ダダダダダダダダダッ!
土煙をあげ、弾丸が殺到する!
――幸い威力は大した物ではなく、盾で防ぐことができた。
「ふむ、足りないか。ならば……」
次に出したのは……大きな筒? 何かわからんが絶対やばいっ!
ドォーーーン!
「あっぶねっ!」
何とか防ぐことのできたそれは、914mmはあろうかと思われる砲弾だった。
「ふむ。やはり実践には向かぬか。ならば……いでよ、蒼武天、紅武天」
次から次に……一息つく間もない!
今度は3m程の蒼い巨人と……何だ? 姿が見えな――!
ガギンッ!
感じた嫌な予感のまま盾を横に構えると、1m程の紅い魔物が斬りつけてきたところだった。
「なっ! こいつ速すぎっ!」
目にも留まらぬ攻勢に防戦を強いられるっ!
さらにその後ろからどう見てもパワータイプの蒼が……っ!
「――っ! あなたっ! もう1体いますわ! 透明な何かがお爺さんに重なって……見えない毒を撒き散らしてますわ!」
「ほう。まさか気付くとは……しかしもう遅い。黄武天よ、やれ」
「うぉぉおおおっ!?」
やばいやばいやばいっ!
「『アークウィンド』……どう? 毒は吹き飛んだかしらっ?」
「大丈夫そうですわっ!」
「すごいほのおのうず。速いやつなら周り全て燃やせばいい」
「ディちゃん! あれ、でも熱さを感じない?」
「味方に被害を与えない。魔法を使うなら当たり前」
「も、ものすごい魔法制御力だ……☆」
「このデカブツは私が! 力をいなすことなど基本中の基本だっ!」
「クリス……みんなっ!」
「ふむ。雑魚かと思いきややりおる」
「……稚拙」
「……何?」
ファルシオンが爺を煽っていく。
「あなたのそれは稚拙ね。ただ表面をなぞっただけ。本物には遠く及ばない」
「……紅武天」
それまで俺を狙っていた紅の気配がファルシオンに向かう!
「触るな。失せなさい」
「ギッ……ギィッ……」
力を失っていてもなお失われない王者の風格!
なるほど、本物だ。
「馬鹿なっ! 貴様は1番マナを感じられない――」
「表面だけしか見ないから……いえ、もういいか」
「ディちゃんっ! 今よっ!」
「ものすごく強い」
「「『ウィンドフレイムランス』!」」
「ソフィア!」
「えぇっ!」
クリスの声に合わせ、ソフィたんのバフ!
「魔素の薄いところ……そこだっ!」
一閃。
蒼と紅はともに崩れ落ち、消滅した。
「ぐっ! しかしまだまだ! 黄武天を纏った私が――ぐぶっ」
「残念、終わりだよ」
爺の背後から胸を貫く。
「ガハッ! お、おのれ……その力、まさか餓鬼の……?」
「そうかも知れないしそうではないかもしれない」
爺に倣って小難しく言ってやる。
「まさか……元眷属にやられるとは……その顔、忘れ……な……」
爺さんはこと切れると金色の粒子となり、天に昇っていった。
「やった……のか? 最期のセリフが気になるが……」
「ランク6、神は不滅。いつかどこかで復活するんだよ」
「へぇ。よく知ってるね」
「精霊だからね」
「まさか、本当に倒しちゃうなんてね。私の選択は間違ってなかったわね……」
痴女女神がそんなこと言ってるが……。
「別に仲間にした訳じゃないぞ? 放置女神なだけだぞ?」
「あら、そう言うプレイがお好みグェッ!」
クリスによる顔面パンチ! 容赦ねぇ!
「……次に進もう」
見なかったことにして!
「(先程の話、本当ですか? 初耳ですが……)」
「(神は不滅って話? 本当だよ。私がそうだったから)」
「(そうですか……)」
「(大丈夫、力を取り戻すにはすごく時間がかかるよ。それに、彼らがいるじゃない)」
「(そう……そうですね☆)」




