第11話 婆による説明回
「主ぃ……どこぉ……?」
「そばにいるよ。よしよし」
「わふぅ……どっか行っちゃ、やぁ……」
「うぅ……ディちゃん……」
何度目かもわからないやり取り。
苦しんでいるディちゃんを見ているのは正直辛い……。
「大袈裟なっ☆ ちょっと体の構造が変わっているだけさ☆」
「……それって割と大事だよね」
俺みたいな魔物は、一瞬で……無理矢理に近い感じだけど変化は済む。
一方、人類は少し時間をかけて変化するそうな。
「んん……ん? 治った」
「え? 本当!? おめでとう!」
思わず抱きしめてほっぺすりすりする。
「ディちゃん! 本当に心配したんだから!」
すりすり。
「主はディの事好き過ぎ」
「うんうん! 大好きだよぉ~!」
すりすり。
「わふっ!」
ぽかっ。
いてっ。
「ちょっと! 病み上がりなんだからそっとしておいてあげなさい!」
「はぁい」
すりすり。
「さて、これでお前たち全員ランク5になった訳だね☆ 良かった良かった☆」
「そうだね、気付けばみんなランク5だ」
先程、ディちゃん同様に目覚めたリルちゃんもね! また寝たけど。
「そう言えば、ランク5って結局何なの? 単純な強さって訳じゃないみたいだけど……」
「何だい知らなかったのかい☆ ランク5は主に、身体を構成するマナ密度が一定を越えたもの、さ☆ 自然と魔法に長けてくるから強いとも言えるけどね」
「……知ってるわけねぇだろ糞婆。どういう事?」
「この世界の生命は知っての通り、魔素……マナ、生命の源で構成されている。もちろん、人間もそうだ☆」
「……初耳すぎてびっくりするー☆」
「いやいや、わかってるだろう? ボクとの特訓でさ☆」
「え? あー、魔法の素、魔素……生命……そう言う事?」
「ランク6ってのは言わばマナそのもの。生命の到達点。超越者。……神。ランク5は言わばそれの準備期間に過ぎない☆」
「神とな」
「そ、マナの支配者だもの☆ 魔法、今までより強くなってない?」
「それは感じる」
「そう言う事さ☆ あの魔王、ランクで言うと5.5ってところかな? それでも圧倒的だったじゃないか☆」
確かに、進化してからは周囲の魔素……マナが自分の手足のように感じる。
「そっかぁ……」
「それと、ランク5からは身体は魂により固定化されて、新陳代謝も周囲のマナとの循環でなされるから☆」
こいつはいきなり何を言っているんだ? 訳がわからん……。
「意味わからんのだが……つまり?」
「つまり、不老不死、ご飯いらない、体の変化しない、わかる?」
「そこまで簡略化せんでもわかるわいっ!」
いつの間にか人類の永遠の夢である不老不死☆
「それはリルちゃんが聞いたら飛んで喜ぶねっ♪ 私もみんなとずーっと一緒にいれるのは嬉しいなぁ♪」
「……まぁ、喜ばしいことだよね☆」
リルちゃんだけエルフ、長命種ということを寂しがっているときがあったからね。
「ちょっ……ちょっと待ってください! 身体の固定化って……もしかして……?」
「……ご想像通り、かな。あくまで身体的に言えば、妊娠中の子どもは母体にとっても異物そのものだからね……」
「――っ!」
思わず泣き崩れるプリンちゃん……。
そこまで考えが及ばなかった……。
「ディはもしかして……ずっとちびっちゃい、まま?」
「……大丈夫、いずれどうにかなる!」
「……」
「ディちゃーん!」
ディちゃんが気絶してしまった……。
「す、すまない……ボクも配慮が足りなかったみたいだ……」
「……いや、あの時は生きる残るために必死だったから……」
「で、でも! お婆ちゃんは子ども産んだんだよね!?」
「そうだね☆ 確率は限りなく低いけど、なくはないと思うよ!」
「――っ! あなたっ! 今すぐ子作りいたしますわよっ!」
「プリン! お前とんでもないこと言ってるぞ!」
「わたくしは! シュナイダー様との間に子どもが欲しいのです!」
「プ、プリンちゃん! 別に今すぐ欲しいんじゃないんでしょ!?」
「そうですが! なかなかできないとなると何回も! …………何回も……?」
途端に真っ赤っかプリンちゃんになる。
「……えっちですわ!」
ビターンッ!
「痛いっ! 何で叩くの!」
「……えっちですの!」
ビターンッ!
いてて……これは、今夜はお仕置きだなっ! ぐぇっへっへ~!
ぽかっ!
いてっ!
「それと、ディのことだが……」
「大丈夫だよ。精神的にというか、年齢的に大人になったら、ね!」
「……やはりロリコンじゃったか☆」
「えっちですの!」
……解せぬ。いや、もうそれでいいや!
「さて、ではそろそろ話そうか☆ この世界の真実を☆」
きた、か。婆の真の企み! 俺たちを手助けてきた理由! 真の敵とはやはりばば――!
「違うっての! ……いいから黙って聞きな☆」
そう言って、婆は真面目な顔をして語り始めた。
◆◇◆◇
――ロリロ視点――
昔々、あるところに全てを超越した存在がいた。
永遠の命を持ち、誰よりも強く、誰よりも冷酷。
あらゆる戦いを制し、あらゆる欲を叶え、そして……飽きたそうだ。
全てやりつくしたそいつは、永い眠りにつくことにした。
眠るといえど、身体の維持には定期的にマナを取り込む必要がある。
そこでそいつが考えたのは……世界の農場化、家畜化だった。
マナとは、生命そのもの。
生命の活動が活発になることでマナも活性化し、増える。
生物が強くなるほど、死んだときに放出されるマナが多くなる。
より多くのマナを生産させるため、生物を効率よく強くする必要があった。
そいつは同じような考えを持つ仲間を集め、駒を創り、計画を練った。
考案されたのが、自身の能力と適性を測るためのステータスシステム。
それを管理するのは同じく超越した存在、『ステイシス』。
そのステータスシステムの根幹をなす知識群である『世界大全』。
それを構築し、さらに原生生物の外敵として最初の魔物を創造したのは『エィディア』。
この2人に加えて様々な能力と制約を持った、ボクたちオリジン種を“奴”とエィディアで創造した。
こうして準備が整った後、この世界に侵攻した。
この世界にも強力な生物はいたが……突如現れた我々に成す術もなかった。
瞬く間にこの世界は奴の支配下となった。
余談ではあるが……シュナイダーの先祖に当たるゴブリンオリジンというのも存在した。
しかしこの世界への侵攻が終わった後に、用済みだと他の一部のオリジン種とともに能力を封じられ、地に堕とされた。
飽くなき欲望を剝き出しにして敵を次々と貪る様は……悍ましいものがあったよ。
その後の世界の管理はオリジン種の役目となった。
この世界は、この世界の生物は……。
魔物を始め、外敵と戦うことで生物としての格をあげさせる。
己を知らせることで効率よく成長させる。
しかし奴らと同格であるランク6になられるのは困るため、ランク5になった生物は刈り取る。
我々ではどうしようもなくなった時の保険に、魔王という強大な切り札を用意された。
ボクも他のやつらと同じようにこの世界に侵攻し、管理していた。
ひどいもんだろう? いきなり来て、いきなり蹂躙し、いきなり家畜のように扱う……。
ボクも同じことをしていたのさ……。
しかし……1000年ほど経った後、ある男と出会った。
何の変哲もない、ただのヒト属。ただのお人好し。
そんな彼と出会って一緒に生活していくうちに……。
その彼が、最期に言った。
『悔しい』と。
神や我々に管理されている現状が。
彼の最期の言葉を、忘れられなかった。いつの間にかその思いは自分のものとなっていた。
彼の、ボクの悲願。それは――。
◆◇◆◇
「“奴”……神々の頂点、ノアからこの世界を開放することさ☆」
「ノア……それが全ての元凶……」
「そうだよ☆ 悔しいだろう! この世界は農場で、人類は家畜も同然さ☆」
「お婆ちゃん……」
「奴らの都合で強くさせられ、必要以上になったら狩られる。たまったもんじゃないだろう!」
「……正直、それらも色々気付かなければ……むしろ快適な世界に整えられたと思えなくもない」
「……」
「だけど……それが原因でみんなの命を狙われるなら! やっぱり許せないっ!」
「……力を貸してくれるかい? 悲願を叶えるため、神殺しを!」
「へっ! 頼まれなくたってやったらぁっ!」
……何だか三下っぽいな。
「彼奴を倒すことこそ我が本懐。必ずや成し遂げよう」
「……何で言い直した?」
婆の何百年にも及ぶ戦いと……後悔。それが垣間見えてしまったから。
「……ありがとよ、シュナイダー」
「……別に、あんたのためって訳じゃないんだからねっ」
たまにはデレてやろうとも思いました。
その後は婆の話をさらに詳しく……女性陣は特にアーランドとの生活をキャーキャー言いながら聞いた。
ほんと、いくつになっても好きね。恋バナ。
10章はここまでとなります。
読んで下さりありがとうございます!
次章で完結となりますので、引き続きよろしくお願いします。
評価・ブックマーク等ありがとうございます!




