第9話 悲願
――ロリロ視点――
見えるかい、アーランド。
あんたの……私の、悲願だよ……。
まるで神により閉ざされた、暗黒の世界を照らす太陽……いや、あいつはそんなキャラじゃないか。
闇を貪る光だ。
ようやく……ようやく、この世界でランク6が生まれたんだよ……。
2000年以上経ってしまったけどさ……。
見てみろ、魔王なんか畏れて震えてるよ。
他の生き物も、魔素も、世界も。
或いは歓喜し、或いは畏怖し、或いは歓迎し、或いは忌々しげに……そんなもの最早どうでもいいね。
最期に見届けてさせておくれ……。
その牙は、“奴”に届くのか……。
◆◇◆◇
「BBBBBBBBB!」
進化中止っ! 進化中止っ!
やだっ! また暗黒面に堕ちちゃう!
シュコシュコ言っちゃうぅっ!
だめだっ、止まらないィッ!
「(シュナさん!)」
……せめて、せめて大切な人達を守れる姿にっ!
やがて光が弾けた。
「――これ、は……!」
まず感じたのは、解放感。
魔素が、自分自身がどこまでも広がっているかのような……。
次に自分自身を見る。
何となく、世界と自分との境目が曖昧で不安だったが……良かった、ちゃんと体はある。
それに、あまり容姿は変わってない……?
「(シュナさん! 大丈夫、あまり変わってないよっ!)」
「(良かったぁ……そうだ、角は!? 角はちゃんと無くなってる!?)」
「(……あまり変わってないよっ!)」
……ほーん……変わってない、かぁ……。
「(大丈夫! 私はかっこいいと思うよっ!)」
「GRRR……」
……ソフィたんとの心温まる交流を邪魔しやがって!
魔王がエネルギー波を放つ。
「『勇者に栄光あれ』!」
気合いを入れてシールドを張ったが、簡単に防ぐことができた。
……魔法の効率? 出力? 理解? とにかく、今までとは段違いだ。
接近戦を仕掛けてくる魔王にカウンターパンチ!
「GRRR?」
……ただのパンチはやはり対して効かないようだ……何でやねん!
勝機を見出したかのように、魔王が猛烈な勢いで爪を振るう!
「……ふむ」
『世界』を発動。そこには最初から何もなかったかのように、肘から先を消失させる。
「GUGYAAAAAA!」
こんな感じかな!
よし。そろそろ死んでもらうよ。
「――ッ!」
魔王は踵を返し、必死に逃げようとするが――っ!
「これはクリスの分! これもクリスの分! これもこれもこれもーッ!」
「GRRRAAAA!」
殴るごとに魔王を食らう!
「まだまだっ! クリスの仇ーっ!」
やがて、魔王は残すところ頭部だけとなり――。
「GRRRA!」
最後の抵抗とばかりにエネルギー波を放つが――。
「……終わりだ」
ポシュンと虚しい音を立て、魔王はエネルギーごと消失した。
「見ててくれたかい、クリス……」
「(あの、だから、無事です……)」
◆◇◆◇
「クリスゥゥウッ!」
無事で良かった……もみもみ。
「やっ、めろ馬鹿者っ!」
「もぅ! 大袈裟だよっ! 下敷きになって鼻血が出ただけじゃない!」
「うぅ……ですが、血が止まらなくって……意識も……!」
「軽く意気を失ってしまったが、まぁ大丈夫だ! そんな柔な鍛え方はしていないっ!」
まぁプリンちゃんはそう言うのに慣れてないから、慌てちゃうのは仕方ない。
「意識失ったんだから大丈夫じゃないよ! ゆっくり休んで!」
もみもみ。
「だったら胸を揉むなっ!」
クリスをお姫様抱っこをして、避難所である王宮に戻る。
赤面クリスは俺の腕の中で気絶したように固まっている。
「いいなぁ……あたしも頑張ったのになぁ……」
「ん、明日はディの番。あ、明日はダメだった」
リルディとも途中で合流しました。
明日はダメって?
「何か用事でもあるの?」
「明日は多分、ランク5になるから」
「えっ!?」
リルディの戦った話を聞く。
「すごい! 2人とも頑張ったね!」
「でしょ! だから、あたしも……お――」
もみもみ……するお胸がなかったので、つんつん。
「きゃっ! そっちじゃない!」
「え? こっち?」
右の胸から左の胸へ、つんつん。
「ちっがーう!」
何てふざけながら進んで行くと――。
「おい! 英雄様が戻ったぞっ!」
「「「わぁぁぁあああーーーっ!」」」
「ななな、何だ何だ!?」
「ほら、キミのことだよ。みんなキミを……英雄を歓迎してるのさ!」
ブレイヤが説明してくれるが……英雄?
「みんな見てたんだよ。あの強大な魔王に怯まず戦い、勝利したキミをね!」
「え……えぇ……?」
「……ふふっ。ほらシュナさん、行った行ったぁ♪」
ソフィたんに押され、みんなの前に出てしまう。
「……」
「……」
えっえ!? どうしよどうすれば!?
「(もぅ。みんなシュナさんの言葉が欲しいのよ♪)」
しょ、しょんないきなりっ! ふぇぇ……?
「……こ、こんにちは……」
「……」
ふぁぁああ……こ、こうなったら……!
「……こ、この女性こそ! 勝利の女神! クリス!」
お姫様抱っこから掲げるように持ち上げ、クリスを紹介する。
クリスは赤面したまま固まっている。
「「「わぁあああ!」」」
「「「クリス! クリス! クリス!」」」
「……そして! 愛の女神! ソフィア!」
「きゃあっ! ちょっとシュナさん!」
クリスを放り投げ、ソフィたんを抱き上げる。
「「「ソフィア! ソフィア!」」」
「お次は! 美しき女神! リル!」
「ちょっとっ! 恥ずかしいからっ!」
「「「リール! リール! リール!」」」
「いと貴き女神! プリン!」
「あ、あなたったら……」
ざわ……ざわ……。
「お、おいアレ……!?」
「誘拐されてたプディング王女じゃ……?」
「おい聞こえないぞ! プリン! プリン!」
「「「……プリン! プリン!」」」
「最後はぁっ! 可愛さの女神! ディちゃんとサキュ!」
「わふっ」
「ぷーっ!」
「「「ディちゃん! サーキュ! ディちゃん! サーキュ!」」」
「何を隠そう、全員俺のお嫁さんだぁっ! はーっはっはっはーっ!」
「死ねー!」
「ロリコンめー!」
「俺のプディング姫を返せーっ!」
何でや!
「静粛に!」
ライガの一言に、馬鹿みたいに騒いでいた場が静まり返る。
「彼は! ゴブリン人間と言う、亜人の中でもさらに稀有な存在! しかしながらヒト属や亜人を分け隔てなく愛するお方! みなも見ただろう! 暗い絶望を照らす太陽の如き彼を! 彼こそ……これからのヒト属と亜人を繋ぐ希望の象徴! その名も――!」
「「「シュナ=サン! シュナ=サン! シュナ=サン!」」」
「「「わぁぁぁああああ!」」」
うわぁ……何とか矛先を変えようと頑張ったのに、ライガのやつめ。
しかも勢いで色々誤魔化して無理矢理いい感じ風にまとめやがった……!
メンシュライヒのヒト達に認められるのは感慨深いものはあるが……。
「「「シュナ=サン! シュナ=サン!」」」
何か違くね? 名前のイントネーションも違くね?
「希望だ! 太陽だ!」
「英雄シュナ=サンの誕生だーっ!」
……あぁ、サンと太陽をかけてるのか。
……え?




