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第8話 ランク5の上

 ――クリス視点――


 私とソフィアはプリンの護衛をしつつ、民らの避難誘導を担う。

 とは言え、元からほとんど避難していたようなので数は少ない。


 戦いで負傷した兵が主な避難民だ。


「お2人とも、ありがとうですわ!」

「家族なんだから当たり前、だよ♪」

「あぁ、その通りだ!」


 家族……。

 一度は全て失いかけたが……ソフィアだけでなく、みんなかけがえのない存在だ!


 必ずみんなを守ってみせる!




「た、大変です! 商店街の方に避難していた住民がまだ来ていません!」

 大方の避難が完了したであろうと思っていると、そんな声が聞こえてきた。


「――っ! ソフィさん、クリスさん! 一緒に来て頂けますか?」

「もちろん! 行こう!」




 商店街を目指すが……そこは我が夫と魔王が激しく戦っているところの近くだった。

 少し離れているここにも衝突音が響いてくる。


 魔王……正直怖ろしい。ランク5になった私でさえ、体が震える……。

 同じランク5でも、こうも差が出るものなのか?

 

 しかし、我が夫は迷いなくあの存在と対することを選んだ。

 ……私はせめて、自分にできることをしよう。


「どこでしょうか……? 早く移動しなければ……っ!」

 プリンも必死な様子で探す。

 争いごとに疎いとはいえ、ここに来ることを選べるとは彼女の胆力も相当なものだ。


 私も辺りを見回す。必死に感覚を研ぎ澄ませる。


「……お母さん……」

 轟音響く中、か細い声を捉えた!


「あっちだ!」




 辿り着くと、足を負傷して動けない母親と目の前で泣き崩れている女の子がいた。


「もう大丈夫だよ! 『小回復』!」

「あ、ありがとう、ございます!」


「他の方々はどこにいるかわかりますか?」

「恐らく誰も……あのドラゴンみたいなのが来てみんな王宮に向かいました。私たちは、途中で怪我をして……」


 幼い子どもとその母親を置いていくとはっ!

 ……いや、それだけ必死にみんな逃げていたという事か……。


 力のない民が、誰かを見捨てて逃げても責められまい……。


「それじゃあ一刻も早くここを離れましょう!」

「あぁ。シュナイダーは大丈夫か――」

 立ち上がり、顔を我が夫に向けると……猛スピードでプリンに飛来する巨大な何か!


「危な――!」

 言葉より早くプリンの前に立ち塞がり、そして――!




「クリスさん!? いやっ! いやーっ!」

 どうやら大事な家族を守れたようだ……。


 ソフィア……そして、夫の顔が思い浮かび……目の前が真っ暗に――……。




 ◆◇◆◇




 『モード:エア』、無理矢理自分の戦闘力を上げるモード。

 しかしその代償に長時間の使用は体に致命的な欠陥を負う。


 つまり、短期間でケリをつけなければならないっ!


「うぉぉおおーっ!」

 この戦いが終わったら、俺はっ! 俺はーっ!


 殴りかかってきた魔王の左腕をカウンター気味に弾き飛ばす!

 そのまま次は両足! 次に――ッ!


「GRUUAAAAA!」


 魔王が全身の魔素を放出! 爆発のようなものが生じ、『餓鬼の世界』を吹き飛ばす!


 速さでは俺が勝っているが、いかんせん魔王はでかく力強い!

 エアを以てしても、一度の攻撃では削り切れない!


「ちっ! 回復も早いっ!」

 みるみる欠損部位を再生していく魔王。

 せめて頭か心臓を穿てれば……!


 魔王が距離を取ろうとする!


「逃すかぁっ!」

 追撃し、再び腕を食いちぎりそして足を……。


「くそっ!」

 先程の繰り返し、爆発させてまた回復。

 何度も攻撃をするが、魔王に致命傷を負わせられない!


「どうする! どうすればっ!?」

 限られた時間に焦りも強くなる!




 ……その焦りのせいか、致命的なミスを犯していたことに、今更気付いてしまった。


 あれは……ソフィたんにプリンちゃん?

 ……クリスはどこだ? 一緒にいるはず……。


 遠目で見る2人の焦った様子に、嫌な予感が止まらない……!

 やがて、その声も聞こえてしまった……。


「クリスさんを早く助けなければ! 魔王の腕の下敷きに!」




「……クリスが……下敷き……?」

 そ、そんな、まさか……っ!?


「血がたくさん出てますわっ!」


 クリスッ! 嫌だ! 嘘だっ!


「目を開けて! クリスさん! いやぁーーーっ!」




 その瞬間、クリスとの思い出が脳裏を駆け巡る……。


 大事な人を見守る優しい眼差し。


 戦うときの決意溢れる顔。


 照れてはにかんでいたあの夜――。


 クリスが……死ん……?




「ああーーーーぁァアアアアアガァッ!!!」


 俺……クリスに……好きって、言えてない……。




「コロスッ! コロスコロスッ! コロスッ!!!」

 ゼッタイ、ユルサナイ……!




 ティロンティロンティロン♪


 ≪進化を、確……ニン。討伐……討バツ……トウ……バ、ツ……≫







 5度目の光が、俺を包み込んだ。

 真っ黒な感情のまま、それを受け入れ――。




「(大丈夫! クリスは大丈夫だから! 落ち着いて!)」


 ――ッ! ソフィたん!? クリスッ!

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