第7話 俺の切り札ッ! B・D・D!
「なん……だ……!?」
突如! とんでもない密度のエネルギー波が音よりも速く俺らを襲う!
「『多重範囲盾』――ぬぐぅぉぉおおおーっ!」
どうにか防ぎきるが、かつてないほどの威力!
「あれは魔王だ! あの魔素濃度、間違いない!」
ぐっ、くそ……何でこんな時に……!
「わからん! まずいぞ、このままじゃメンシュライヒがっ!」
見れば魔王を取り巻く無数の魔物……!
魔王は、大きさこそそこまでではないが、圧倒的存在感と絶望感を振りまいている。
「とっ、とにかく皆様王宮へ! 魔法障壁があるのでしばらく持ち堪えられます!」
「俺たちは……戦うぞ! 友好国の危機だ!」
「「「おうよ!」」」
「亜人のみなさま……どうかご無事で……」
圧倒的な絶望感、そしてヒト属への恨み……にも関わらず立ち向かうライガたちタイグル勢。
漢気溢れる行動、流石と言わざるを得ない。
しかし……あの魔王にはどう足掻いても勝てないだろう。
「魔王は俺が! だからみんなは――!」
「一緒に戦うよ!」
逃げてほしい、とは言えなかった。
「当たり前だ! お前だけ置いて行けるかっ!」
「一緒に……また帰るんだからっ!」
「ディも戦う」
みんなの覚悟漲る顔を前にしたら……!
「……それじゃあみんなは魔王の取り巻きを頼む! それとプリンちゃんの護衛!」
既に避難誘導に加わっていたプリンちゃんを指す。
絶対みんな無事でいてくれ!
そう願いながら魔王の元へ駆け出す。
◆◇◆◇
魔王もこちらへと向かってきていたようで、市街地で会敵する。
どうやらエネルギー波を防がれたことが気に入らないようだ。
やがて――!
ドゴーーーンッ!
俺の障壁と魔王の巨大な腕が衝突する! ついでに『餓鬼の世界』を食らわせるが――!
「ぐぅっ!」
なんて魔素密度だ! 食い切れない!
魔王はドラゴンとも悪魔とも形容し難いその巨体を震わせ、俺を睨む。
「なっ!?」
そして腕を切り落とした。
こいつ! 『餓鬼の世界』の特性を理解しているっ!
そして当たり前のように腕を再生させ、再び殴りつけてくる。
「何度でも食って――!?」
衝撃に対応しようとしたが、予想以上の強さに吹っ飛ばされてしまった。
「ガハッ! はぁはぁ……――っ!?」
強い悪寒に目を向けると魔王が再びエネルギー波の準備をしている!
「ぬぉぉおああっ!」
必死に多重範囲盾を展開! エネルギー波は防ぎきるが――っ!
眼前に迫る魔王っ!
――速い!!!
勝利を確信して笑う魔王がその爪を振り下ろし――!
――しかし空振りに終わる。
「『モード:エア』」
……短期決戦を挑むことが決定してしまった。
◆◇◆◇
――リル視点――
「ギャァァアッ!」
町に溢れる魔物を倒して回る。
低ランクの魔物も多いけど、戦えない人には脅威に変わりないっ!
「ディちゃん!」
「ん」
火力の高いあたしたちが遊撃として敵を倒して回るのは当然の流れ。
「リル、あれ」
「ディちゃん……」
そして、強敵とぶつかるのも当然の流れだった。
ティロンティロンティロン♪
≪ランク5のマンイーター種が出現しました。個体名なし。至急討伐してください≫
「どう見ても、今のアレのことよね……?」
「主と同じように光って変化した」
10メートルは超すであろう巨体を誇るマンイーター種。動きは遅そうだけど……。
「魔物食べてる」
ディちゃんの言葉にマンイーターを見ると、その触手をもの凄い速さで動かして魔物を捕食しているところだった。
「……あぁやって進化したのねっ!」
「わふっ……近づきたくない」
幸い私たちは植物相手に相性が良い。
エルフである私は、何となく植物の考えがわかるし、ディちゃんの得意な魔法は火だ。
「うん、遠距離から魔法で攻めようっ!」
「わかった。『すごい大の字の――』」
「危ないっ!」
かなり距離があるにも関わらず、敵意を察知したのか、マンイーターは触手で私たちを狙って来た!
危険察知が遅れてたらと思うと……!
「『――ほのお』」
しかしディちゃんは私に担がれながらも魔法を放つ!
どんなメンタルしてるのよっ!
やはり本体の動きは鈍いようで、魔法が直撃する。けど……。
「あまり効いてない」
「……生木は燃えにくいって言うけど、あいつも!?」
「……『すごいほのおのうず』」
ディちゃんが再び魔法を放つが、やはり効き目が薄い。
「『すごいほのおのうず』」
ディちゃん……また来たっ!
必死にディちゃんを抱えて逃げる!
何度も敵に狙われては避け、攻撃をする。
命のやり取りの中、精神的にも、身体的にも消耗が激しい……!
「このままじゃ……」
「大丈夫、ちょっとは効いてる」
「だ、だけど……後何回打てば……!」
「リルも手伝って」
「何を?」
「風の魔法。火を起こすとき、ふぅふぅすると火が強くなる」
「た、確かに……そんな単純なことに気づかないなんて、焦ってたみたいっ!」
ごめんね、ディちゃん!
「わかったっ! じゃあ、せーので行くよっ!」
触手の攻撃をかわし、ディちゃんの準備ができたことを見計らって!
「せーの! 『ウィンドストーム』!」
「『すごいほのおのうず』」
ディちゃんの炎の壁を取り囲むように私の魔法をコントロールする!
「キシャァァアアアーッ!」
初めていい感じにダメージが入った!
「ん、いい感じ」
「そうねっ! このまま――っ!」
さっきまでより速く力強い触手!
必死にディちゃんを抱えて避ける!
「リルの体、あったかい」
「なっ何よ急に!」
こっちは必死に逃げてるってのに、急にディちゃんが変なことを言う。
「いつも守ってくれてありがと」
な、何なのよ、もぅ……当たり前でしょっ!
「……あいつを怒らせちゃったみたいねっ」
「効いてる証拠。次打てる」
「本当にディちゃんって落ちついてるね……行くわよっ! せーの! 『ウィンドストーム』」
「『すごいほのおのうず』」
「キ……キィ……ッ!」
かなり弱ってきてる!
「息ぴったりね!」
「わふっ!」
初めて彼とソフィとで戦った時のことを思い出す。
あの時は酷かったなぁ……。
今はみんなと一緒に戦うことなんて当たり前、呼吸も自然と合う。
さっきディちゃんにお礼を言われたけど……言いたいのは私の方!
「本当に……みんなと出会えて良かったっ!」
「? わふっ!」
程なくして、ランク5のマンイーターを討伐できたのでしたっ。




