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第6話 動機は不純でも、よりよい結果を生むなら飲み込んでいきたい

「内乱……そんな……どうし、て……?」

 プリンちゃんが顔面蒼白になりながら呟く。


「理由は分かりません! しかし今も戦っています!」

「そんなっ!」


「――俺は行くっ! 俺たちは戦争を止めに来たんだ!」

 何よりプリンちゃんにこんな顔させるなんて許せない!




「お待ち下さいませ!」

 ――誰だこんな急いでる時にっ!


「突然の無礼、ご容赦下さい。私はメンシュライヒ第一王女、ショコラティーヌ・ォン・カプチーノです」


「「「……は?」」」


「お、お姉様……!?」

 え、マジの王女さん? こんなとこに何で!?


「プディング……やはりここにいましたか。お久しぶりですわね」

「え、えぇ。ショコラ姉様こそ、なぜここに?」

 ショコラ姉様が一呼吸置いた後、口を開く。


「盟主ライガ様、及びタイグルリオンの皆様に再度お願いをしに参りました。私たちに、力を貸して頂きたいと!」

「……」


「この内乱に勝利すれば、獣人であるあなたたちの地位も改善に向かっていくはずです! 何卒、そのお力を貸してください!」

 そう言って頭を下げる。おいおい王族がそんな簡単に頭を下げていいのかい的な!




「……すまん、話が見えない」

「……我が国の外交官がお渡しした親書はいかがされました……?」

 あー、それって確か……。


「……の、飲み物こぼしちゃって……それで……」

 嘘付け! 中身も見ずにビリビリにしてやったぜって言ってたろ!


「……悲しい行き違いがあったようですわね。では改めてお願い申し上げます」

「はい」

 ぷぷっ! ライガのやつ神妙にしてる!


「内乱を終わらせるために……私たち、親プディング派に力をお貸し頂けませんか?」

「……親プディング派?」

 え? プリンちゃん? 食べる方の?


「親プディング派、つまり亜人の方の地位向上を目指す派閥。皆様にとっても悪い話ではないはずですわ」

「……嘘よ、姉様がそんなこと目指すはずが……」


「……聡明なあなたにはすぐわかるでしょうから、正直にいいますわ。民が、あなたを支持しているのです」

「メンシュライヒ国民が……?」


「えぇ。元からの人気、誘拐された悲劇、亡国の危機とその原因であるクァアの討伐……そんなプディングに、国民の支持が爆発しています」

「そ、そんなことになっていたんですのね……」


「私と第三王子はこの機に乗じ、王権を獲るために内乱を起こしたに過ぎません。正直亜人の方々のことを慮ってのことではありませんの」

 めちゃくちゃ素直にぶっちゃけましたわね。


「ですが、国民の幸せを願っての行動であることは事実ですわ。どうか、お力を貸してください」

 再び頭を下げるショコラ姉様。




「……その国民に、亜人は含まれているのか?」

「えぇ、戦いに勝利すれば必ずやそうなるでしょう」


「……俺たちは、今までの恨みを忘れちゃいない」

「必ず償いましょう。金銭で、となってしまうでしょうが……」


「……」

「……」


 しばしの沈黙。

 

「――行くぞお前ら!」

「「「おうよっ!」」」



 思わぬところでやってきた、目的を達成するチャンス。


 しかしライガ……お手紙をちゃんと読んどけば、もっとうまくいったんじゃ……?

「(水を指すんじゃないよ☆)」




 ◆◇◆◇




「ぐぅっ!」

「『紅蓮の』坊や! 無理するんじゃないよ! 『アイスウォール』! これで少しは時間が稼げるはず!」


「ホーネット……すまない」

「別にあんたのためってんじゃないよ! あのちびっ子にどやされたくないだけさ!」


「それでも、ありがとう」

「……ふん。どれ、傷を見せな……血が出てるじゃないか」


「これくらい、大丈夫さ……」

「全く……しょうがないねぇ。ほら、よく見せてご覧……」


「ホーネット!? 大丈夫だって! こんな傷、唾でも付けとけば……!」

「だから私が付けてやるってんだ……ほら」


「――っ。ホーネッ――」

「ストォーーーップ! 騙されるな! そいつは性悪糞婆だぞ! お胸も偽物なんだぞ!」


「キ、キミは……シュナイダー! 来てくれたのか!」

「失礼なっ! 胸は本物だよっ!」




「……ここに、逃げなかった一般市民がいるんだって?」

 ショコラ姉様曰く、国民には近々戦争があるからと周辺の町に避難するよう指示を出していたと。

 今いるのはそれでも逃げなかった……いや、戦うことを選んだ人たちだ。


「そうだ。みんなここにいる!」

「そうか……さすが、勇者様だな」


「僕は勇者なんかじゃ――」

「いや、間違いなく勇者だ。お前は凄いよ、ブレイヤ」

 何日もここでみんなを守ってたらしい。素直に凄いやつだ。


「――っ!」

「今タイグルのみんなが内乱に介入してる。直に終わるだろう」


「……そうか。キミが来てくれて、良かっ――」

 そう言って安心したように金髪は気絶した。




 ◆◇◆◇




 疲弊したメンシュライヒ兵に対し、こちらは道中ほぼ何もしていない元気もりもりな集団。

 戦況も一気に傾き、王都をめちゃくちゃにした争いも、残すところこの場所だけとなった。


「こんな終わり納得できねぇ! 薄汚い亜人どもの手を借りやがって! タイマン張りやがれ!」

 腕っ節自慢の第二王子とやらが諦め悪く叫んでいる。

 この世界でもタイマンとか言うの?


「どこまで脳筋なのかしら……勝負はもうついていますのに……」

 ショコラ姉様も呆れたように呟く。


「……私が行こう」

 そう言って前に出るライガ。


「けっ! 勝てるって時にしか出てこねぇ獣臭え卑怯者じゃねえか!」

「……」

 ライガは、語ることなどないかのように沈黙を返す。


「……死ねやぁっ!」

 力に任せて、と思いっきり大剣を叩きつけてくる第二王子。


「……」

 それを同じく大剣で受け止めるライガ。


「糞がっ! さっさと死ねぇっ!」

「……軽い」


「あんっ!? んな訳ねぇだろう! 俺様の体力は――」

「俺も、こんな醜い剣を振るうところだったのか……」


「貴様に言われてたまるかっ!」

「……」


 ライガが数歩距離を取る。そして――!




「逃げるんじゃねグブホォッ!」

 突っ込んできた第二王子を、その大剣ごと叩き潰した。


「峰打ちだ。切る価値もない」


「うぉーやったぞーっ!」

「さすが大将だぁっ!」


 ともかく、この決闘で内乱も閉幕となったようだ。


 新しい国を目指した彼らの勝利に、残った民も、戦った兵たちも、タイグルのみんなも、晴れ晴れとした顔をしている。

 彼らを包むのは、喜び、希望、期待、そして――。



 

 ――圧倒的な絶望感!

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