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第1話 ゴブリンとの遭遇

よろしくお願いします!

しばらくは複数話の投稿となります。

「ふふ~んふ~ん♪ 」


 草原と森の境目、女が1人歩いていた。

 年は20歳前後、見るからに女神官という風貌だ。

 柔らかい表情が温和な性格を表している。

 

 そんな女神官が楽しそうに、しかし不慣れな様子で薬草を探していた。

 残念ながら、この周辺は同じような初心者冒険者が頻繁に薬草採取をしているようで、なかなか見つからない。


「ないなぁ薬草。 もう少し奥に行っちゃおうかなぁ~♪ 」

 女神官は気楽な様子で森の奥に進んでいく。

 ギルドの職員から『森の奥には魔物がいるから行ってはいけない』と言われていたことも忘れて。


 その様子は、なかなか目的のものが見つからない焦りや苛立ちは感じられず、むしろ楽しんでいるようだった。

 しばらく進み、姿の見えない生き物たちの気配が強くなってきたころ、薬草が生い茂っている場所を見つけた。


「わぁ~! たくさん生えてる~♪」

 女神官は宝物を見つけた子どものように目を輝かせ、その群生地に向かっていく。

 そして本物の宝物のように、1房1房丁寧に摘んでいく。


「ふふふ。薬草採るのも大変だぁ~♪」

 言葉とは裏腹に、楽しそうにそのまま小一時間薬草を採取し続けた。


 ◆◇◆◇


「もうそろそろいいかな? 」

 女神官は帰り支度をするために立ち上がる。そこに――。


「ギギィッ! 」

 聞く人を無条件で不愉快にさせる、金切り声が響いた。


「なっうそ、ゴ、ゴブリン…… 」

 ニヤッ。


 女神官の怯えた様子に、ゴブリンは下卑た笑いを浮かべだんだんと近づいてくる。

 

 誰でもゴブリンのことはよく知っている。

 狡賢く相手を執拗に追い詰め、男は貪り食い、女は犯す。

 戦えない者はとにかく逃げなければ、悲惨な末路が待っている。

 

 女神官も以前読んだ本からそのことは知っていた。

 知ってはいたが、女神官は今まで感じたどの悪意よりも強烈なそれに、足が竦んで動けない。


「いやっ……来ないで……」


 消え入りそうな声もゴブリンにとっては気分を良くするに過ぎない。

 必死に後退ってもゴブリンはさらに近づいてくる。

 まるでご馳走を前に、どう食べてやろうかと舌なめずりをしながら。


「ギャギャァッ!」

「ひぃ! いやっ、やめ、んんっ! 」


 ついにはゴブリンは女神官を押し倒し、その唇を生臭い口で塞ぐ。

 

(いやだっいやだっ気持ち悪いっなんで、どうして、こんなっ……)

 必死に頭を、体を動かすが覆いかぶさったゴブリンの拘束は解けない。

 自分の迂闊さが恨めしい。絶望に心が冷えていく。どうして、という思いが、悔しさが、涙となって流れた。

 せっかく勇気を出して冒険者となり、初めての冒険。その結果がこんなだなんてと。


「ギッギッギッ」

 抵抗が弱くなったと感じたゴブリンは次に女神官の豊満な体に手を伸ばす。



 

(……嫌だ、こんなので、終わりたくない! )

 同時に女神官は力の限り暴れる!

 がむしゃらに頭を、腕を振り、近くにあった砂や小石を掴んでは投げ、必死に体を動かす!

 

「ギャッ!!!」

 そんな思いが通じたのか、大きく振った女神官の頭がゴブリンのこめかみを強く打った。

 ゴブリンは飛び退いて2歩、3歩と後退り、頭を押さえてうずくまる。

 

(やった、今のうち早く逃げなきゃ……)

 しかし腰が抜け、うまく立ち上がることができない。

 同じく頭をぶつけた影響か女神官自身もふらふらしている。


(はやくっはやくはやくっ! )

 焦るほどうまくいかず、立ち上がることができない。

 ついには再びゴブリンの目が女神官を捉えた。


「ひぃっ! 」


(いやだ、いやだよぉ……誰か、助けて……)

 次に捕まったら、抵抗できるのか。体は暴れたために満身創痍。

 1度掴んだチャンスを逃したという思いも、再び心を冷やしていく。


「お願い、やめて……来ないでぇ……」

 絶望が口から漏れる。そして――。




「ギィヤッ、ギャッ! (ごめんなさい!)」

「……………………え? 」

 ゴブリンが土下座をしたのだった。


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