口論
「パパ、お母様似合う?」
「ええ。とてもお似合いよ」
「これは派手じゃないか?」
服屋でヘレンの洋服を選んでいた。ここは侯爵がよく訪れるというだけあってセンスのよい服が並んでいた。
「これはいかがです?」
店員が新たな服を持ってきた。これは着物か!
「この服は?」
「最近できた『アダチヤ』って店から仕入れたんです」
アダチヤ・・・ああ、彼女店持ったとかコバヤシが言っていたな。
「着るのに少々時間がかかりますが?」
「ヘレン着てみる」
「そう、楽しみにしているわ」
ヘレンと店員は奥の部屋に行った。
「今日は助かったわ」
「そうですか?それはよかったです」
「報酬の内容に娘との時間を作れなんて言われた時はどうしようかと思いましたわ」
昨日の食事を終わった後に侯爵に追加報酬として頼んだのだ。
「こうでもしないと時間をとれないかと思いまして」
「ええ、そうね。しかしあなた子どもとの接し方がうまいわね。元の世界で子どもがいるのかしら?」
「俺はまだ経験はありませんよ」
「まぁ!以外」
侯爵が目を見開いて、驚いていた。俺そういう目でみられていたのね。俺が子ども対応がうまいのはそういう系の本を読んで学んだからだけどな。
「昨日は徹夜で大変でしたわ。美容によくありませんのに」
「その甲斐はあっただろ」
「たしかにあの子のあんな笑顔、初めて見たわね」
侯爵は少し悲しそうだった。
「なら、こういう機会を増やせばいい。ずっと学校に行っているわけじゃないんだろう?」
「ええ、夏休みと冬休みは希望すれば帰郷することができるわ」
「その時に今日みたいにしてやればいい。そうだその時に食事作ってあげればいい」
「簡単に言ってくれますね。この街大きいでしょう?この規模には相応の仕事が舞い込んでくるのよ。それに私、料理したことないの」
「重要な案件はあんたじゃないといけないかもしれないがそれ以外は人を雇って任せればいいだろう」
「優秀で清廉潔白な人なんてめったにお目にかかれないわ。そうだわ、あなたを雇いましょう」
何?俺?
「あなたなら信頼できるし、娘の教え方から察するに頭もいいでしょう?あなたが私のものになればあなたの言う通り娘との時間を増やすことができるわ」
「・・・悪いが断る。俺にはやるべきことがあるからな」
「・・・そうですわね。あなたは『勇者』ですわね」
「その称号ははく奪されているんだが?」
「そうでしたね。ところであなた、敬語じゃなくなっているわね?」
しまった。
「失礼しました」
頭を下げて謝罪した。
「いいのよ。あなたは今日、ヘレンの一日パパ。つまり私の一日夫ということになりますわ。だから許しますわ」
「ありがとうございます」
「てぃ」
侯爵が扇で叩いてきた。
「私が許したのに、敬語に直すとはどういうおつもり?」
許すってそっち?
「もう一度言ってあげるわ。あなたは今日は私に対して敬語は禁止よ。わかったかしら?」
そういうことなら
「わかった。今日はヘレンのために夫婦になろう。アントワーヌ」
侯爵は扇で顔を隠した。体はプルプルと震えていた。やりすぎだか?
「・・・その度胸たいしたものね」
「ヘレン着替え終わったよー」
ヘレンが着付けが終わり部屋から出てきた。
「おお、すごい似合っているよ」
「ほんと!嬉しい」
ヘレンはジャンプをしていた。そんな動くと着崩れるぞと思っているとヘレンは侯爵のところで止まり
「お母様、顔真っ赤だよ?大丈夫?」
「もちろんよ。あら、ヘレンかわいらしいわ。私も着てみようかしら。店員さん、ヘレンの着ている服と同じ種類の服を持ってきてちょうだい」
侯爵は早口でそう言い、奥の部屋に入っていった。店員はブツブツ何か言って、ヘレンは
「お母様とお揃い」
またジャンプしていた。




