欲しい逸材(バストール視点)
「やられた」
これの一言に尽きる。俺は最初、たまたま誘拐されそうになったやつらが返り討ちにし、無謀な正義感で人質を救出したくらいにしか考えていなかった。
しかし、この男は証拠になる書類を入手し、ばあさんに虚言を吐かせ、数日であの気弱なガキを鍛え、敵であった男を懐柔までした。これは百戦錬磨の英雄のようではないか。
能ある鷹は爪を隠すというが、この男はヒモ男などという恥辱で己の器を隠している。認めよう。俺ではこの男の知力では敵わないと。
「トージョー、提案がある」
「なんだ?」
「俺の右腕にならないか?」
この男を配下に置ければ、俺は上に這い上がれる。あんな無能に雇われる傭兵じゃなく、もっと高みへ。
「断る」
まぁ、そうなるな。残念だ。ワルベルグを超える逸材をこの手で消すことになるとは・・・
「ならば、お遊びは終わりだ。ランスブレッシング」
「なら、こっちも」
小僧は何かを握りつぶしていた。なんだあれは?まぁいい。俺の槍は先ほどと比べ物にならないぞ。
「いくぞ」
俺の槍が小僧の腹に刺さった。
「おかしいな。金属に触れられないんじゃなかったのか?」
小僧は俺と距離をとった。
「手以外は触れられるんでね」
刺さる直前、後ろに下がり深く刺さらなかったか。ブレッシングがかかった状態の俺の槍を身体能力だけで致命傷を防ぐとは・・・
「それは難儀だな」
今度は我が最強の技で仕留める。さらば、英雄になりえた器をもつ者よ。
「ゲイボ!」
横から矢が飛んできたので防いだ。
「あんたにカズマサはやらせないわよ」
「フレイムバースト」
無数の火が俺に向かってきた。槍を振り回し火を消した。あの目、やはりこの女『獄炎の鬼』の娘か。
「1対1で戦うんじゃないのか?」
「そんなこと言ったか?」
こいつ・・・普通なら怒りが沸き上がりそうなセリフなのに俺は笑みを浮かべてしまった。あの2人がこちらに来たということは、全員やられたか・・・人質を奪還したという狼煙も上がらない・・・
「ここで引かせてもらう」
この3人、負けることはないが時間が多少かかる。その間にあいつに来られたら、俺は殺されるな。だから俺は逃げる。さらばだ、トージョー・カズマサ。




