安静と追っ手(バストール視点あり)
「ここは・・・」
俺が目を覚ますと見慣れない天井が見えた。周りを見渡すと見たことのない植物や何かを煮ている鍋や熊の毛皮などが飾ってあった。
「気が付いたかい」
声のする方を見ると整えていない白髪頭のおばあさんがいた。この人の家か?
「あなたが助けてくれたんですか?」
「そうだね」
「感謝します」
俺は起き上がろうとした。あれ?力がうまく入らない???
「まだ安静にしていないとだめだよ」
そうしたほうがよさそうだ。
「あんたダップルスネークに噛まれたのに戦い続けたとか馬鹿なのかい?」
今思えば毒が体内にあるのにあんな激しい運動は自殺行為だな。反省せねば。
「たしかに愚かな行為だったな」
「あの坊やに感謝するんだよ。ヘビの特徴を覚えていたから解毒できたんだから」
「会ったら伝えるよ」
アレクセイ無事だったんだな。よかった。
「それに彼女たちには謝りなよ。血相を変えてあんたをここに連れてきたんだから」
ティアとエリスにはまた心配させてしまったか。
「ここはどこなんだ?」
「ここは、一般の人間は知らないところだよ。ボスが教えたんだろうね」
裏世界の・・・ってやつか。
「あいつはあんたのボスでもあるのか?」
「?あいつの名前はファースト・ボスって言うんだよ」
「え?あいつは盗賊のボスじゃないのか」
ずっと、あいつがボスだと思っていた。
「違うねぇ。あいつらの頭の名前はグレッグ・バストールっていう元藍軍にいた男だよ」
ということは追っ手がくる可能性が高まったな。
アレクセイのいた小屋では
「子爵様、宝石箱がありません」
この男はジョン・ファルター、村を3つほどの領地もつ、ファルター子爵家の当主であった。獣人の住む村に重税をかけ、弾圧した張本人である。
「なんだと、盗人め。許せん」
ジョン・ファルターは憤っていた。自分の飼っている魔物が倒されたと聞かされ、行ってみると魔物は全滅。宝石箱を盗まれていたからだ。
「そんな物より―――」
バストールは子どもを探していた。あの子どもが自分たちにとって切り札なのだから。
「そんな物とはなんだ。あれらが金貨何枚したと思っているバストール」
「落ち着いてください」
金塊や銀塊に手を付けずに宝石箱盗っていったのはなぜだ?運ぶものがなかったから?
「バストールすぐに追え」
追えってどこにいったかわからないのにか?このマヌケが
「お頭、アッシュがきました」
「通せ」
獣人を拘束していたグループにいたアッシュが来たのは嫌な展開が予想できる。
「お頭、話が」
「話せ。手短にな」
アッシュの話によるとヒューマンの男女とエルフの女が獣人を解放し、他の仲間は獣人に連れ去られたという話だ。
「俺は隠し部屋に隠れて助かったんです」
獣人を解放、宝石箱だけを窃盗、人質の子どもがいない・・・まさか・・・俺は人身売買の書かれた書類の隠したところの壁を剥がした。しかし何もなかった。
「畜生」
あれはいざという時に残していたが、第三者の手に渡るのは非常にまずい。
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
「で、これからどうするんだ?」
少しは自分で考えられないのか?まったく
「アルスソワーズに向かいます。犯人はそこに行くでしょう」
あそこには清廉潔白で有名な侯爵がいるからな。
「たしかにここからなら距離は遠くないな」
「では全員でアルスソワーズに」
「ちょっと待って」
ここで何か異議があるのか?
「なんでしょう?」
「ここに何人置いて行く」
何を言っているんだ?このハゲは?
「敵は3人と判明しましたが、手練れみたいです。大勢で攻撃するべきかと」
頭ごなしにいっても逆上するのはわかっていたので、なだめるように言った。
「ここにある金塊たちが盗まれたらどうする?もう魔物はいないのだぞ」
状況を理解していないのか?今人生の岐路に立たされているんだぞ。捕まれば、全てを失うというのにこの男は・・・
「ですが・・・」
「わしが雇い主なのだぞ」
こいつに何を言っても時間の無駄か。
「わかりました。10人置いていきます」
これが譲歩できる最大人数だ。
「よろしい」
「では、急いで行きます」
「そんな急がなくていいのではないか?わしらにはアルスソワーズに内通者がいるのだから」
その内通者は人質とっていたから、従っていただけで人質がいなくなったとわかったらこちらに刃を向けるだろうが。こいつ、あの男を自分の手下と思っているのか?もしそうなら俺は、手を組む相手を間違えたかもしれん。
「早く捕まえないと宝石を誰かに売ってしまうかもしれません」
「それは大変だ。急ぐぞバストール」
「はっ」
俺たちは馬に乗って移動した。




