第三競技
「お疲れ様でした」
「負けてしまったがな」
「敵がパートナーだったのですから仕方ないですよ」
「たしかにあんな密着されてたら、速く動けないからね」
「そ、そうなんだ」
「ところで」
「なんでこちらを見ないんですか?」「こっちを見ないのよ?」
見たら何かを失いそうだからです。
「1勝1敗になったこの勝負続いての競技は・・・」
ギルドマスターが手に取ったのは
「射撃です」
「よし、エリス頼んだぞ」
「私?」
「お前頼りで書いたんだ。頼むぞ」
「・・・ふん、仕方ないわね」
ふぅー。行ってくれるようだ。
「ちなみに私頼りの競技は何を書いたんですか?」
「りょ、『料理』にしたよ。ティアの料理は絶品だからな」
「・・・」
沈黙が怖いです。
「今日の夕飯は何がいいですか?」
「え?あっ、パエリアかな?」
「ここは港町ですから新鮮な海産物があるでしょうから、はりきって作りますね」
「楽しみにしているよ」
「さぁ、準備ができたので説明します。赤い丸が書かれた丸太が見えるでしょうか?赤い丸に当てた丸太の本数が多い方が勝ちとなります」
丸太とエリスたちの距離は50メートルくらいあった。
「お先にどうぞ。ウチの後じゃ、勝負にならないから」
「・・・随分な自信ね」
エリスは眉をひそめた。
「では、エリス選手。白い線のところまで移動してください」
エリスは白い線の前に立った。
「では制限時間は3分。よーい。スタート」
エリスは弓を構え、矢を打ち始めた。
「エリスさんすごいです」
「ああ、見事だ」
エリスのは次々と丸太に当てていった。
「終了~打つのをやめてください」
「はぁ、はぁ、はぁ」
エリスが打つのをやめ、ギルドマスターが数を数えていた。数え終わり、タケダからマイクを受け取り
「え~。エリス選手の的中本数は46です」
「おおーーー」
観衆から拍手喝采が起きた。エリスはこちらに戻ってきた。
「エリスさん、すごいです」
「あれだけ素早い矢さばきすごかった」
「まぁ、私にかかればこんなものよ」
エリスは嬉しそうだった。
「次はミナミサワ選手どうぞ」
「はーい」
ミナミサワは布に覆われている物を滑車に乗せて運んできた。
「では準備はいいですか?」
「オッケーよ」
「では、制限時間は3分。よーい。スタート」
「じゃあいくよー」
布を取るとそこには大砲があった。
「なんだあれは?」
「黒い鉄の筒?」
「あれで的を当てられるのか?」
観客は騒ぎ始めた。
「みんなー、これから大きな音がするから耳を塞いでね~」
「ティア、エリス、耳を塞ぐんだ」
あれが本物ならすごく大きな音がするはず。
「わかりました」
「何が始まるのよ」
ティアは素直に、エリスは文句を言いながら耳を塞いだ。
「皆、塞いだねー。いっくよ~」
ドォォォォォンと大きな音が辺りに響き渡った。
「すごい音だ」
「音がよく聞こえないぞ」
「見ろあれを」
丸太には穴が空いていたり、倒れていたりした。
「いぇーい!」
ミナミサワははしゃいでいた。あの感じ弾は散弾か。大きな砲弾じゃこの競技には向いていないしな。
「もう数えてくれていいよ」
「まだ時間あるけど?」
「もう一回撃つのに3分じゃ足りないから、集計して~」
あのタイプの大砲はたしかに掃除したり火薬を込めたりと時間がかかる。彼女の判断は正しいな。
「では、ギルドマスターが集計をお願いします」
「わ、わかりました」
ギルドマスターは少し怯えながら、丸太の方に行った。
初見であんなの見たら怖いよな。他の人たちも怯えてたり、子どもたちの中には泣いている子もいるな。
「え~集計が終わりましたので、発表させてもらいます」
「ワクワク」
「・・・」
「ミナミサワ選手は17です」
「えー、うっそ。そんな低いわけないでしょ」
「いや、しかし・・・」
ミナミサワはギルドマスターに詰め寄った。
「ミッちゃん、自分で見てきたらわかるよ」
「わかった」
タケダに促され、ミナミサワ丸太を見に行った。
「あ~そういうことか~」
ミナミサワは納得したようだ。
「カズさんどういうことでしょう?ミナミサワ様の方がその・・・」
「ティアの競技のルールを覚えている?」
「えっと・・・『赤い丸の中に当てた丸太の本数が多い方が勝ち』だったでしょうか?」
「その通り。赤い丸の中、つまり赤い丸の外側に当たったのはカウントされないっていうこと」
「!だから思ったより少ない本数だったのですね」
「そういうこと」
「ねえ・・・」
エリスが暗い顔していた。勝ったのになんで?
「そのルールにしたのは私が勝てるようにしたから?」
「何を・・・」
「私じゃ実力で敵わないから、あんな仕様したんでしょ」
エリスは涙目になっていた。
「・・・エリスあれを見てみろ」
俺は丸太の方を指さした。
「何?みじめさを味わえと?」
「違う。これが実践であんな無差別な射撃されてみろ。俺もあの丸太みたいにハチの巣状態に御免だよ。俺は精確に敵だけを狙撃できるエリスの方がすごいと思うぞ」
「ふん」
エリスは俺の胸に顔をうずめていた。
「いや~やりますな~」
ミナミサワはニヤニヤしていた。
「そうだろ。うちの狙撃手はすごいだろ」
エリスがギュっと力を入れてきた。少し苦しい。
「それもだけど・・・まぁいいや。楽しかったよ~」
ミナミサワはスキップをしながらサイオンジたちのところに戻って行った。




