モルグレー一家との食事
「えっと、ユアリスは時速15㎞で飛べるから・・・」
ジャックの家庭教師3日目、俺は順調にジャックに勉強を教えていた。
「ただいまー」
ジャックの父親が帰ってきた。
「あら、あなたどうしたの?」
「ああ。ここではあまり商談ができなくてな。今日はもう切り上げてきた」
「あら、そうなの。たしかにこの町は景気がよくみえませでしたけど・・・」
「そうなんだ。だから明日の朝にはこの町を出ようかと思っている」
「ええ?じゃあ今日で先生とお別れなの?」
ジャックは残念そうに言った。
「なんだジャック、勉強は嫌いじゃなかったのか?」
「先生の教え方はわかりやすいから好きー」
「どこをやっているんだ?何々・・・って時速だとーーー‼」
ジャックが解いていた問題を見てジャックの父親は尻餅をついた。
「ジャックこれ・・・わかるのか?」
「時速15㎞で飛ぶユアリスが97.5㎞いくには何時間かかるかでしょ?6時間半だよな?」
「せ、正解だ・・・君」
ジャックの父親はこっちに詰め寄ってきた。
「どうやったら、ジャックをここまでにしたんだ?」
「いや、その・・・」
「ジャックは1桁の掛け算も間違える時もあったのに、文章問題の2桁が3日でできるなんて君は何者なんだい?」
「ただの家庭教師ですよ」
追放された異世界人とは言えないな。
「ぜひ、夕飯を食べていってくれ」
まずい
「仲間が夕飯を作って待っているはずなので・・・」
「なら、その子も呼んでかまわない。なぁ」
「はい。仲間は何人いるのかしら」
「1人ですけど・・・」
「このテーブルは8人用だから大丈夫よ」
これは断れない。
「わかりました。連れてきます」
俺はティア連れてジャックの家に行った。
「今日は夕飯にご招待いただきありがとうございます。これよかったらどうぞ」
「あらあら、そんな気にしなくてもよかったのに」
ティアはお菓子の詰め合わせをジャックの母に渡していた。
「仲間と聞いていたけど・・・ふふふ」
「食事を拒もうとしていた理由がわかったな」
夫妻はニヤニヤしていた。
「お姉さんは先生の彼女ですか?」
「違いますよ。ジャック君よね?飴あげます」
ティアはジャックに飴を渡していた。
「ティア、これから食事なのに飴はまずいだろう」
「あっ、すみません」
「いいのよ。ジャック、飴は食事の後にしなさいね」
「はーい」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はエバンス・モルグレー。こっちは妻のエレンスト・モルグレー。『モルグレー商工会』の会長をしています」
「私はユースティア・アルバインです」
「アルバイン!君はミレディス・アルバインの娘かね?」
「そうですけど・・・」
「おお、やはり」
ティアの母親を知っているのか?
「いやー、お母さんに似て美人ですね。昔私も彼女に―――」
「彼女に何をしたのかしら?」
「い、いや遠くから見ていただけだよ。彼女には『獄炎の鬼』がいたし」
エバンスはエレンストに釈明していた。
「そんなことより食事にしよう。なぁ?」
「・・・わかりました。食事にしましょう。今ね・・・」
食事が出されたが、食器が銀だった。
「あのーすみません。木製の箸かフォークとかありませんか?」
「木製の物はうちにはないんですよ」
やばい、どうしよう・・・
「私が食べさせますから大丈夫ですよ」
えっ?ティアさんそれは恥ずかしいよ。
「それは・・・ちょっと・・・」
「家まで帰るとせっかくの料理が冷めてしまいます。だから不可抗力ですよ」
たしかそうかもしれないが・・・
「さぁ、座りましょう」
まじでティアに食べさせてもらうの?
俺は恥ずかしさのあまり料理の味がわからなかった。




