(01-6)
与晴が唸った。
「やっぱりかっこいいなぁ。あの店員さん、センスすごくいい。
これからもあの人にアドバイス頼もう」
行きつけの店らしいが、その店員さんはお初だったようだ。
「与のもすごくいいじゃん」
彼も自分用に買ったブライトネイビーのスーツを着ていた。
「お褒めいただき光栄です。
さて、目瞑っても結べるくらいになるように特訓しましょうか」
「……できるかな?」
「もちろん」
つばさはすぐに手順を覚えた。
あとは綺麗に素早くやるための慣れが必要だ。何度も解いては繰り返す。
与晴は横でそれを見ながら、今日のスケジュールを再構築。
「……与、男の人ってさ、どうやって『俺』『僕』『私』を使い分けてるの?」
男のフリをする以上、聞いておきたかった。
「言われてみれば…… 女性は『わたし』くらいですよね」
「うん。だけど男の人って年齢でも変わるでしょ? 祖父はワシって言ってたし、甥っ子の上の方は今は『ぼく』って言ってる」
「大体、小学生のある時期を境に『俺』になりますね。
仕事だと『私』や『僕』を使って、プライベートは『俺』が多い気がします。
……だいぶ早くなりましたね結ぶの」
「慣れてきたかな? でも、なんで男の人だけそうなんだろ」
「なんででしょうね」
ネクタイをグッと締める。
「仕事は『私』でいいけど、普段はどうしようかな。 ……ボク? ……オレ?」
鏡の中の男を見ながら口に出す。
「いいんじゃないですか? 『わたし』のままで」
スマホをいじりながら、与晴がそう言った。
「小野雄翼を演じないとダメでしょ。仕事はともかく、普段でもわたしって言ってたら、絶対甘える」
「……そうですか?」
スマホから顔を上げ、与晴はつばさを見た。
「……よし。せっかくなんで、オレにするわ」
カッコつけてつばさはネクタイを解いた。
「今のめっちゃカッコよかったですよ、小野先輩」
調子に乗ったつばさはさらにかっこつけて、与晴に視線を送った。
「ありがとう、佐藤君」




