(01-2)
荷解きもそこそこに、与晴は茂山の部屋に呼び出された。
彼は冷蔵庫から缶ビールを出してテーブルに置くと言った。
「雄翼との関係は進展したかね?」
ケンカして仲直りしたことまでは話していたが、その後の報告はしていない。
「……好きだと、言ってしまいました」
茂山は身を乗り出した。
「返事は?」
「保留中です……」
「どれくらい?」
「まだ一週間ちょっとくらいです」
茂山は身を引いた。
「そっか…… で、あの人、君とは今日まで通常運転?」
「はい」
浮かない顔の与晴を気に掛ける。
「……大丈夫?」
飲み食べながら思っていること明かした。
「あいわかった。
もうしばらくしたら沙代に聞いてみる」
与晴は呆れながら返した。
「なんで袖崎さんに?」
「つばさは絶対に沙代に相談するでしょうよ?」
それは薄々思っていたが、
「まぁ、そうでしょうけど……」
「で、俺にある程度は言うでしょうよ」
やはり筒抜けなのだ。
年齢とほぼ同じ年月の付き合いの幼なじみで親友。
そんな関係の二人に隠し事などほぼ無いのだろう。
「とにかく仕事にも関わる。
辛くなったらすぐに俺に言うように。いいね?」
承知はしたものの、普段より早く酒が回った与晴は泣き言を言った。
「やっぱり言うタイミングを完全に間違えました……」
茂山は与晴の不安や悩みを黙って聞いた。
「与は悪くない。悪いのは全てあのクズ義なんだからさ。
それにその状況なら下手に誤魔化すより言って正解だと思うよ」
後輩を慰めた。そして少し具体的な話をした。
「今後つばさからOKが出て付き合うことになったら、周りには隠すこと」
「はい」
「申請も登録もクズ義を消すまではやめておこう」
「わかりました」
酷な話だが仕方がない。
「……でないとあいつはどこまでもクズだから、つばさと破局した原因を与に擦りつけるだろう。
そうすれば君の立場が危うくなる」
与晴が怖がる『懲戒免職』にされかねない。
「でも、茂さん」
「なんだね」
「その前に、そもそもOKが出るかどうか、わかりません……」
また弱気になる彼。
茂山はふと疑問に思った事を口にした。
「君さ、もしかして自ら告って玉砕したことなかったりする?」
警視庁が認めたイケメンだ。
百戦錬磨で来たのかもしれない。
「何度も有りますよ……」
そうではなかったらしい。
「なんか安心した」
「今までと全ての勝手が違うので、分からないんです!」
「そうだよなぁ……」
与晴の愚痴をつまみにビールを飲んで聞いていた茂山のスマホに着信があった。
「お、早速明日、沙代とつばさ会うってさ」
「どこでです?」
時間や場所によっては迎えに行く。
そのいつもの習慣で聞いただけだったが……
「……あー、雄翼の迎えは俺が行くわ」
「……なんで?」
「……まぁまぁ」
「教えてくださいよ」
与晴の押しに負け、茂山は明かした。
「ラブホ、行くんだってさ……」
与晴はショックを受けて突っ伏した。
「袖崎さんに負けた。終わった……」
「違う!ただの女子会!
袖崎警視正が定期的に放ってる密偵の目眩しのためだって!」
与晴はすぐ冷静になった。
つばさの性的嗜好、恋愛対象は変わっていない。
だからこそ、まだ奥底に残っている和義の思い出が彼女を苦しめる。
そんな時に割り込んだ自分……
今度は罪悪感が来た。
「やっぱり言うタイミング間違えました!」
またテーブルに突っ伏した。
「飲みすぎだ。もうやめよう。茶飲もう」
ビールを取り上げた。




