(05-7)
帰ってきた彼をリビングで出迎えた。
「すみません。遅くなっちゃって……」
どこまでも律儀で真面目な相棒だった。
「ううん。お疲れ様」
彼は真っ先につばさの体調を気に掛けた。
「本当に風邪、大丈夫です?」
風邪では無く元の姿に戻る予兆だっただけ。
「熱はないし、喉も痛くない。もう治った。
明日はちゃんと仕事する」
与晴に元の姿に戻ったことをまた隠した。
「よかった…… でも、明日はパトロールは出たらダメですよ」
「えー……」
二日も外に姿を現さなければ、島民に大事にされるかも知れない。
しかし身体が作り替えられたばかりのせいか、まだ少しところどころに違和感が残る。
彼の言うことを聞いて明日は大人しくしておいた方がいいかもしれない。
「皆さん心配してくれて身体にいいからって色々くれました」
時すでに遅し。すでに島中が知っている。
しかし彼が自発的に明かした訳ではないはず。
「ありがたいね」
野菜、魚、果物、卵、焼酎……
買い物に行かずとも明日明後日は過ごせそうな内容だった。
「すごい……」
「今から晩ごはん作るんで、座っててください」
まだ病人扱いしてくる相棒にムッとしながら、勝手に動いた。
「いいよ。お米炊くわ」
「……ありがとうございます」
つばさが米を研ぐ間、与晴が不安気な声を漏らしていた。
「うわ、どうしよう……」
「どうした?」
炊飯器のスイッチを押し、与晴のそばに行く。
彼は魚を前に立ち尽くしていた。
「あー…… 丸のまんまもらったのか……」
「俺が魚捌けるって思われましたかね……」
「そうかもね。魚釣って食べてそうな顔してるもの」
「え。なんですかそれ」
二人で大笑いしたが、笑っていてもしょうがない。
「先輩、魚、捌いたことあります?」
「無いね」
岩井家では調理済みの物しか買っていなかった。
母に教わっていないし、今まで自分で学ぼうともしてこなかった。
グロテスクなものを与晴にさせるのも良くない。
ここは自分がやるしか無いか?と思いきや……
「いい機会なんで、やってみましょうか、一緒に」
『自分でやる』でもなく、『やってくれ』でもなく『一緒にやろう』
なんだか楽しくなってきた。
「わかった。ちょっと待ってて、動画探す」
二人で大騒ぎしながらもどうにか魚を捌き終え、塩焼と刺身を作った。
いざ、晩ごはん。
「うま……」
「美味しい……」
二人して唸った。
つばさはすぐさま与晴に提案した。
「よし。ビール飲もう」
案の定止められた。
「は? 病み上がりでしょう?」
「もう大丈夫だって。それにこれはビール要る」
「わかりますけど、ダメですって」
後ひと押しすれば折れそうだ。作戦を変えた。
「だったら、貰った焼酎の水割りにしよ」
心が揺れたらしい与晴。
「……少しで、薄め、なら?」
「よし!」
つばさはすぐさま水割りを作り、晩御飯の再開。
「……美味い」
「あー…… 最高」
美味しいご飯を食べながら与晴の仕事の報告を聞く夕食の時間になった。
数日後、高階署長から帰還命令が出た。
二人の離島勤務が終わった。




